コロナが憲法論議に影響 「緊急事態」や「権利の制約」に関心 衆院で改憲勢力が発議可能な議席確保 11/4(木) 8:00 Yahoo!ニュース
護憲派の集会に集まった参加者ら=
3日午後、神戸市中央区波止場町 日本国憲法が公布されてから3日で丸75年を迎えた。
10月31日投開票の衆院選では、連立政権を組む自民党と公明党が計293議席で前回より減らした一方、改憲を訴える日本維新の会が41議席と躍進。
3党で国会による改憲案の発議に必要な衆院での議席3分の2(310議席)を確保する結果となり、兵庫県内の関係者らはこれからの憲法論議の行方に注目している。
4年前の選挙で主な争点となった憲法改正。自民は党是に掲げ、公明は加憲を唱える。
今年6月には憲法改正手続きを定めた改正国民投票法が成立した。だが、今回の選挙では、県内でも新型コロナウイルス対策や経済の立て直しなどを優先して訴える候補者が目立った。
政治過程論などに詳しい品田裕・神戸大大学院教授は「コロナ禍で有権者の関心が高い政策が変わった」とみる。
岸田文雄首相がリベラル派で知られる「宏池会(岸田派)」出身である点を挙げ、改憲については「重視していた4年前の安倍晋三元首相と比べて、慎重に議論を進めるのでは」と推測。
また、立憲民主党と共産党では安全保障などの考え方が異なるため、「野党共闘で争点化しにくくなった」とも振り返る。
これまで憲法改正で最大の争点となっていたのは9条の改正だったが、コロナの緊急対応時に政府権限を強める「緊急事態条項」の新設が新たな論点として浮上。
自民党の一部は、条項の新設を大災害など非常時だけでなく、強い強制力を伴う外出制限などコロナ対策としての適用を訴える。
一方、護憲派の有識者らからは「コロナ対策としての権利の制約は現行法で対処できる」「自由が奪われる」などの指摘がある。
岸田首相は1日の会見で憲法改正への実現に意欲を示した。さらに、衆院選で躍進した日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は2日、憲法改正の国民投票を、来年夏の参院選の投票と同じ日に実施するべきとの考えを語った。
「投票率も上がり、大きな選挙のテーマになる」と述べた。 ◇ 改憲に向けた環境が整えられつつある中、反対する「戦争させない、9条壊すな! 総がかり行動兵庫県実行委員会」は3日、神戸市中央区のメリケンパークで集会を開き、ネット中継もした。
主催者によると約1500人が集まり、「コロナ禍で自殺者が増え、生存権も脅かされている。今こそ憲法を守り、広げよう」などと訴えた。
一方、憲法改正を訴える「日本会議」は兵庫支部を含め、コロナ禍などを理由にこの日の集会や街頭活動を控えた。
本部担当者は「現行の憲法では十分なコロナ対策ができない。国会での活発な憲法論議に期待したい」とした。(末永陽子)