米国で、ウイグル人権法が成立した。
中国新疆ウイグル自治区でウイグル族弾圧に関与した中国当局者に制裁を科すもので、超党派の支持で上下両院を通過した法案に、トランプ大統領が署名した。
同法は米政権に対し、180日以内に拷問や長期拘束を実施した中国当局者を特定し、議会に報告して資産凍結や入国禁止などの制裁を科すよう求めている。国務省にも、ウイグル自治区での人権侵害の状況を報告書にまとめて議会に提出するよう要求した。
トランプ政権が、人権問題でも中国と対決する姿勢を鮮明に打ち出したものだ。
中国外務省は「強烈な憤慨と断固とした反対を表明する」と反発しており、少数民族の人権を弾圧してきた犯罪行為への反省はみじんもみられない。
中国当局は、ウイグル族約100万人を要注意人物と決めつけ、職業訓練センターと称する強制収容所に送ったとされる。イスラム教を否定し、共産党への忠誠を誓わせる洗脳教育を施すためだ。
内政干渉を理由に国際社会の目を逃れることは許されない。人権は誰もが享受すべき権利だ。中国政府は、長期にわたって不当に身柄を拘束しているウイグル族への洗脳教育をやめ、直ちに解放すべきである。
トランプ氏については、気になる報道もある。
かつての側近だったボルトン前大統領補佐官が出版予定の著書で、大阪でのG20サミット夕食会で習近平国家主席に、ウイグル族の強制収容所施設は「正しいことであり、建設を推進すべきだ」との趣旨の発言があったと記しているというのだ。
これを受けてトランプ氏は米紙の取材に「ボルトン氏は嘘つきだ」と語ったが、この問題に対するトランプ氏の真の姿勢は人権法の運用で分かることになる。
ウイグル族の弾圧については日本も非難の声を上げるべきだ。だが、その姿がみえてこない。
政府は「懸念を持って注視している」との立場を、あらゆるレベルで中国側に伝えていると説明する。国際社会が非難し制裁を検討している中で、これではあまりに腰の引けた対応である。
非難決議を出すことさえできない国会も同様である。中国には、無関心としか映るまい。
中国のウイグル弾圧「最悪の人権危機」、米国務長官
- 2019/7/19 2:35
信教の自由の確保をめざす会合で演説するポンペオ国務長官=AP
【ワシントン=永沢毅】ポンペオ米国務長官は18日、米国務省で開いた信教の自由に関する閣僚級会合で演説し、中国政府による新疆ウイグル自治区でのウイグル族の大量拘束を強く批判した。「現代における最悪の人権の危機が起きている。まさに今世紀の汚点だ」と述べた。こうした宗教弾圧に対抗するため、多国間の国際枠組みを設ける意向を明らかにした。
その後に演説に臨んだペンス副大統領も「共産党は100万人以上のウイグル族を含むイスラム教徒を強制収容施設に投獄している。そこで彼らは24時間体制での洗脳に耐えている」と指摘した。「ウイグル自治区の収容所の生存者によると、北京は計画的にウイグル文化を抹殺し、彼らのイスラムの信仰を根絶しようとしている」とも語った。米政権高官が宗教や人権問題で中国批判で足並みをそろえたことで、中国の反発は確実だ。
ペンス氏は中国政府によるキリスト教徒への迫害にも言及し「中国内のキリスト教徒はかつて50万人にも満たなかったが(弾圧にもかかわらず)今や1億3千万人に達しようとしている」と主張した。
米中貿易交渉にも触れ「その交渉がどうあれ、米国民は中国で信仰に生きる人とともにあると保証する。迫害される恐れなく自由に信仰できるよう願う」と強調。信教の自由を支援する方針を示すとともに、貿易交渉の進展のためにこの問題をカードとして使うことはないとの姿勢を示した格好だ。
ポンペオ氏が提唱した新たな国際枠組みは「志を同じくする国々が国際的な信教の自由への脅威にともに立ち向かう」(同氏)のが目的だ。中国に限らず、北朝鮮やイランなど宗教弾圧がなされていると米国がみる国家への圧力を強める狙いがある。
信教の自由に関する閣僚級会合の開催は18年に続いて2回目。今回は16~18日に開かれ、100カ国超が参加した。ポンペオ氏によると、中国政府は「この会合に参加しないよう他国に働きかけていた」という。