岸信夫防衛相は5日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い緊急事態宣言が発令されることを踏まえ、自衛隊に4日、医療支援など必要な措置を講じるよう指示したと明らかにした。
岸氏は防衛省で記者団に「自治体からの要請があれば、速やかに部隊を派遣できるよう、万全の態勢を整えていく」と強調した。
岸氏によると、5日時点で自治体から具体的な支援要請はないが「それぞれの地域で医療が逼迫した状況が生まれつつある。何かあれば、しっかり動けるよう、万全の態勢を整えたい」と述べた。
私たち地方議員は、かつて幕末の坂本龍馬らが幕藩体制を倒幕した草莽の志士のごとく、地方議会から「誇りある国づくり」を提唱し、日本を変革する行動者たらんことを期す。(平成17年5月30日~)
「自衛隊は便利屋ではない」。陸上自衛隊出身の佐藤正久元外務副大臣が、自身のツイッターに記した言葉は重い。新型コロナウイルスの感染拡大で地域の医療現場が悲鳴を上げる中で、自衛官(看護官)による医療支援はやむなしとしても、最重要の本来任務はわが国の防衛だからである。
▼佐藤氏はブログでは、9日の自民党国防議員連盟での出席議員と厚生労働省との質疑を紹介する。議員側は、地域の国立病院が重症患者を受け入れず、私立病院に派遣していた医員を引き揚げた問題をただしている。国立病院側は、現地入りした厚労省幹部の受け入れ要請も承諾しなかった。
▼自衛隊の派遣を要請した北海道旭川市の西川将人市長も大阪府の吉村洋文知事も、「最後の手段」だと述べている。今後、自治体は「自衛隊の災害派遣を要請する前に国立病院、公的病院、私立病院の順で連携し、対応できる環境を作っていく」(佐藤氏)努力が必要だろう。
▼自衛隊はこれまで自衛隊中央病院などで千人以上の感染者を受け入れてきた。コロナ以外の隊員の病気や負傷の治療も継続しなければならない。「(自治体の)要請をそのまま受け入れるのはかなり困難」(岸信夫防衛相)なのは当然である。
▼厳しさを増す国際情勢に目を転ずれば、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海における中国公船の侵入は、もはや常態化している。海上保安庁や海上自衛隊との衝突が起き、負傷者が出る可能性は否定できない。
▼ところが、10日発行の僚紙「夕刊フジ」掲載のジャーナリスト、小笠原理恵氏の寄稿によると来年度、多くの自衛隊病院が不採算部門として廃止され、規模を縮小した診療所になるというから驚愕(きょうがく)した。本末転倒ここに極まれり。
重症患者用の施設が近く稼働する大阪府を念頭に置いた発言とみられる。
西村康稔経済再生担当相は6日、NHK番組に出演し、新型コロナウイルスの感染拡大について「最大限警戒すべき状況にある」と述べ、必要な医療が提供できなくなる恐れが高い地域の体制を強化するため、自衛隊の看護師派遣を検討していると明らかにした。
重症患者用の施設が近く稼働する大阪府を念頭に置いた発言とみられる。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は同じ番組で「医療現場は悲鳴を上げている」と語り、「人の動きと接触を短期間に集中して減らすのが必須だ」と指摘した。
西村氏は感染防止策を徹底してもらえるよう、注意喚起を一段と促すと強調した。
西村氏は出演後に記者団の取材に応じ、新型コロナの影響で経営が悪化している小児科の医療機関への支援を拡充する考えを示した。受診控えが続いているためで、8日にも決定する追加の経済対策に盛り込む。
安倍晋三前首相の実弟で親台派で知られる岸信夫氏を防衛相に起用したからだ。これには中国が警戒を強める一方、台湾は非常に歓迎している。前政権を継承する菅外交の一端が垣間見られた。
