沖縄県は27日、玉城デニー知事が細菌性肺炎の診断を受け、入院したと発表した。約1週間の入院が必要という。26日夜から38度以上の熱があった。入院期間中の公務は、2人の副知事が代理で対応する。
県によると、玉城氏は今月中旬ごろから、のどに痛みがあった。25日午後に悪寒があり、26日は公務を取りやめた。26日に受けた新型コロナウイルスのPCR検査では陰性だったが、27日も念のため検査した。29日ごろに結果が判明する予定。
私たち地方議員は、かつて幕末の坂本龍馬らが幕藩体制を倒幕した草莽の志士のごとく、地方議会から「誇りある国づくり」を提唱し、日本を変革する行動者たらんことを期す。(平成17年5月30日~)
「非常に厳しい結果だ。予想していたこととはかなり状況が違っていた」
開票結果が明らかになった8日未明、玉城氏は記者団にこう述べ、苦渋の表情を隠さなかった。
争点となった辺野古移設にも、今後の影響は避けられそうにない。玉城氏は「(移設に)反対であるという民意は揺らいでいないと思っている」と強調するが、
普天間飛行場のある宜野湾(ぎのわん)市選挙区(定数3)は社民党の現職が落選し、与党1議席、野党2議席という結果に終わった。
防衛省沖縄防衛局の関係者は「辺野古移設は、普天間飛行場の危険性を除去する唯一の解決策。選挙結果にかかわらず、法令にのっとり粛々と工事を進めるだけだ」と冷静に語る。
沖縄県議選の投開票から一夜明けた8日、玉城デニー知事を支持する共産、社民両党など県内与党の陣営では、過半数を維持したものの改選前より議席を減らしたことに落胆が広がった。
逆に、知事不支持派の自民党陣営では「2年後の県知事選に弾みがつく」との声もあがる。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設反対を掲げる玉城県政だが、求心力の低下は避けられず、今後の県政運営に影響を及ぼしそうだ。
「非常に厳しい結果だ。予想していたこととはかなり状況が違っていた」
開票結果が明らかになった8日未明、玉城氏は記者団にこう述べ、苦渋の表情を隠さなかった。
平成30年に始まった玉城県政の中間評価と位置付けられた今回の県議選。投票前は、安倍晋三政権の支持率が急落したこともあり、辺野古移設などで政府と対立する知事支持派が議席を伸ばすとみられていた。
だが、新型コロナウイルスの影響で各陣営が十分な選挙活動が行えず、投票率は過去最低の46・96%になった。「知事を招いた集会などができず勢いをつかみきれなかった」と知事支持派の関係者は肩を落とす。
争点となった辺野古移設にも、今後の影響は避けられそうにない。玉城氏は「(移設に)反対であるという民意は揺らいでいないと思っている」と強調するが、普天間飛行場のある宜野湾(ぎのわん)市選挙区(定数3)は社民党の現職が落選し、与党1議席、野党2議席という結果に終わった。
防衛省沖縄防衛局の関係者は「辺野古移設は、普天間飛行場の危険性を除去する唯一の解決策。選挙結果にかかわらず、法令にのっとり粛々と工事を進めるだけだ」と冷静に語る。
自民党県連は今回、県議選の公約として初めて「移設容認」を打ち出した。関係者は「正々堂々と訴え、議席を伸ばした意義は大きい」と自信を深めている。
選挙戦では、辺野古移設問題のほか、新型コロナの影響で落ち込んだ県内経済をどう立て直すかも争点となった。県議選告示の5月29日に公表された沖縄県の4月の有効求人倍率は0・91倍で、全国で最も低い。
自民党県連関係者は「政府と対決姿勢を強める玉城県政では、県内経済を立て直すことはできない。今回の結果は次の知事選に大きな影響を与える」と語る。(川瀬弘至)
玉城氏の支持派と不支持派のどちらが過半数を占めるかが最大の焦点で、当選は支持派が25人、不支持派が23人だった。改選前の勢力は支持派が26議席、不支持派20議席(欠員2)。
今回の県議選は、2年前にスタートした玉城県政の「中間評価」とも位置付けられる。支持派が多数を占めたとはいえ、議席を減らしており、今後はより厳しい県政運営も予想される。
