9月6日の香港立法会(議会)選に向けて実施された民主派勢力の予備選で、民主派が目標とした票数の3倍を超える61万人が一票を投じた。
中国が香港人の人権を踏みにじる国家安全維持法(国安法)を施行したばかりである。予備選への投票は、弾圧の恐怖下でも、自由と民主主義を尊んで抵抗する香港人の矜持(きょうじ)の発露にほかならない。
ところが、香港政府トップの林鄭月娥行政長官は国家政権転覆行為を禁じた国安法違反の可能性があるとして調査を始めたと明らかにした。中国政府の香港マカオ事務弁公室も「香港政府は容赦なく厳罰に処さねばならない」と露骨に威圧する。
心得違いも甚だしい。民主派の予備選は、香港返還を定めた中英共同宣言や香港基本法で保障された「一国二制度」に沿うものだ。これを形骸化させる国安法を押し付けた中国共産党の強権とは対極をなす。どちらが断罪されるべきかは自明である。
最高は終身刑、中国本土に移送されて裁かれる恐れがあるのが国安法だ。6月末の施行後、人々は政府批判の口を閉ざさざるを得なくなった。団体を解散したり海外に逃れたりする活動家もいる。
その中で民主派が一縷(いちる)の望みをつなぐのが立法会選での過半数議席取得だ。民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏も「最後の自由な選挙になるかもしれない」と予備選の投票を呼び掛けた。
香港政府は妨害に動いた。投票前日には、予備選の投票システムをサポートする民間世論調査会社を警察が家宅捜索した。
それでも有権者全体の約13%が足を運んだ事実は重い。投票した男性は本紙に「国安法は怖くても公民としての責任は果たす」と語った。選挙区トップの票を得て立法会選出馬を決めた黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は、「自由のための本当の闘いがこれから始まる」と訴えている。
この切実な声に国際社会は寄り添わなくてはならない。
トランプ米大統領は14日、香港の自治抑圧に関与した中国当局者や組織に制裁を科す香港自治法案に署名し、成立させた。日本も足並みをそろえ、国安法撤回を迫る具体的行動を急ぐべきだ。自らも中国から領土や価値を脅かされている日本が、国際的な連帯をためらう理由は微塵(みじん)もない。
中国外務省が米への対抗措置の方針表明 「香港自治法案」に強く反発
【北京=三塚聖平】中国外務省は15日、トランプ米大統領が「香港自治法案」に署名し同法が成立したことに対し、ホームページ上に掲載した声明で「中国は正当な利益を守るために必要な反応をし、米国の関係者や組織に制裁を実施する」と対抗措置を講じる方針を表明した。具体的な内容については言及しなかった。
外務省は声明で、香港国家安全維持法(国安法)の施行について「香港の長期的な安定と繁栄を保障するのに有益だ」などと主張した。その上で、米国の措置に対して「香港と中国内政への乱暴な干渉だ。中国政府は断固として反対し、強烈に非難する」と強く反発した。
在香港日系企業の8割超が国安法に懸念 情報制限の恐れを不安視
日本貿易振興機構(ジェトロ)は15日、香港事務所などが、在香港の日系企業を対象にしたビジネス環境
アンケートの結果を発表した。香港国家安全維持法(国安法)施行直後の7月上旬に実施したもので、8割超
が国安法に懸念を示してり、特に情報制限の恐れを不安視している。
この調査は昨年10月から、香港でのデモ・抗議活動が日系企業にどのような影響を与えるかをきっかけに
始まり、今回が4回目。香港日本人商工会議所の会員企業など598社に調査を要請し、304社から回答を
得た。
国安法については、32・7%が「大いに懸念している」、48・7%が「懸念している」と回答し、合計
すると81・4%が懸念を表明した。事業の影響については、59・4%が「現時点ではわからない」として
いるが、31・4%が「マイナスの影響が生じうる」と警戒感を示す。
懸念の理由としては複数回答で、「情報に制限がかかる恐れがある」が70・5%で最も多く、「香港の法
の支配、司法の独立が失われる恐れがある」が62・4%、「米国の制裁措置や米中関係の悪化を招きかねな
い」が61・5%で続き、多くの懸念が示されている
日本貿易振興機構(ジェトロ)は15日、香港事務所などが、在香港の日系企業を対象にしたビジネス環境
アンケートの結果を発表した。香港国家安全維持法(国安法)施行直後の7月上旬に実施したもので、8割超
が国安法に懸念を示してり、特に情報制限の恐れを不安視している。
この調査は昨年10月から、香港でのデモ・抗議活動が日系企業にどのような影響を与えるかをきっかけに
始まり、今回が4回目。香港日本人商工会議所の会員企業など598社に調査を要請し、304社から回答を
得た。
国安法については、32・7%が「大いに懸念している」、48・7%が「懸念している」と回答し、合計
すると81・4%が懸念を表明した。事業の影響については、59・4%が「現時点ではわからない」として
いるが、31・4%が「マイナスの影響が生じうる」と警戒感を示す。
懸念の理由としては複数回答で、「情報に制限がかかる恐れがある」が70・5%で最も多く、「香港の法
の支配、司法の独立が失われる恐れがある」が62・4%、「米国の制裁措置や米中関係の悪化を招きかねな
い」が61・5%で続き、多くの懸念が示されている