岸田文雄首相と全閣僚が出席した衆参両院の予算委員会は1日、計4日間の日程を終えた。予算委とこれに先立つ代表質問を通じた最大の焦点は経済対策で、減税と防衛増税方針の整合性などが問われた。
一方、首相が自身の自民党総裁任期が満了となる来年9月までの実現を目指す憲法改正を巡っては、主要4野党の立場の違いが浮き彫りになり、「憲法国会」の様相も見せた。
日本維新の会の東徹氏は1日の参院予算委で、党が憲法改正条文案に掲げている「教育無償化」に言及し、首相にこう訴えた。
「教育にお金がかかることは少子化の原因の一つだ。徹底した教育の無償化を実現していくべきだ」
維新は今国会で、憲法改正を標榜(ひょうぼう)しながら具体的な中身に踏み込まない首相に対し、詳細な方向性などの表明を促す質問を繰り返している。衆院代表質問では馬場伸幸代表、衆院予算委では漆間譲司氏がそれぞれ首相の覚悟などを尋ねた。
国民民主党の玉木雄一郎代表も衆院代表質問で「首相が(総裁の)任期中に憲法改正を実現するのであれば、この臨時国会が勝負だ」と迫った。
一方、同じ野党でも、立憲民主党と共産党は予算委や代表質問で憲法改正を積極的には取り上げなかった。共産は改憲に反対で、立民は党内に護憲派を擁する。立民の田名部匡代参院幹事長は参院代表質問で、首相の改憲に関する言及を「三権分立の観点から適切ではない」と批判した。
維新、国民民主両党の念頭にあるのは、改憲までの具体的なスケジュールだ。改憲の是非を問う国民投票は、国会発議から60~180日間の周知期間を設けることになっている。来年9月から逆算すると、今国会で憲法改正案をまとめ、来年の通常国会終盤には国会発議を行う必要がある。
もっとも、改憲の成否を大きく左右するのは首相と自民の本気度だ。今国会で首相は、失点につながりかねない答弁を避けており、維新や国民民主の質問にも正面からは答えなかった。
現状の「改憲勢力」による発議を狙うのか、野党第一党の立民を含む広範な合意を目指すのか。いずれにしても、改憲を「党是」に掲げる自民の覚悟が問われる。(松本学)