任期満了に伴う沖縄県議選(定数48)は7日、投開票され、共産、社民両党など米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する玉城デニー知事の支持派が過半数を維持した。
ただ、自民党をはじめとする不支持派も議席を増やしており、今後の県政に影響を与えそうだ。投票率は46・96%で、前回(53・31%)を大きく下回った。
県議選には全13選挙区に64人が立候補し、無投票で決まった4選挙区をのぞく52人が選挙戦に臨んだ。玉城氏の支持派と不支持派のどちらが過半数を占めるかが最大の焦点で、当選は支持派が25人、不支持派が23人だった。改選前の勢力は支持派が26議席、不支持派20議席(欠員2)。
今回の県議選は、2年前にスタートした玉城県政の「中間評価」とも位置付けられる。支持派が多数を占めたとはいえ、議席を減らしており、今後はより厳しい県政運営も予想される。
玉城氏の支持派と不支持派のどちらが過半数を占めるかが最大の焦点で、当選は支持派が25人、不支持派が23人だった。改選前の勢力は支持派が26議席、不支持派20議席(欠員2)。
今回の県議選は、2年前にスタートした玉城県政の「中間評価」とも位置付けられる。支持派が多数を占めたとはいえ、議席を減らしており、今後はより厳しい県政運営も予想される。
任期満了に伴う沖縄県議選(定数48)は7日、投開票され、共産、社民両党など米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する玉城デニー知事の支持派が過半数を維持した。
ただ、自民党をはじめとする不支持派も議席を増やしており、今後の県政に影響を与えそうだ。投票率は46・96%で、前回(53・31%)を大きく下回った。
県議選には全13選挙区に64人が立候補し、無投票で決まった4選挙区をのぞく52人が選挙戦に臨んだ。玉城氏の支持派と不支持派のどちらが過半数を占めるかが最大の焦点で、当選は支持派が25人、不支持派が23人だった。改選前の勢力は支持派が26議席、不支持派20議席(欠員2)。
今回の県議選は、2年前にスタートした玉城県政の「中間評価」とも位置付けられる。支持派が多数を占めたとはいえ、議席を減らしており、今後はより厳しい県政運営も予想される。
(北村 淳:軍事社会学者)
半世紀にわたって、2年に一度、ホノルルを本拠地として開催されてきた多国籍海軍合同演習「リムパック」が、新型コロナウイルスの影響で中止に追い込まれそうになっていた。しかし、何としてでも伝統ある大演習を中止させたくないと考えるアメリカ海軍は、実施期間と演習内容を大幅に縮小して、なんとかリムパック2020を開催することを決定した。
【地図】第一列島線。宮古島は第一列島線上に位置する
通常、リムパックは6月下旬から8月上旬にかけて、ハワイ周辺と南カリフォルニアで多数の国々から集結した海軍艦艇や航空機、それに陸上部隊などによって、様々な洋上作戦や水陸両用作戦、災害救助作戦などの合同演習が実施されていた。
それに対しリムパック2020は、8月17日から31日までの2週間、ハワイ周辺海域における洋上演習だけに限定して実施される。また、新型コロナウイルス感染を警戒するハワイ州民やホノルル市民との接触をゼロにするため、参加する艦艇に乗り組んでいる将兵の上陸は一切禁止されることになった。
そして、洋上での艦艇や航空機だけでの合同演習に限定され、海兵隊や陸上自衛隊などの陸上部隊が加わって実施されることになっていた水陸両用作戦や地対艦ミサイルなどの演習は中止されることになってしまった。
■ 惜しまれる地対艦ミサイル演習の中止
トランプ政権は中国とロシアをアメリカの主たる仮想敵と名指ししている。そのため、リムパック2020を主催するアメリカ海軍大平洋艦隊の主敵は中国海洋戦力ということになる。
当初、リムパック2020では、アメリカ軍と陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊による地上から洋上の艦艇を撃沈する演習が、中国に対する警告として“目玉”になると考えられていた。しかしながら、地上部隊による演習ということで、中止に追い込まれた。
