札幌市で15日開幕した先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で、最終日の16日に採択する共同声明の調整を巡って最も難航しているのが、石炭火力発電の扱いだ。
昨年のG7閣僚会合では議長国ドイツの提案に日本が抵抗したが、今回は議長国を務める日本の事前提案に他の6カ国から批判が続出。
日本は強みを持つアンモニアを石炭火力に混ぜて燃やす「混焼」などへの理解を求める考えだが、石炭火力の廃止時期の明記を求める国や混焼の二酸化炭素(CO2)削減効果は不十分と指摘する国もあり、厳しい立場に置かれている。
「2050年に脱炭素化を実現する目標は変わらないが、各国の事情に応じた多様な道筋がある」。会合に関わる複数の日本政府関係者はこう話す。
共同声明の原案作成に向けた事前協議が本格化した3月頃から特にこの言葉が増えてきた。ある政府関係者は石炭火力を巡る協議が難航していることを暗に認める。
石炭火力を巡る表現は昨年のG7でも焦点となった。ドイツが「2030年までの石炭火力廃止」を提案し、欧州各国やカナダが賛同。日本は期限の明示に最後まで同意せず、昨年の共同声明で石炭火力は「段階的に廃止」との表現に留められ、廃止時期は明示されなかった。2035年までの電力部門の脱炭素化についても「大部分(predominantly)」と各国の解釈が可能な表現で決着した。
今年は立場が変わり、日本が石炭火力の廃止時期の明記と、2035年までの電力部門の〝完全な〟脱炭素化への道筋をつけるように他の6カ国から求められる展開となっている。
再生可能エネルギーの主力である太陽光や風力の適地に乏しく、既設原発の再稼働も進まない日本にとって、今後も一定程度を石炭火力に頼るのはやむを得ないのが現実だ。
足元で総発電量の約3割を石炭火力に依存しており、エネルギー基本計画でも30年度の電源構成に占める石炭火力の比率は19%と見込む。脱炭素化とエネルギー安全保障の両立に向けた電源構成の前提となる話だけに、日本も簡単に譲歩はできない。
ただ、ウクライナ危機後に覇権主義的な傾向を強める中国とロシアをメンバーに含む20カ国・地域(G20)が機能不全に陥る中、G7の結束の重要性は増している。共同声明をしっかり取りまとめ、5月に開かれるG7首脳会議(広島サミット)につなげる責務が日本に課せられている。