岸氏は防衛政務官や外務副大臣、衆院安全保障委員長を経験し、かねてから防衛相候補の一人だった。ただ、岸氏以外に防衛相候補者がいなかったわけではない。
菅義偉(すが・よしひで)首相は中国に対して融和的な対応に転じるのではないか-。つい、そう考えてしまった。自民党内では親中派である二階俊博幹事長の影響力が強まり、菅首相自身が党総裁選で「反中包囲網」に否定的な考えを示したためだが、その見方も改めた方がよさそうだ。安倍晋三前首相の実弟で親台派で知られる岸信夫氏を防衛相に起用したからだ。これには中国が警戒を強める一方、台湾は非常に歓迎している。前政権を継承する菅外交の一端が垣間見られた。
岸氏は防衛政務官や外務副大臣、衆院安全保障委員長を経験し、かねてから防衛相候補の一人だった。ただ、岸氏以外に防衛相候補者がいなかったわけではない。
そもそも菅内閣では再任や同じポストでの再登板が目立つ。再任では麻生太郎副総理兼財務相や茂木敏充外相、再登板では上川陽子法相や田村憲久厚生労働相らがそれに当たる。新型コロナウイルス禍で堅実な政権運営を考えれば、経験者で固めた方が無難だからだろう。
それならば、自衛隊の運用をはじめ、防衛法制と憲法との整合性を国会で問われる防衛相にも、経験者を充ててもよかったはずだ。それでも菅首相は、台湾との友好促進を図る超党派議連「日華議員懇談会」幹事長の岸氏を登用した。
防衛省が電磁波を使う電子戦専門部隊を来年度末に陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京都練馬区)へ新設する方針を固め、来年度予算概算要求に関連経費を計上することが20日、分かった。
北海道と熊本県に続く専門部隊で、全国3カ所を拠点に電子戦で先行する中国とロシアに対抗する態勢を敷く。朝霞には3部隊を統括する司令部機能も新設し、陸自の全国の部隊を指揮する陸上総隊の傘下に置く方針だ。
【図で見る】離島侵攻での電子戦のイメージ 軍事作戦では、通信機器やレーダー、ミサイル誘導に電波や赤外線などの電磁波が使用される。電子戦は、相手の電磁波利用を妨害し、自国の電磁波利用を防護するものだ。
配信
飛び立ったのは4つの機体。空中で旋回するアクロバットな動きに、ワイプに映っているスタジオ内からは「すごい」「おおー」という歓声があがっていた。
また映像では、医療従事者たちが手を振り「ブルーインパルスが新型コロナウイルスと戦う方々への感謝と敬意を表しています」と、実況のアナウンサー。
その後もブルーインパルスは、右下に映し出されたスタジオのワイプ映像とともに、宮城の空を飛んでいた。
映像終盤では、放物線を描きながらハートマークを空に作ったブルーインパルス。感極まるスタジオの声と拍手とともに、実況のアナウンサーも
と声を強めた。
志位氏は「自衛隊は違憲」という立場は
変えないが、それを持ち込ん
だら連合政権はつくれないと明言し、さらには、災害時には自衛隊を活用すると明言。まさに玉城知事はそれを踏襲したのだろう。
*
新型コロナウイルスの感染拡大が続く沖縄県の玉城デニー知事は18日、医療体制の不足を補うため、陸上自衛隊第15旅団に災害派遣を要請した。
これを受けて同旅団は同日、看護師資格を持つ自衛官ら約20人を派遣した。期間は31日までで、県内の医療機関などで活動する。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く沖縄県の玉城デニー知事は18日、医療体制の不足を補うため、陸上自衛隊第15旅団に災害派遣を要請した。
これを受けて同旅団は同日、看護師資格を持つ自衛官ら約20人を派遣した。期間は31日までで、県内の医療機関などで活動する。
県によると、派遣されたのは看護官10人のほか後方支援要員約10人で、看護官は直ちに、クラスター(感染者集団)の患者らを受け入れている県内2病院に派遣された。