なぜ「地対艦ミサイル演習」が目玉と考えられるのかというと、これまで空母中心主義に固執してきたアメリカ海軍が、東シナ海や南シナ海で強力な「A2AD」(接近阻止・領域拒否)戦力を手にするに至った中国軍と対峙するには、空母中心主義への拘泥を捨て去り、新たな戦略に転換しなければならなくなったからだ。
■ 空母中心主義から「ミサイルバリア」へ
アメリカの防衛にとって、対中国戦略の目的とは、何もアメリカ軍侵攻部隊が中国大陸に攻め込み中国軍を壊滅させることではない。中国海洋戦力が第一列島線を越えて西太平洋にまで優勢範囲を拡大してしまうことを阻止するのが、とりあえずの対中戦略目標なのだ。
したがってアメリカ軍としては、有事に際して中国海軍に第一列島線を突破されない態勢を固めておかなければならない。これまでの戦略に従うと、横須賀を本拠地にする空母打撃群に増援の空母打撃群2~3セットを加えて、九州から台湾、そしてフィリピンにかけての第一列島線周辺で中国海軍や航空戦力を撃破するというものだ。空母中心主義に凝り固まっていた米海軍としては空母打撃群を“主役”に据えるのは当然であった。
しかしながら、中国の各種A2AD戦力が極めて強力になったため、もはや第一列島線周辺では空母打撃群は“標的艦隊”になりかねない状況となってしまった。
それだけではない。空母を含む米海軍艦艇のメンテナンス状況が遅延に遅延を重ねている状況であるため、少なくとも3セットの空母打撃群を西太平洋に送り込むことなど不可能に近い状態なのだ。
そこでアメリカ海軍としても、第一列島線周辺で中国軍の優勢な艦隊や航空勢力を撃退するには、空母艦隊ではなく、第一列島線上に設置されたミサイルバリアを“主役”に据える戦略転換を認めざるを得なくなっているのだ。
すなわち、第一列島線上のできるだけ多くの島々に、陸上を移動することが可能な地対艦ミサイル(艦船を攻撃するミサイル)と地対空ミサイル(航空機やミサイルを撃墜するミサイル)を多数配備して、第一列島線に接近してくる中国海軍艦隊と中国航空戦力を迎撃する態勢を構築するのである。
■ 強化すべき宮古島の陸自ミサイル部隊
こうしたアメリカの防衛態勢は、「中国海洋戦力を第一列島線内に封じ込める」ことによって、第一列島線から西太平洋にかけてのアメリカの軍事的優位を確保するためのものである。
一方、日本にとっては、九州から与那国島にかけての第一列島線北部におけるミサイルバリアによる防衛態勢は、まさに九州から与那国島にかけての日本の領域、そして日本国民を守るための最前線の防衛戦力ということになる。
日本防衛当局もミサイルバリアを構築する方向に歩み始めており、4月初頭には、宮古島に陸上自衛隊地対艦ミサイル部隊(第302地対艦ミサイル中隊)と陸上自衛隊防空ミサイル部隊(第346高射中隊)が配備され、2019年3月より駐屯していた宮古警備隊と合流した。
しかしながら、ミサイル部隊配備や弾薬庫設置に対して地元住民からの幅広い理解を得られておらず、ミサイル部隊(人員と関連装置)の配備が済んだといっても、肝心要のミサイルそのものは宮古島に持ち込まれていない状態であるという。
ミサイルを装備していない状態であるのは論外だが、ミサイルが運び込まれても、そもそも第302地対艦ミサイル中隊と第346高射中隊によって連射可能なミサイルの数が少なすぎる。
世界最強の各種長射程ミサイル戦力を擁する中国軍が第一列島線上の宮古島に接近してくる場合、中国艦艇と中国航空戦力を撃退するには、宮古島の地対艦ミサイル部隊も地対空ミサイル部隊もそれぞれ180発前後のミサイル連射能力を手にしていなければならない(拙著『シミュレーション日本降伏』参照)。もし、宮古島、石垣島、久米島、沖縄本島、奄美大島などにそのように強力なミサイル部隊が配備されていたならば、中国軍作戦家たちは南西諸島列島線への接近突破は大いに躊躇せざるを得なくなるのだ。
(参照:本コラム2014年5月8日「効果は絶大、与那国島に配備される海洋防衛部隊」、2014年11月13日「国産地対艦ミサイルの輸出を解禁して中国海軍を封じ込めよ」、2019年1月10日「米軍が今になって地対艦ミサイルを重視する理由」、拙著『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』など)
