過去を研究し、未来を定義しよう。過去の学びを大切
にしないといけない。ロシアのウクライナ侵攻に関し、
西側諸国はモスクワの敵対的な行動に対し、声を挙げな
かった。
中国への対応が遅れれば、その影響は長年にわたって
残ることだろう。台湾に対する軍事的な介入は戦略的な
間違いだと分からせる必要がある。
国際社会は経済的、軍事的な援助を台湾に与えるべきだ。
台湾の国益、台湾の国民を守ることは航行の自由の確保
につながり、われわれの国益を守ることにもなる。
自由と民主主義を標榜する国は協力し、自由で平和な世界
を守らないといけない。
英トラス前首相「台湾は自由の灯」対中団結を IPAC
専制主義を強める中国に対し有志国の結束を訴えた英国のトラス前首相=17日午後、衆院第1議員会館(奥原慎平撮影)
英国のトラス前首相は17日、国会内で講演し、専制主義を強める中国に対し、自由主義諸国の団結を呼び掛けた。日米欧の国会議員らでつくる「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」などが共催した国際会議「人権外交フォーラム」で語った。主な内容は以下の通り。
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日英の絆は強みを増し、自由と民主主義を愛する国々と団結しようとしている。ただ、民主主義のもとに暮らす世界の人口は30年前に比べ減り、独裁国家は新たな世界秩序を作ろうとしている。
私は中国文化を尊敬する一人だ。ただ、中国の共産党政権は自由をコントロールしている。「立ち向かうのは無理だ」「全体主義的な中国は仕方がない」という声がある。そんな運命論を否定したい。われわれは中国に対し、中国の国民が政治的自由、経済的自由を得るべきだと伝えねばならない。
英国は対中関係において黄金の時代があった。レッドカーペットを敷き詰め、中国の国家主席を華々しくお迎えした。誤ったメッセージを送ったことになる。その数年後、中国共産党は2期10年の慣例を破り習近平総書記(国家主席)が3期目の続投を決め、影響力を世界の舞台に駆使するようになった。
あまりに多くのことをわれわれは無視していた。天安門事件、ウイグルの再教育施設、「一国二制度」が解体された香港。世界は見て見ぬふりをした。
台湾は自由の灯だ。だが、台湾を支配しようとする習氏の野心ははっきりしている。もっと大きな声で「それは受け入れられない」と北京に伝えないといけない。台湾との絆を強め、より多くのことを今、行うことで、「悲劇」を防ぐことができる。
北大西洋条約機構(NATO)と太平洋の同盟国の間に、より緊密な協力が求められている。英国と日本は今年1月、英軍と自衛隊が共同訓練などで相互訪問する際の手続きを簡素化する「円滑化協定」に署名した。防衛上の協力を深め、複雑な演習ができるようになった。英国のインド太平洋での安全保障も満たされる。日本は昨年、国家安全保障戦略など「安保3文書」を改定し、防衛費の増額も打ち出した。岸田文雄首相にお礼を申し上げたい。
われわれは目標を定めた不正な貿易慣行に抗議しないといけない。中国は2020年11月、豪州産のワインに高関税を発動した。新型コロナウイルスの発生源について第三者による調査を求めたモリソン前政権に反対するためだ。一方、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」のプロジェクトは非常に広大で、世界全体に影響力を与えている。
先進7カ国(G7)は、自由と民主主義のために立ち上がる基礎となる。G7に豪州を加えた名目国内総生産(GDP)は世界全体の50%を超える。この経済力を使い、民主主義と自由を守ろう。どの国に投資し、貿易をし、どの技術をどの国に輸出するかを決めよう。
英国は、ロシアのエネルギーをサプライチェーン(供給網)から分断し、中国の華為技術(ファーウェイ)を中心業界から排除した。ほかの自由主義国も中国への技術輸出について考え直してほしい。
G7は22年6月、途上国のインフラ整備を支援する新たな多国間枠組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」を打ち出した。英国は「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」承認の最終段階にある。より多くの国を包含し、自由貿易のルールに根付いた世界の秩序を促進しないといけない。台湾にも入ってほしい。
われわれは台湾とビジネスを続け、国家としての台湾のステータスを高めるべきだ。台湾は世界保健機関(WHO)に参加できず、台湾への情報のアクセスに害を与えている。台湾から学ぶべきものが多いことは、パンデミック(世界的大流行)の時代に経験した。台湾の人々が台湾のために声を挙げられる環境が重要だ。
過去を研究し、未来を定義しよう。過去の学びを大切にしないといけない。ロシアのウクライナ侵攻に関し、西側諸国はモスクワの敵対的な行動に対し、声を挙げなかった。中国への対応が遅れれば、その影響は長年にわたって残ることだろう。台湾に対する軍事的な介入は戦略的な間違いだと分からせる必要がある。
国際社会は経済的、軍事的な援助を台湾に与えるべきだ。台湾の国益、台湾の国民を守ることは航行の自由の確保につながり、われわれの国益を守ることにもなる。自由と民主主義を標榜する国は協力し、自由で平和な世界を守らないといけない。