このほか鳥取県などから派遣された応援の看護師10人が19日以降、県内の病院で従事する予定という。
県では18日、新たに33人の感染を確認。2日連続で減少したものの医療体制は逼迫(ひっぱく)しており、18日正午現在の病床利用率は96・8%だった。
とくに医療従事者が不足し、病床数を増やしても十分に活用できない状態となっている。
このため玉城知事は全国知事会に対し、県外から看護師を50人規模で派遣するよう要請。厚生労働省と調整を進めている。
7月に発生した九州豪雨では、後方任務も含めて延べ34万人、昨年秋の台風19号では88万人の自衛隊員が投入された。
こうした災害派遣活動は、自衛隊法では「従たる任務」に位置づけられる。「主たる任務」は国防のための防衛出動だが、昨年の災害派遣期間中は、陸自の訓練の1割にあたる300件近くが中止・縮小され、国防任務に支障が出た。
本来、災害派遣の可否は「公共性」「緊急性」「非代替性」(自衛隊以外の担い手や手段がない)の3要件に照らして判断される。だが、近年は要件が曖昧になっていると指摘される。
本格的な台風シーズンを前に、環境省と防衛省は大規模災害時に出るがれきなどの災害廃棄物処理に関し、役割分担を定めたマニュアルを作成した。自衛隊は幹線道路からの廃棄物撤去など応急の活動を担い、その後は民間事業者などに移行する。明確に線引きすることで、自衛隊が「無料の労働力」とみられて活動が際限なく広がる風潮に歯止めをかける狙いがある。
7日付で作成されたマニュアルよると、環境省が現地で役割分担を調整する。自衛隊が都道府県から廃棄物処理の要請を受ける場合、人命救助などの初動対応に影響が生じないよう、両者の調整を環境省が支援する。
自衛隊の主な活動範囲は、幹線道路や生活道路など社会活動への支障が大きい場所からの撤去を終えるまでとする。その後、環境省は民間事業者に円滑に引き継がれるよう都道府県と連携する。畳など大型廃棄物の住宅からの運搬も住民には困難であるため、自衛隊が手伝う。
小泉進次郎環境相は「自衛隊は『何でも屋』ではない。自衛隊しかできないことに専念していただく」と狙いを語る。自治体や業者が担える活動を引き受けずに済み、撤収もしやすい環境を整えることがマニュアルの主眼だ。
7月に発生した九州豪雨では、後方任務も含めて延べ34万人、昨年秋の台風19号では88万人の自衛隊員が投入された。こうした災害派遣活動は、自衛隊法では「従たる任務」に位置づけられる。「主たる任務」は国防のための防衛出動だが、昨年の災害派遣期間中は、陸自の訓練の1割にあたる300件近くが中止・縮小され、国防任務に支障が出た。
本来、災害派遣の可否は「公共性」「緊急性」「非代替性」(自衛隊以外の担い手や手段がない)の3要件に照らして判断される。だが、近年は要件が曖昧になっていると指摘される。
被災自治体が、自衛隊にがれき処理をいつまでも要請し続けたり、各家庭から出る軽量のごみをトラックに積む作業を自衛隊が担ったりするケースは珍しくない。昨年11月、小泉氏と河野太郎防衛相が台風19号の被災地を視察後、問題意識を共有してマニュアル作りに着手した。
ある幹部自衛官は「住民や自治体に頼まれれば『自衛隊の仕事ではない』とはいえない。明確なルールがあれば『活動はここまで』と説明しやすい」と語る。(田中一世)
「中国の艦艇と航空機が太平洋に活発に進出してくる中、太平洋の防衛を真剣に考えていかなければならない」
河野氏は視察後の取材でこう強調した。令和2年版防衛白書は、中国軍の太平洋進出について「今後一層の拡大・活発化が見込まれる」と警戒した。
