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陸海空の自衛隊による統合演習の一環として、日本版「海兵隊」とされる陸上自衛隊水陸機動団(水機団)の水陸両用作戦が11月25日、鹿児島県の種子島で報道公開された。
活発化する中国の軍事活動にさらされる南西諸島の防衛を主な任務とする水機団。占領された離島の奪還を想定した作戦を記者が見た。
轟音とともに上陸
早朝午前7時、朝日に照らされた種子島西海岸。美しい砂浜が数キロ続く長浜海岸が作戦の舞台だ。浜には島を占領した敵のバリケードを模した鉄骨の工作物が整然と置かれている。
作戦はひっそりと始まっていた。沖合10キロほどの海上に待機していた輸送艦「くにさき」などに搭載されていた水陸両用車「AAV7」9両が海岸へ向かってゆっくりと進んでいた。
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午前8時前、浜辺に接近していた海上のAAV7から白い煙が上がり始めた。敵の目をくらませるためのスモークだ。9両は続々と上陸し、浜辺に陣取った。89式小銃を構えた水機団員約100人が次々と飛び出し、海を背に半円状に広がって敵を警戒する態勢に入った。1両目の上陸からわずか7、8分だった。
「ブゥォーーーーン」
大型扇風機のようなプロペラ2機の轟音が砂浜一帯に響きわたる。大型車両を積んだエアクッション艇「LCAC」(エルキャック)が水しぶきと砂を巻き上げながら浜辺に乗り上げた。LCACから大型車両を降ろしたところで報道公開は終了となった。
陸自も海上で訓練
実際の離島奪還作戦は上陸前に陸海空の航空機や艦艇による攻撃で敵戦力に打撃を加える。今回も上陸前日までに打撃演習を実施した。上陸後には後続の隊員を次々と上陸させ、先に上陸した水機団員とともに半円状の味方領域を広げていく。施設隊を投入して指揮所や駐留施設を構築し、島を奪還するまで続けるという流れだ。
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この日、上陸作戦の後、報道陣はLCACに乗船して輸送艦「くにさき」へ移動し、船上で陸自車両をLCACに載せて発進する場面も公開された。
LCACは戦車などの搭載スペースを取るため船室は非常に狭く、1畳ほどの空間に10人がすし詰めになって乗る。外は風速6・1メートル。うねりで船体は大きく揺れ、記者はすぐに気分が悪くなってしまった。
水機団員は日ごろ、水中に墜落したヘリコプターからパニックを起こさずに脱出するような訓練をこなしている。水機団が「精鋭無比」を誇ってきた陸自空挺団と並び称されるゆえんだ。
くにさきの船体内で陸自の水機団員は、120ミリ迫撃砲を牽引(けんいん)した高機動車を海自の船員と連携しながら格納庫のLCAC上に載せていった。LCACは海自隊員の「グリーンウェル(ウェルドックと呼ばれる格納庫の準備良好)」の合図でプロペラ音とともに発進していった。
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対処力と抑止力
水機団は平成30年3月に2個連隊で発足。米海兵隊との共同訓練を何度も経て水陸両用作戦のノウハウを学んだ。一度占領された離島を奪還するには海上から近付き、陸上戦闘で敵を制圧する水陸両用作戦が必要だ。そのために陸自と海自のスムーズな連携が求められ、今回の演習は陸海の連携を確認するのが最大のテーマだった。
終了後、水機団長の平田隆則陸将補は記者団に「わが国をしっかり守れる対処力、そしてわが国に良からぬことをすることを防ぐ抑止力を、しっかりと身に付けないといけない」と強調した。(市岡豊大)
【AAV7とLCAC】水陸両用作戦で使用する2つの装備。水陸両用車両「AAV7」は重さ22トン、全長8・2メートルで最大24人を運べる。12・7ミリ重機関銃を備え、戦闘まで全て行えるのが特徴。水上は最大時速13キロ、陸上は72キロ。エアクッション艇「LCAC(エルキャック)」はいわゆるホーバークラフト。重さ100トン、長さ27メートル。戦車サイズで1両、人員で約30人を積載でき、上陸場所を選ばないため災害救援にも活用される。