性的少数者(LGBT)の権利保障を巡り、トランスジェンダー女性(生まれつきの性別は男性、性自認は女性)がトイレや更衣室など「女性用スペース」を利用することに懸念する声は根強い。
埼玉県富士見市の加賀奈々恵市議がLGBTの理解増進に関して一般女性の権利を考慮した制度運用を動画で訴えたところ、7日までに交流サイト(SNS)で150万回超視聴されるなど反響を呼んでいる。加賀氏に問題点を聞いた。
──LGBT問題に取り組んできた
「平成29年頃からパートナーシップ制度の導入をはじめ性的少数者の権利保障に取り組んできた。一方、性自認に基づく権利を自治体の計画などに位置付けることが一般の女性に与える深刻な影響について、理解が不十分なまま推進してきてしまったと思う」
──トランス女性の女性用スペースの利用について
「心の性がどうであろうと、身体が男性の人が女性用スペースを使えるという社会的合意は作るべきではない。『心は女性だ』と偽った性犯罪者が入り込んでも判別できないし、やはり怖い。女性は盗撮やのぞきなど性暴力被害を受けやすく、女性用スペースはシェルターともいえる場所だ。女性用スペースに、男性はいないという前提が崩れると安心して利用できない」
──トランス女性の権利行使は一般女性の権利と衝突しかねない
「そうだ。レズビアンやゲイの同性愛者、バイセクシュアル(両性愛者)の権利は保障されるべきだ。トランスジェンダーに対し、就職面での差別や差別的な言動はあってはならないが、慎重に考えねばならない部分がある」
──投稿した動画の反響が大きい
「匿名で賛同してくれる人が多いのではないか。30年頃から、トランスジェンダー女性を一般女性と同様に扱うことについて一部の女性たちは懸念を示したが、黙らされてきた。LGBT推進者に『トランス差別だ』と糾弾され、バッシングを受けたためだ」
──加賀氏はどうか
「LGBTの支援者に対し、身体が男性で、女性だと自認した人による女性用スペースの利用について『実は怖いと思っている』と懸念を打ち明けたところ、『あなたは男性恐怖症なので、カウンセリングが必要だ』といわれた。市井の女性の懸念はトランス差別に置き換えられ、個人の問題に矮小(わいしょう)化されている」
──国会でLGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案が議論される
「女性用スペースの問題をはじめ性的少数者の現状について丁寧な議論が行われているとは思えない。トランスジェンダーを巡る議論で、一般の女性の意見に耳を傾けてほしい」