【ロンドン=板東和正】乗客乗員176人全員が死亡した8日のイランでのウクライナ旅客機墜落に関し、ジョンソン英首相は9日、「旅客機がイランに撃墜されたという多数の情報があるが、故意ではない可能性がある」との声明を出した。イランのミサイルで誤って撃墜されたとの見解を示した。
声明によると、同旅客機の墜落で4人の英国人の死亡が確認された。
ジョンソン氏は声明で「墜落で命が失われたことは悲劇だ」とした上で、原因究明に向け、「(63人が犠牲になった)カナダや国際パートナーと緊密に協力している。今は、完全で透明な調査が必要だ」と訴えた。
「ウクライナ機はイランがミサイルで撃墜」 ポンペオ米国務長官
【ワシントン=黒瀬悦成、ニューヨーク=上塚真由】ウクライナの旅客機が8日にイランの首都テヘランの空港を離陸直後に墜落した原因について、ポンペオ米国務長官は10日、「イランがミサイルで撃墜したとみられる」と述べた。
米メディアによると、墜落直前に地対空ミサイル2発が発射されたことを米国の衛星システムが探知した。米政府関係者は旅客機が誤ってイランの防空システムの標的になったとの見方を強めているという。
墜落したのはウクライナ国際航空のボーイング737-800型機で、乗員乗客176人全員が犠牲となった。イラン人82人、カナダ人63人、ウクライナ人11人らが乗っていた。
イランは革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の司令官が米軍に殺害された報復として、8日未明(現地時間)にイラク駐留米軍を弾道ミサイルで攻撃。旅客機は約5時間後に墜落した。当時、イランは米軍による反撃に警戒を強めていた。
トランプ米大統領も9日、「誰かが間違いを犯した可能性がある」と述べ、撃墜の可能性を示唆した。
イラン政府は9日の声明で「イランに対する心理戦だ」と強く反発する一方、「(犠牲者が出た)全ての国はイランに代表を派遣することができる」とし、関係国との調査協力に前向きな姿勢を示した。
ウクライナ機の墜落では多数のカナダ人が犠牲になった。
カナダメディアによると、カナダでは東部トロントだけでイランにルーツを持つ住民が約10万人いる。イラン国外では米ロサンゼルスに次いで2番目に多く、死亡者の多くがトロントと関係があったという。
ただ、カナダとイランは2012年以降国交を断絶しており、両国を結ぶ直行便はない。そのため、両国の行き来には安価なウクライナ・キエフ経由がよく使われていたという。
被害者には1歳の女の子を含む家族連れ、夫婦らのほか、年末年始の休暇から戻る学生や大学教員も多かったとされる。(ニューヨーク=藤原学思)
朝日新聞社