LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を巡り、自民党の保守系議員が党内議論の進め方に反発を強めている。
12日に開かれた性的マイノリティに関する特命委員会と内閣第1部会の合同会議では法案への反対意見が根強いにも関わらず、議論が打ち切られ、部会長らに法案の取り扱いが一任されたためだ。「LGBT当事者や女性の不安が払拭されていない」(党中堅)と法案への懸念はくすぶる。
「反対が多いのに『一任』はあり得ない。党内民主主義に反する。法案提出ありきで期限を区切っているのではないか」
自民の和田政宗参院議員は13日、産経新聞の取材にこう述べ、憤りを隠さなかった。
12日の合同会議は4回目の条文審査となり、計28人が意見を述べた。幹部側は過去3回の議論も踏まえた修正案を提示したが、和田氏によれば、発言者の半数を超える15人が明確に反対を唱えたという。最終的に幹部側は特命委の高階恵美子委員長と内閣第1部会の森屋宏部会長への一任を決め、事実上の了承に至った。
特命委の幹事長を務める新藤義孝政調会長代行は会合後、記者団に「濃密な議論の土台がある中で、よい議論ができた。懸念のある部分にはさまざまな検討を加えた」と述べたが、苦渋の表情が浮かんだ。
2時間半にわたる会議の末、新藤氏は議論の打ち切りを提案した。ただ、保守系議員らが譲らず、席を立って新藤氏に詰め寄る場面もあった。
その1人、赤池誠章参院議員は13日、自身のツイッターで、「最後まで慎重審議を求めたが、賛成少数でも役員一任となり、あり得ない政策審議、党運営だ。(LGBT)当事者や多くの女性の不安を払拭することなく、法案が推進されることを危惧する」と書き込んだ。
高鳥修一衆院議員も13日にツイッターで、「多くの議員が求めた差別のガイドライン、性同一性の客観性、学校に関する条文の削除はゼロ回答のまま。(ひな壇は)聞かない力を発揮した」と投稿し、部会の運営を批判した。12日には、理解増進法の制定に強い懸念を示していた安倍晋三元首相に触れ、「安倍氏が亡くなったとたん、平気で裏切る議員が残念でならない」とも書き込んだ。
静岡県御殿場市長を経て令和4年参院選で初当選した若林洋平参院議員も12日のツイッターで、「慎重派の意見が圧倒的に多かったのにも関わらず強行一任で幕を閉じた‥地方自治では絶対あり得ない」と強調した。
法案に関する党内手続きは、16日にも開かれる党総務会での了承を経て、終える見通しとなっている。
自民議員グループ「日本の尊厳と国益を護る会」の代表を務める青山繁晴参院議員は13日、産経新聞の取材にこう懸念を口にした。
「LGBTに関する法律は日本社会となじまない。岩盤支持層だけではなく、自民から離れてしまう人が増えるのではないか」