南鳥島は今のところ、直接的な圧力にはさらされていない。ただ、同じ太平洋側にある日本最南端の沖ノ鳥島周辺のEEZでは今月、中国の海洋調査船が日本側の事前同意を得ずに調査を強行したとみられる事案が発生している。レアアースが眠る南鳥島周辺もひとごとではないだろう。
本州から約1800キロ離れた太平洋上にポツンと浮かぶ日本最東端の南鳥島(東京都小笠原村)。徒歩1時間程度で1周できる島に「海上自衛隊南鳥島航空派遣隊」の12人が常駐し、小さな島が生み出す大きな海洋権益を守っている。11日、河野太郎防衛相の視察に同行した。
◇
海自機で厚木航空基地(神奈川県)を飛び立って約4時間。窓の前方に広がるコバルトブルーの海面に、横にまっすぐ伸びる白線が現れた。それが島影だった。サンゴでできた起伏のない地形のため、遠くからは白線に見える。
気温32度の島の滑走路に降りた。全長1370メートル、幅45メートル。昭和11年に旧海軍によって建設された。大きなひび割れもなく、きれいに整備されている。滑走路の維持・管理や、着陸した自衛隊機への給油が海自派遣隊の任務だ。
滑走路横の派遣隊庁舎前には、日の丸が高々と掲げられていた。庁舎から海までは歩いてすぐ。絶海のため漁船の姿もなく、とても静かだ。
南鳥島では先の大戦で、米軍の空襲や軍艦砲撃などで191人が命を落とした。海岸沿いには旧日本軍の軽戦車や大砲の残骸、トーチカ(コンクリート製の陣地)などの戦争の傷痕が戦後75年たっても撤去されず残っている。
茶色くさび付き、雑草がからまっていた。その背後には白いサンゴの海岸とエメラルドグリーンの海という楽園の景色が広がり、そのギャップに強い印象を受けた。
現在の島民は派遣隊に加え、気象庁と国土交通省の合わせて二十数人のみ。民間機や客船は就航せず、観光客は訪問できない。
4月に着任した派遣隊長の光末憲壮3等海佐は取材に、任務の意義をこう説明した。
「ここに住み、(滑走路などの)機能を維持していること自体が重要な任務だと考えています」
つまり、日本による島の実質的な統治を継続することだ。光末氏は「最東端の小さな島だが、膨大な排他的経済水域(EEZ)を持つ。崇高な任務という意識で隊員に勤務させている」と語る。
EEZとは、沿岸国が沿岸から200カイリ(約370キロ)以内で設定できる、水産・海底資源など経済的な権利を有する海域だ。
日本はわずか1・5平方キロの南鳥島のおかげで島の周囲43万平方キロのEEZを太平洋上に有している。それは日本の全国土より広い面積だ。そのEEZ内の深海底では、ハイテク製品などに用いられる貴重な「レアアース」(希土類)の存在が確認されている。
◇
島の生活は不便が多い。食料は週1回、航空自衛隊機で運ばれてくるが、携帯電話は数年前にソフトバンクだけがかろうじてつながるようになった。インターネットは接続できないに等しい。テレビはBSのみで地上波は映らない。趣味は筋トレ、日焼け、釣り-。
医師はいない。医療機関がある本州まで片道4時間を要し、けがが致命傷になりかねないため、隊員の安全管理には特に留意しているという。隊長は1年、一般隊員は2カ月交代でここに住む。
河野氏は視察の際、任務の現状を隊員から聞いて「勤務環境を少しでも改善できるよう努力したい」と語った。島内の戦跡や戦没者慰霊碑、海洋調査船などが停泊する岸壁工事の現場なども訪ねた。工事は国交省の事業で、令和4年度に160メートル岸壁が完成する予定だという。
「中国の艦艇と航空機が太平洋に活発に進出してくる中、太平洋の防衛を真剣に考えていかなければならない」
河野氏は視察後の取材でこう強調した。令和2年版防衛白書は、中国軍の太平洋進出について「今後一層の拡大・活発化が見込まれる」と警戒した。
南鳥島は今のところ、直接的な圧力にはさらされていない。ただ、同じ太平洋側にある日本最南端の沖ノ鳥島周辺のEEZでは今月、中国の海洋調査船が日本側の事前同意を得ずに調査を強行したとみられる事案が発生している。レアアースが眠る南鳥島周辺もひとごとではないだろう。
