台頭する「香港人」意識 中国“内なる異国”に手詰まり 

 デモ隊の掲げるスローガンは、香港の街中にも書かれている=29日(AP)
デモ隊の掲げるスローガンは、香港の街中にも書かれている=29日(AP)











 【北京=西見由章】香港の「逃亡犯条例」改正問題に端を発した抗議活動は、間もなく開始から4カ月を迎える。中国当局は9月上旬、メンツを捨てて改正案の正式撤回を容認し、建国70年までの混乱収束を図ったが不発に終わった。「一国二制度」の香港は、習近平指導部が得意とする統制と圧力の“死角”で、中国側は手詰まりの状態だ。

 デモ隊が口々に叫ぶスローガン「光復香港、時代革命(香港を取り戻せ、革命の時代だ)」は元々、「香港独立」志向の強い本土派の政治活動家、梁天●(=王へんに奇)(りょう・てんき)氏(28)=警察襲撃罪などで収監中=が2016年に唱えた。今回の抗議活動で香港独立の主張は前面に出ていないが、心情的には、香港を自らの「本土」と主張する香港本土派の強い影響を受けているといえる。

 梁氏の母親は中国湖北省武漢市出身で、梁氏自身も武漢で出生し、幼少期に香港に渡った。こうした中国出身の「新移民」と呼ばれる若者の間でも「香港人」意識が強まっている。

 香港の本土派や民主派はキリスト教信者が多い。梁氏も香港のミッションスクールで学んだ。中国当局はキリスト教への締め付けを強めたい考えだが、中国本土のような露骨な弾圧は難しい。香港では、市民が政府を批判しただけで「国家政権転覆扇動罪」などで摘発されることもない。

 習指導部は安全保障や人権問題などで対立した外国に対して、自国の巨大市場から排除することで圧力をかけてきたが、“内なる異国”である香港への締め付けは自傷行為だ。香港を窓口にして外国から投資を得ている中国企業は多い。

 一方、「中国は長期的に香港に取って代わる都市を作り上げようとする可能性がある」と指摘するのは北京の外交筋だ。「世界が香港に魅力を感じているからこそ注目される。魅力がなくなれば関心も薄まる」