天皇陛下「国民が心を一つに」…大震災追悼式読売新聞 2016年3月11日22時40分

政府主催の追悼式で、お言葉を述べられる天皇、皇后両陛下(11日午後2時55分、東京都千代田区で)=竹田津敦史撮影

追悼式でお言葉を述べられる天皇陛下(11日午後2時55分、東京都千代田区)=代表撮影
甚大な被害が出た東日本大震災から11日で5年を迎えた。
全国各地で追悼式が開かれ、政府主催の追悼式では天皇陛下が、被災者が普通の生活を取り戻すために「国民が心を一つにして寄り添っていくことが大切」と述べられた。震災による死者・行方不明者は、震災関連死を含めて2万1000人を超える。遺族らは悲しみを新たにしつつ復興を誓った。
震災が発生した時刻の午後2時46分、東京都千代田区の国立劇場で開かれた追悼式では、天皇、皇后両陛下をはじめ、安倍首相ら三権の長、遺族代表ら約1090人が黙とうをささげた。
天皇陛下はお言葉で、震災や東京電力福島第一原発事故で多くの人が苦難の生活を続けている現状について「心が痛みます」などと述べ、被災者を案じられた。また、震災の教訓を生かし、防災の心を培い、次の世代に引き継ぐことで「より安全な国土が築かれることを希望します」と語られた。
安倍首相も「教訓を風化させることなく、常に最新の英知を取り入れながら、防災対策を不断に見直す」と決意を述べた。
遺族代表もこの5年を振り返った。津波に襲われた岩手県宮古市出身の山本永都ひさとさん(22)の父は消防団員で、防潮堤の水門を閉めに行ったまま帰らなかった。「住民の命を守った父を誇りに思う。人の役に立てる人となり、前を向いて進んでいくことが親孝行と思えるようになった」と語った。
原発事故で避難生活が続く福島県大熊町出身の佐久間国幸さん(66)は「家族が一緒に生活できる日は来るのだろうか」と不安な胸の内を明かしつつも、「みんなで力を出し合って復興を進めていく」と誓った。
東北をはじめ阪神大震災の被災地などでも午後2時46分、祈りがささげられた。
津波で181人が死亡・行方不明となった岩手県宮古市田老地区では、防潮堤の上で約300人が手をつなぎ、黙とう。宮城県南三陸町では、津波にのまれた防災対策庁舎前で約500人が献花台に供花した。
68人が犠牲となった新潟県中越地震で大きな被害を受けた旧山古志村(現長岡市)でも、約100人が集まって追悼と復興を祈る式典が開かれた。
神戸市中央区の東遊園地では、「3・11」の形に並べた約300本のろうそくに火がともされた。福島市から避難し、中学3年の長女と京都市で暮らす小林雅子さん(47)は「震災を経験した神戸では思いを共有できる。声を掛けてもらい、励まされた」と話した。