■ 米軍部隊が走り回っても良いのか
しばしば、宮古島にミサイル部隊を配備すると、その部隊を狙う中国軍の攻撃を呼び込むようなものである、との主張を耳にする。しかしながら、宮古島島民や日本国民、そして日本政府が絶対に日本から中国に対して武力攻撃(もちろん、現状では不可能な状態であるが)はしないとの固い決意を持っていても、「日本が軍事攻撃をしないならばこちらからも日本に対する軍事攻撃はしない」と中国共産党指導部(なにも中国に限定することはないのだが)が考えるとは限らない。むしろ、丸腰の島であるがために簡単に上陸占領部隊を送り込んでくる可能性がある。
そもそも地対艦ミサイルも地対空ミサイルも、平和論者のいうところの専守防衛兵器である。外敵の艦艇や航空機が日本に侵攻してこなければ、使用することができない専守防衛兵器なのだ。
そして、宮古島に配備されるミサイル部隊の戦力が強力であればあるほど、宮古島へは艦艇も航空機も接近することがなくなり、宮古島にミサイルや誘導爆弾が降り注ぐ可能性は消滅するのである。
日本政府・国防当局は、宮古島をはじめ第一列島線上の人々に、強力なミサイル部隊を配備することこそ島民はもとより日本を安全にすることになるというミサイルバリアの防衛原理を丁寧に説明し、正々堂々と陸自ミサイル部隊の配備を、それも強力な戦力を持たせて、推し進めるべきである。
もしも住民の納得を得られず、日本政府が姑息な手段で、かつ限定的戦力しか保持しないミサイル部隊の配備を中途半端に実施した場合には、アメリカ政府・軍当局がアメリカ自身の国防戦略上の都合から、宮古島や石垣島、沖縄本島や奄美大島などの第一列島線上に、米海兵隊と米陸軍のミサイル部隊を多数配備させるよう強硬に日本政府に圧力をかけてくるかもしれない。
米軍のミサイル部隊が日本の国土を走り回るよりも、自衛隊部隊が配備に着いていた方が数等倍マシな状況であることは明白だ。
沖縄県玉城知事は那覇軍港移設には賛成で、浦添市に建設するのは「新基地」ではなく「代替施設」と主張しているが、辺野古移設も「新基地」ではなく「代替施設」であることは明らかだ。
那覇軍港移設は玉城氏を支援する共産党や社民党の理解は得られていない。社民党などは移設見直しを繰り返し求めている。このため、玉城氏の支持基盤を揺るがしかねないアキレス腱(けん)でもある。沖縄県を訪問した菅義偉(すが・よしひで)官房長官は22日、那覇市の米軍那覇港湾施設(那覇軍港)と移設先の米軍牧港補給地区(浦添市)沿岸を視察した。
玉城デニー知事は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する一方、埋め立てを伴う那覇軍港移設には協力する姿勢を示している。菅氏が那覇軍港を視察したのは、玉城氏の矛盾をあぶり出す狙いも透けてみえる。
菅氏は22日午前、浦添市の商業施設屋上から松本哲治市長とともに、那覇軍港の移設が予定されている海域を視察。午後には陸上自衛隊那覇駐屯地を訪れ、那覇軍港の説明を受けた。
「返還後には沖縄県経済の起爆剤として、高いポテンシャルを持っている」
那覇軍港を視察後、菅氏は記者団にこう強調した。那覇軍港は空港や市街地に近く、返還されれば経済効果は大きい。玉城氏も、経済効果を考慮すれば浦添市での埋め立てはやむを得ないとの認識を示している。
那覇軍港は、沖縄の本土復帰直後の昭和49年に日米両政府が返還に合意し、平成7年には移設先を浦添市と決定した。
県と市の間で具体的な移設計画をめぐる調整が難航していたが、今年10月に那覇市を加えた3者で調整検討会議を設置することで合意。来年度には具体的な移設計画が策定される見通しだ。
県は那覇軍港移設について、浦添市に建設するのは「新基地」ではなく「代替施設」であり、「県内移設」ではなく「那覇港湾区域内の移動」として、辺野古移設とは異なると主張している。
しかし、玉城氏を支援する共産党や社民党の理解は得られていない。社民党などは移設見直しを繰り返し求めている。このため、那覇軍港移設は玉城氏の支持基盤を揺るがしかねないアキレス腱(けん)でもある。