日本の国土面積は世界で61番目だが、EEZは世界6位の面積を誇る。絶海の孤島に日の丸を掲げ、特殊な生活環境で人が居住し、滑走路などのインフラを維持している。日本という海洋国家はこうして成り立っており、それは決して容易なことではない。
今回、わずか2時間余りの滞在だったが、その現実を垣間見ることができた。
(田中一世)
中東海域での日本関係船舶の安全確保に向け、情報収集に当たる海上自衛隊の護衛艦「きりさめ」が10日、海自佐世保基地(長崎県)から現地へ出航した。
2月下旬から活動している「たかなみ」の後継で、乗員の新型コロナウイルス感染を警戒し、出航後2週間は日本近海で訓練する。
防衛省によると、2週間の訓練中に艦内で隊員らの検体を採取し、PCR検査を実施する。結果を踏まえ中東での任務に向かう。
きりさめには隊員約200人が乗艦。6月前半にオマーン湾やアラビア海北部で任務を始める見通しで、付近を航行する船舶の船籍や針路などを確認する。
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防衛省は13日、集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」などの新型コロナウイルス対応で医療従事者が不足している事態を受け、医師や看護師など医療関連の資格を持つ「即応予備自衛官」と「予備自衛官」を招集する準備に入った。
即応予備自衛官は元自衛官に限られ、今回は元医官や看護官らを対象とする。予備自衛官は元自衛官でなくても教育訓練を受ければなることができる。
いずれも非常勤の自衛官で、大規模な自然災害などで自衛官の不足が想定されるケースに招集される。
哨戒機活動は従来と変わらず
海自の護衛艦と哨戒機は平成21年から10年以上にわたり、アフリカ東部のジブチを拠点に、ジブチ沖のアデン湾で海賊対処活動に従事してきた。
今回の派遣において、哨戒機がやることは「今までと変わらない」(自衛隊幹部)ようだ。
哨戒機は海賊対処を続けつつ、新任務である情報収集も実施している。つまり二重任務を帯びているが、活動海域は今までと同じアデン湾が中心となる。
いずれの任務も、上空から船舶をチェックする点では同じだ。これまでも海賊対処活動の最中に不審な船を見つけることは多々あったが、海賊船ではないからといって放置したわけではない。実質的に情報収集もしていた。
海上自衛隊のP3C哨戒機(航空機)部隊が20日、新たな任務として中東海域での情報収集活動を始めた。2月2日には護衛艦(艦船)「たかなみ」も中東に向けて出航し、活動に従事する。ただ、一連の活動内容はあまり知られていない。一体、何のために何をするのか。
▽洋上と上空から船舶チェック
護衛艦は洋上、P3C哨戒機は上空から目視やレーダーにより、公海を往来する船舶をチェックする-。活動内容を要約すれば、こういうことである。船舶の船籍国、船名、船体の特徴、位置、方向、速度などを確認し、記録する。
その中で、不審な船を見つけるケースが想定される。例えば、義務付けられている信号を出さずに航行▽本来の目的地とは異なる方向に進む▽動きや積み荷、船員が不自然-などのパターンだ。こうした情報は政府内で共有される。日本船舶の航行の安全のために必要であれば、国土交通省を通じて船舶会社側に伝えられる。
▽哨戒機活動は従来と変わらず
海自の護衛艦と哨戒機は平成21年から10年以上にわたり、アフリカ東部のジブチを拠点に、ジブチ沖のアデン湾で海賊対処活動に従事してきた。今回の派遣において、哨戒機がやることは「今までと変わらない」(自衛隊幹部)ようだ。
