中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は16日の記者会見で、バイデン米政権が16日の日米首脳会談の共同声明に台湾問題を明記したい意向を示したことを受け、
「日米は中国の懸念と要求に厳粛に対処し、内政干渉をしてはならない」と反発した。
「一つの中国」原則を掲げ、将来的な「台湾統一」を目指す習近平指導部は、日米が連携して障害となることを強く警戒している。
趙氏は「両国が結託した中国に対する否定的な動き」と批判し、両国に深刻な懸念を伝えたと表明。「中国を標的にした小派閥を作ることは許されない」とも牽制し、状況に応じて「必要な反応」を行う考えを示した。
中国は、バイデン政権が台湾への支援姿勢を強める中で、日本が足並みをそろえることを阻みたい考えだ。日中外交筋は「情勢の複雑化を避けるため、中国は日本が台湾情勢への関与を深めることを相当警戒している」と指摘した。
今月5日の日中外相の電話会談でも、王毅国務委員兼外相が台湾問題を念頭に日本に対して「近隣として中国の内部のことには最低限度の尊重を保ち、手を長く伸ばし過ぎるな」と警告している。(北京 三塚聖平)
台湾 日米会談を注視「北東アジア安定に寄与」
台湾の外交部(外務省に相当)の徐佑典北米局長は13日の記者会見で、日米首脳会談について「私たちは台湾海峡への言及に注目している。これからは米国と日本と協力を深め、台湾海峡の平和と安定を確保したい」とコメントした。
バイデン米政権発足後、中国は連日のように、軍用機を台湾の防空識別圏に進入させ、挑発行為を繰り返している。12日には戦闘機と爆撃機など計25機が進入。昨年9月に台湾の国防部(国防省)が発表を始めて以降、1日に進入した軍用機の数として最多だ。
与党・民主進歩党系のシンクタンク、台湾智庫の諮問委員で国際問題学者の頼(らい)怡忠(いちゅう)氏は産経新聞の取材に対し、「日米の共同文書が台湾海峡に言及すれば、台湾に軍事的圧力を強める中国への力強い牽制となる。北東アジア情勢の安定にも大きく寄与する」と、日米首脳会談の行方に期待を高めた。
台湾には14~16日、米国からドッド元上院議員やアーミテージ元国務副長官らで構成される代表団が訪問。バイデン政権は改めて台湾重視を鮮明にした。
ドッド氏は15日の蔡英文総統との会談で「われわれは友人のバイデン大統領に頼まれてきた。米国が台湾にした約束を確認することが目的だ」と述べ、台湾支援を続けていく米国側の意向を伝達した。
一方、蔡氏は「台湾は国際社会の一員として、米国など理念の近い国と一緒にインド太平洋地域の安定を守り、無謀な挑発行為を阻止したい」と述べ、台湾自らも地域の安定に貢献していく考えを強調した。(台北 矢板明夫)