海上の南北境界線にあたる北方限界線(NLL)の
南側に予告なしで短距離弾道ミサイル1発を落下させ
たのは、船舶などに被害が出る恐れがあり、極めて危
険な行為だ。
北朝鮮がNLLより南を打撃するのは、2010年
11月の黄海上の 延坪島 を砲撃して以来、12年ぶり。
この砲撃では死者が出た。2日も約100発の砲射撃を
行っており、南北の偶発的な衝突を懸念する声も出始めている。
過去最多の北ミサイル、迎撃困難な
「多方向から一斉」訓練か
…韓国は近く核実験もと警告
【ソウル=中川孝之】北朝鮮は2日、短距離弾道ミサイルなどを20発以上発射し、1日のミサイル発射数で過去最多となる軍事挑発を行った。迎撃の難しいミサイルを多方向から一斉に発射する能力を誇示するとともに、戦術核兵器の開発を進展させる目的もあったとみられる。今後も挑発をエスカレートさせ、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射や7回目の核実験に踏み切る恐れもある。
計画的挑発

韓国軍関係者は2日、記者団に対し、北朝鮮軍のこの日の動きを「意図的、計画的な挑発だ」と分析した。
米韓両軍は、戦闘機など約240機を投入する軍事訓練「ビジラント・ストーム」の最中で、韓国国内の基地から、夜間も作戦出撃を繰り返していた。

北朝鮮は、軍総参謀長を務めた 朴正天 朝鮮労働党書記が1日、米韓の訓練に談話で「史上最も大きな代償を払うことになる」と反発していた。事実上、挑発を予告したと言える。
北朝鮮が9月下旬から7回のミサイル発射を行った際は、米韓が米原子力空母を投入した訓練で、先に朝鮮半島の軍事的緊張を高めたと正当化した。「ビジラント・ストーム」は4日に終了する。この前後に米韓の連携強化を口実として、追加挑発を行うシナリオを準備している可能性がある。
韓国の情報機関・国家情報院は、米中間選挙が行われる今月8日までに、北朝鮮が核実験に踏み切る恐れがあると警告している。
韓国に対抗
2日、空対地ミサイルを発射するKF16戦闘機=韓国軍合同参謀本部提供
北朝鮮が1日で発射した短距離弾道ミサイルの数は6月5日の8発が最多だった。韓国軍が「キル・チェーン」と呼ばれる先制打撃システムを強化するのに対抗し、今回は更に多くのミサイルを複数箇所から発射し、様々な場所から、奇襲的に韓国国内の軍事基地などを打撃する訓練を行ったとみられる。

韓国軍関係者によると、2日に発射された短距離弾道ミサイルの大部分は、高度約20キロ・メートルで飛行した。ロシア製ミサイルをベースに開発したとされる「KN23」などとみられ、変則軌道で飛行した模様だ。
通常の短距離弾道ミサイルであれば、高度60キロ・メートル以上で単純な放物線を描き、米韓の防空システムで比較的容易に迎撃できるとされる。北朝鮮は米韓の迎撃の回避を狙っている。
海上の南北境界線にあたる北方限界線(NLL)の南側に予告なしで短距離弾道ミサイル1発を落下させたのは、船舶などに被害が出る恐れがあり、極めて危険な行為だ。
北朝鮮がNLLより南を打撃するのは、2010年11月の黄海上の 延坪島 を砲撃して以来、12年ぶり。この砲撃では死者が出た。2日も約100発の砲射撃を行っており、南北の偶発的な衝突を懸念する声も出始めている。