哨戒機は海賊対処を続けつつ、新任務である情報収集も実施している。つまり二重任務を帯びているが、活動海域は今までと同じアデン湾が中心となる。いずれの任務も、上空から船舶をチェックする点では同じだ。これまでも海賊対処活動の最中に不審な船を見つけることは多々あったが、海賊船ではないからといって放置したわけではない。実質的に情報収集もしていた。
護衛艦の情報収集活動も、哨戒機同様、往来する船舶をチェックする点においては大きく異なるわけではない。ただ、オマーン湾やアラビア海北部を中心とする新たな海域で活動する。アデン湾の海賊対処では他国と担当エリアを分けるゾーンディフェンスを実施しているが、今回は他国と一線を画し、独自に航行する点も異なる。
▽民間船舶は今も丸腰で航行
中東海域のうち、特にイランに近いペルシャ湾やホルムズ海峡では、昨年6月に日本の海運会社のタンカーが何者かに襲撃されるなどの事件が発生している。
トランプ米大統領は昨年6月にツイッターで、日本が原油の62%をホルムズ海峡経由で輸入しているのに、米国がこのシーレーン(海上交通路)を護衛していると不満を漏らし、「すべての国は自国の船を守るべきだ」と主張した。他国もシーレーン護衛に乗り出す中、日本が何もしないわけにはいかなかった。
そもそも自衛隊の派遣の有無にかかわらず、年間3千隻を超える「丸腰」の民間船舶が中東から日本へと原油を運んでいる。日本は国民生活に欠かせない原油輸入の9割近くを中東に依存しており、日本関係船舶が航行をやめるわけにはいかない。中東情勢が不安定化する中、船舶業界では「自衛隊に保護してもらう必要まではないが、安心して航行できるよう中東海域の情報は欲しい」とのニーズが高まった。
中東の広大な海域を護衛艦1隻と哨戒機だけでくまなくカバーできるはずはない。ただ、日本が得た情報を交換するため、バーレーンの米海軍司令部に連絡員(LO)として幹部自衛官を派遣したことで、日本が立ち入らないペルシャ湾やホルムズ海峡も含めて米国の情報を得られ、情報収集能力は大幅に向上する-。政府はこう考えている。
また、海自の護衛艦が中東に展開することで、プレゼンス(軍事的な存在感)が増す。つまり米国とイランが対立する中で「万が一の際には駆け付けてくれる」との安心感を民間船舶に与える効果があり、船舶業界は派遣を歓迎している。
▽紛争地域に赴くわけではない
「危険な海域への派遣」との批判が出ている。中東情勢が緊迫化していることは間違いないが、政府は活動海域で危険性が増大しているとは判断していない。多くの人が誤解しているのがこの点だ。
米イラン衝突の地であるイラクの首都バグダッドと、海自の活動海域は遠く離れている。活動海域のうち、最もバグダッドに近いオマーン湾の西端(最奥部)でも約1500キロの距離がある。護衛艦が主に担当する「オマーン湾からアラビア海北部にかけての公海」や、哨戒機が飛行する「アデン湾」は2千キロ以上。1500キロといえば東京~平壌間よりやや遠い。2千キロは東京~台北間と同程度である。
今回、派遣海域の選定にあたっては、政府が伝統的友好国であるイランを過剰に刺激しない配慮もあるとみられる。ホルムズ海峡周辺でのタンカー護衛に向けた米国主導の有志連合構想とは一線を画しており、今のところイラン政府は派遣に理解を示している。河野太郎防衛相は「自衛隊が武力紛争に巻き込まれる状況ではない」と述べている。
ただ、イラン政府は革命防衛隊や過激派組織を統率できない。事態がエスカレートし、イランが米国の同盟国である日本を敵視し、自衛隊を標的にする可能性も、今後絶対にないとは言い切れない。日本政府はイランとの関係を維持する外交努力を続けていく必要がある。(政治部 田中一世)
衆参両院は17日、海上自衛隊の中東派遣について、政府が昨年末に閣議決定して以降初めての審議を実施した。米イラン対立で中東が不安定化する中、河野太郎防衛相は派遣予定海域の情勢に関し「自衛隊が武力紛争に巻き込まれるような危険があるとは考えていない」と述べた。