菅氏が浦添市長を伴って移設先を視察したのは、玉城氏に協議加速を促す狙いもある。菅氏は22日、記者団に移設先を視察したことを明らかにした上で「早期に結論が得られるよう、政府としても必要な支援をしっかりと行っていきたい」と述べた。(杉本康士)
沖縄県の玉城(たまき)デニー知事は3日、焼失した那覇市の首里城復元に必要な経費について、沖縄振興予算とは別枠での措置を求める声が与党内で上がっていることについて「そのような話で政府が決定していただけるのであれば、この上ないことだ。多くの県民も安心するだろう」と述べた。那覇市内のホテルで記者団の質問に答えた。
玉城氏はまた、「首里城の件に関しては政府としっかり協力してやっていきたい」と語った。沖縄の本土復帰50年にあたる令和4年までにまとめる首里城再建計画を検討する枠組みに関しては「国の動向とうまくリンクできるように、カウンターパートの県として動けるようにやっていきたい」と説明した。
首里城復元経費をめぐっては、公明党の斉藤鉄夫幹事長が2日に「沖縄予算に圧迫が加わらないような形でやるべきだ」と述べていた。政府は3年度まで沖縄関係予算3千億円台を確保するとしているが、今回焼失した正殿など7棟は前回復元時に約73億円を投入している。
これに先立ち、玉城氏は県功労者表彰式典に出席し、「一刻も早い首里城の復元に向けて全力を尽くしてまいる」と語った。
自衛隊が出動していれば、鎮火はもっとはやかったはずだ。
*
消防隊員は通報から約7分後には現場に到着したが、強烈な放射熱の影響で、中庭で放水していた消防隊員を撤退させざるを得なかったという。
また、城壁に囲まれた首里城への進入口は限定されており、首里城直近にある2つの防火水槽から取水して放水するには、城壁を迂回(うかい)しながらホースを延長するため時間が取られたという。
新城課長は「首里城は標高約120メートルの高台で風の影響を受けやすく、城壁に囲まれた特殊な環境だった。鎮火まで約11時間かかった要因はこれから検証していきたい」と語った。
那覇市の首里城で31日未明に起きた大規模火災。消防は鎮火までに約11時間を要し、被害は首里城の中心的な木造建築物である「正殿」を含む主要7棟4千平方メートル以上に及んだ。
城壁に囲まれ、高台に位置する首里城の立地条件や建築物が密集している構造が、効果的な消火作業の妨げとなったとみられる。
一方で、火元とみられる正殿には、スプリンクラーが設置されておらず、専門家は「複合的な要因が重なったことで鎮火が遅れ、延焼被害が拡大した」と指摘している。
「巨大なガスストーブに向けて消火したような感じだった」。那覇市消防局警防課の新城敏行課長は消防隊員が目の当たりにした火災現場をこう表現した。
市消防によると、現場は正殿や北殿、南殿、奉神門(ほうしんもん)が『ロ』の字形に中庭を囲み、いろりのように熱がこもりやすい構造だった。
出火元とみられる正殿から発せられた放射熱が近接する建物を熱し、自然発火した可能性がある。
消防隊員は通報から約7分後には現場に到着したが、強烈な放射熱の影響で、中庭で放水していた消防隊員を撤退させざるを得なかったという。
また、城壁に囲まれた首里城への進入口は限定されており、首里城直近にある2つの防火水槽から取水して放水するには、城壁を迂回(うかい)しながらホースを延長するため時間が取られたという。
新城課長は「首里城は標高約120メートルの高台で風の影響を受けやすく、城壁に囲まれた特殊な環境だった。鎮火まで約11時間かかった要因はこれから検証していきたい」と語った。
一方、山林火災などで出動する「消防防災ヘリコプター」による空中放水はできなかったのか。消防庁によると、沖縄県は現在、防災ヘリが配備されていない。
担当者は「何トンもの水を落として消火する空中放水は、消防隊員や近隣住民にけがをさせる恐れがあり現実的ではない」とした上で「防災ヘリを昼間に飛ばし、俯瞰(ふかん)で現場をみて火の手の広がり方や延焼状況などを無線で伝えることは可能だろう」と指摘する。
