会見する自民党総裁・岸田文雄首相=1日午後、東京・永田町の自民党本部(矢島康弘撮影)自民党は衆院選で当初の予想を大きく上回る261議席を獲得した。新型コロナウイルス感染者数の減少や、国家観が異なる立憲民主党と共産党による共闘への国民の不安が要因とみられる。現行の選挙制度で初めて幹事長として選挙区で敗北した甘利明氏の辞任表明はあったが、憲法改正推進派は国会発議に必要な「3分の2」の勢力を確保した。岸田文雄首相(自民党総裁)が党是の実現に踏み出すかが注目される。
「政権選択選挙で自公政権の枠組みがより強い支持をいただいた」。首相は1日の記者会見で選挙結果についてこう述べ、皇室や安全保障などの見解が大きく異なるにもかかわらず、政権を獲得した場合の「閣外協力」に言及していた立民と共産との共闘が与党側に奏功したとの見方を示した。
今回の選挙では主要野党が多くの選挙区で候補者を一本化し、報道機関だけでなく、党が実施した情勢調査でも苦戦が想定された。しかし、開票が進むにつれ接戦区を制するケースが増え、全国に強固な組織を持つ自民の底力を証明した。
懸念は甘利氏の進退だった。政府の人事にも口を出した甘利氏の幹事長起用には、当初から党内で不満があった。それが選挙区敗北に伴い就任約1カ月での交代劇に発展。本来ならば首相の任命責任が問われ、求心力が低下してもおかしくない状況だが、茂木敏充外相の起用を早々と決めた。
茂木氏は旧竹下派(平成研究会)会長代行を務め、9月の総裁選では同派衆院議員の票を首相支持で固め、当選を後押しした。安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁ら党重鎮との関係も良好で、自民関係者は「嗅覚が鋭いのでバランス良く仕事をこなすのではないか。政調会長や選対委員長も歴任しているので経験も豊富だ」と太鼓判を押す。
今後は党の立て直しとともに、首相が任期内の実現に言及した憲法改正の行方も焦点となる。衆院選で憲法改正を公約に掲げた自民、公明、日本維新の会の3党で計334議席を獲得し、改憲発議に必要な310議席を超えた。
記者会見で憲法改正への意欲を自ら語りだした首相は「精力的に取り組む」と強調。「国民の理解を得ることが国会議員の行動にも影響する」とも語った。維新との連携について問われると、自公連立を「基本」としつつ「同じ保守勢力であることも踏まえ、政策ごとに是々非々で議論していく」と答えた。