河野氏は衆院安全保障委員会と参院外交防衛委の閉会中審査で、中東が緊迫化していることは認め、「日本関係船舶の安全確保のため情報収集態勢の強化は必要」と意義を強調した。
また、バーレーンの米海軍司令部に海上自衛隊の幹部自衛官1人を連絡員として派遣し、16日に任務を開始したと明らかにした。米軍との情報交換を通じ、自衛隊が活動を行わないホルムズ海峡やペルシャ湾の情報を得られる見通しだ。
一方で不測の事態が発生し、武器使用が可能な海上警備行動を発令した場合の活動範囲については「(予定海域の)他の海域を排除しているわけではない」とも述べた。
海自P3C哨戒機部隊は20日、アフリカ東部ジブチ沖のアデン湾などで活動を始める。来月2日には護衛艦「たかなみ」がオマーン湾やアラビア海北部に向けて出港する。
河野太郎防衛相は10日、海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機に対し、防衛省設置法の「調査・研究」に基づく中東海域での情報収集任務の派遣命令を発出する。
哨戒機は11日に出国し、20日以降に活動を始める。2月上旬には護衛艦「たかなみ」も出港し、情報収集を強化する。
中東情勢は緊迫化しているが、海自の活動予定海域は米・イラン衝突の地となったイラクなどから離れており、政府は派遣方針を変えない考えだ。
海自は9日、幹部学校(東京都目黒区)で、たかなみが不測の事態に遭遇した際の部隊運用を確認する「図上演習」を行った。視察した河野氏は記者団に「万全の準備をして出発できるようにしっかり支えていきたい」と強調した。
P3C哨戒機は出国後、ジブチを活動拠点とし、平成21年から実施している海賊対処行動と情報収集の2つの任務を担う。
護衛艦は海上、哨戒機は上空から、目視やレーダーにより航行する船の種類、位置、進路などの情報を集める。不審船を発見したら速やかに国土交通省を通じて船舶会社に連絡する。
イランをめぐる情勢が悪化する中、政府・与党内では派遣について「緊張感が高まっているなら日本の船舶の安全のためにより重要になる」(自民党の岸田文雄政調会長)と肯定的だ。
年明け以降、関係省庁の幹部は連日首相官邸に参集し、中東情勢の分析をしているが、活動予定海域への影響はほとんど生じていないと判断している。
衝突はイラクの首都バグダッドを中心に発生している。哨戒機が活動を予定しているアデン湾やその東側の公海は2千キロ以上、護衛艦の活動予定海域の中で最も近いオマーン湾でも1千500キロほど離れている。
護衛艦は出港まで1カ月近くあるため情勢を注視するが、軍事衝突が拡大すれば遅れる可能性もある。
ただ、今回の派遣は武器使用が正当防衛や緊急避難に限られ「安全確保の面で不備がある」(自衛隊幹部)との声が強い。
不測の事態が生じた際、自衛隊法の「海上警備行動」に切り替えれば、より幅広い武器使用が可能になるが、保護できるのは自身および日本籍船に限られる。外国籍船の場合、日本人が乗っていても武器を用いて保護することができない。(田中一世)
安倍晋三首相は9日、11-15日の日程で検討してきた中東のサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンの3カ国への歴訪について、予定通り実施する意向を固めた。複数の政府関係者が明らかにした。
米国とイランの情勢の緊迫化を受け、日本政府内には安全確保などへの懸念から歴訪を延期すべきだという意見もあった。しかし、首相は歴訪を模索し続け、トランプ米大統領が軍事力行使に否定的な考えを表明したことなどを受け、決断した。
首相は、関係国に対し中東地域の緊張緩和を働きかけるとともに、海上自衛隊の中東派遣に理解を求める予定だ。