国会議事堂全景=東京都千代田区(鈴木健児撮影)
与野党の憲法担当者らは30日のNHK番組で、5月3日で施行から76年となる現行憲法を巡り討論した。衆院憲法審査会で与党筆頭幹事を務める自民党の新藤義孝氏は「有事が起きたときの規定が憲法に欠落している」と述べ、国会議員任期延長などの緊急事態条項新設と9条への国防規定明記を優先的に議論すべきだとの認識を示した。
立憲民主党の中川正春憲法調査会長は、緊急事態時の国会議員任期延長を憲法改正項目に挙げる議論に関し「参院の緊急集会で対応可能」と訴えた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は「国会議員任期延長に絞って合意形成を目指すべきだ」と訴えた。
日本維新の会の馬場伸幸代表は「日本の現状に合わせて、改憲を積極的に議論していきたい」と述べた。
◆衆院憲法審査会詳報
2日の衆院憲法審査会での発言の要旨は次の通り。
【各会派代表の意見】
新藤義孝氏(自民)憲法改正の論議について残った論点をさらに具体的に深掘りするとともに、国民投票法改正の議論を進めていかなければならない。国民投票法は審査会に付託された案について早急に成立を図るべきだ。投票環境の向上を図るもので、内容は各会派とも異論がないと考える。
階猛氏(立憲民主)議員任期の延長は参院に配慮した慎重な議論を行う必要がある。参院の緊急集会は独自の権限だ。一定の場合に衆院議員の任期延長を認めるのであれば、緊急集会が開催される可能性が狭まる。実質的に参院の権限を弱めることになる議論を衆院だけで進めることは問題だ。
小野泰輔氏(維新)防衛力の抜本的強化と憲法改正は表裏一体の関係にある。戦後日本の平和を守ってきたのは9条ではなく、自衛隊の存在と日米安保条約に基づく抑止力だ。自衛隊を憲法上明確に位置付け、抑止のための防衛力を着実かつ迅速に整備することが不可欠。教育の無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置、緊急事態条項の創設の4項目も意見集約を急ぐべきだ。
北側一雄氏(公明)緊急事態における国会議員の任期延長、国民投票法とCM規制のあり方は論点がほぼ出尽くしている。この国会で一定の合意形成が図られるべきだ。国会議員の任期延長は、参院の権能を弱めるわけではない。緊急集会の役割、位置付け、適用範囲を明確にするということだ。
玉木雄一郎氏(国民民主)緊急事態条項、議論がかなり積み上がってきた議員任期の延長規定を議論し、残された論点について意見を集約した上で、具体的な憲法改正の条文案作りに入るべきだ。憲法54条2項の参院の緊急集会を解散時だけでなく、任期満了時も内閣が開催を求めることができるかなど、解釈を審査会で確定することを提案したい。
赤嶺政賢氏(共産)国民の多くは、改憲を重要課題と考えておらず、憲法審査会は動かすべきではない。岸田政権が進めている大軍拡は憲法を破壊するもので、平和国家から軍事国家へ作り替えようとしている。今、必要なのは、改憲のための議論ではなく、憲法9条に基づく徹底した外交努力だ。
北神圭朗氏(有志の会)緊急事態条項について審議を重ね、法制局から論点整理もされた。議員の任期延長の議論が煮詰まってきている。今後はそれぞれ条文案を持ち寄って具体案を取りまとめる方向で審議を進めていただきたい。憲法の趣旨にのっとって国会機能を確保するために任期の延長制度を創設すべきだ。
【各委員の発言】
新藤氏 参院の緊急集会は二院制の例外的な制度であり、衆院としても、しっかりと対処しなければならない。参議院側との連携も取っていきたい。
吉田晴美氏(立民)そもそも平時に国会は機能しているのか。憲法53条に基づく臨時会召集要求を内閣が放置する憲法違反が常態化し、時の政権が自分たちに都合良く衆院解散権を行使している。平時における臨時会召集期限の法制化、衆院解散権の制限事項の検討をすべきだ。
柴山昌彦氏(自民)憲法には防衛、自衛隊に関する規定が欠落しており、緊急事態条項とともに、早急に是正を要する問題と言わざるを得ない。自衛隊を憲法に明記することで、内閣および国会による統制を明記できる。
三木圭恵氏(維新)衆参の合同の審査会も開けると思うので、衆参で足並みをそろえてきっちりと議論していかなければならない。何度も何度も同じような話を審査会でするのは時間の無駄だ。煮詰めてきた任期延長について結論を出していただくようお願い申し上げる。
国重徹氏(公明)同性婚を巡る議論に注目が集まっているが、多くの学説は、憲法24条1項は同性婚を許容していると解釈している。立法府として、同性婚の議論をより深めていくことが重要だ。人権や多様性の尊重といった価値観を世界に発信していくためにも、G7広島サミットに向けて、性的少数者への理解増進法を成立させることに力を入れるべきだ。