火の手を早めた要因の一つに、出火元とされる正殿に使われた沖縄独自の琉球塗装も指摘されている。首里城の復元事業に携わった沖縄県立博物館・美術館の田名(だな)真之館長によると、正殿には琉球王国の文化を象徴する鮮やかな朱色の塗装が施されていた。
この塗装は、アブラギリの種から採取した「桐油(とうゆ)」に顔料を混ぜたもの。田名館長は「桐油を含んでいる分、高温になりやすく火の勢いが増したのだと思う」と話す。
消防などは1日、約100人態勢で首里城の防火設備が作動していたのかなどを実況見分で調査。首里城の建物は文化財に指定されておらず、消防法に基づくスプリンクラーの設置義務はない。正殿には建物外側に水の膜をつくり、外からの延焼を防ぐ「ドレンチャー」が付いており、正常に作動していた。
日本防火技術者協会(東京)の鈴木弘昭理事は「建物が密集し、スプリンクラーが付いていなかったことなど、複合的な要因が重なり、鎮火まで長い時間を要したのでは。建物間に防火シャッターを整備するなど延焼を食い止める仕組みが必要だった」と話した。
玉木沖縄県知事は自衛隊アレルギーのために自衛隊ヘリを発動させなかった。
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消火活動を心配そうに見守った住民からは「なぜ自衛隊のヘリコプターを使わないのか」と不満の声も上がった。
平成23年の東京電力福島第1原発の際には、陸上自衛隊のCH47大型ヘリコプターが上空から海水を投下している。
那覇市には陸自第15旅団が駐屯し、CH47も配備しているだけに、これを活用できなかったのかというわけだ。
陸自ヘリが消火活動に参加するためには沖縄県が災害派遣要請を行う必要があるが、県防災危機管理課は要請を検討しなかったという。
10月31日に発生した那覇市の首里城火災は、通報から鎮火までに約11時間を要した。首里城は高台に位置し、消防車やホースが届きにくい位置にあることも鎮火を遅らせた要因とみられる。
周辺住民からは陸上自衛隊のヘリコプターで上空から消火活動を行うよう求める声も上がったが、首里城火災のケースではヘリコプターの活用は難しいのが実情だ。
首里城から火の手が上がっているのが119番通報されたのは、31日午前2時40分ごろ。一気に燃え広がり、夜明け後に火勢は衰えたものの、完全鎮火したときには午後1時を回っていた。
消火活動を心配そうに見守った住民からは「なぜ自衛隊のヘリコプターを使わないのか」と不満の声も上がった。
平成23年の東京電力福島第1原発の際には、陸上自衛隊のCH47大型ヘリコプターが上空から海水を投下している。那覇市には陸自第15旅団が駐屯し、CH47も配備しているだけに、これを活用できなかったのかというわけだ。
陸自ヘリが消火活動に参加するためには沖縄県が災害派遣要請を行う必要があるが、県防災危機管理課は要請を検討しなかったという。担当者は「ヘリでの消火活動は数トンの重さの水を落とすので、周辺への影響もある。都市部ではヘリによる消火活動はできない」と説明する。
15旅団も同様の理由で、CH47を派遣を検討はしなかったという。陸自幹部は「水を運ぶバケットはフックをかけるだけで、固定しているわけではない。これが外れて周辺市街地に落下するリスクがある」と語る。
ヘリによる消火活動が有効なのは、福島第1原発事故のようなケースや森林火災などに限られるという。
とはいえ、消火活動にヘリコプターが全く不要なわけではない。県防災危機管理課は「赤外線を使って火元を特定し、地上の消防隊に指示を出せば消火活動に有効となる」と話す。
しかし、沖縄県は独自の防災ヘリを保有しておらず、首里城火災でもヘリによる消火活動支援はできなかった。
県は防災ヘリ導入を目指しており、平成29年度以降、県予算で調査費を計上しているが、導入に向けた調整は難航している。
防災ヘリに乗り込む消防隊員は原則として市町村の負担となるが、市町村側は県負担を求めており、負担割合をめぐって決着がついていないためだ。
とはいえ、防災ヘリが必要であるとの認識では県も市町村も一致している。県担当者は「消火活動以外にも、台風などの災害情報収集、離島への物資輸送、行方不明者の捜索など幅広い用途が考えられる」と話す。