FC2ブログ
10 月<< 2018年11 月  123456789101112131415161718192021222324252627282930  >>12 月
 

「反トランプ」のうねりはなぜ起こらなかったのか

「反トランプ」のうねりはなぜ起こらなかったのか



中岡望(東洋英和女学院大客員教授、ジャーナリスト)

 11月6日にアメリカの中間選挙が行われた。任期2年の下院議員435議席と、任期6年の上院議員100議席のうち3分の1の35議席が改選された。

通常、中間選挙は大統領選挙と同時に行われる本選挙に比べると関心が低く、投票率も低いのが特徴である。また、もう一つの特徴は、与党が議席を失うケースが多いことだ。

 ただ、今回の中間選挙は従来とは異なった様相を見せていた。多くの論者やメディアはこぞって「アメリカの選挙史上、最も重要な選挙」であると指摘していた。

すなわち、単なる議員の改選にとどまらず、トランプ大統領の「信任投票」の意味合いも含まれていたからだ。世論調査でも、60%以上が、トランプ大統領が投票決定の要因になると答えている。

 トランプ大統領の2年間の政策はアメリカの政治や社会を大きく変えただけでなく、戦後、アメリカが作り上げてきたリベラルな国際秩序も逆転させるものであった。

トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」や「アメリカを再び偉大にする」、「雇用を取り戻す」というスローガンを訴え、中西部や南部の白人労働者、妊娠中絶や同性婚に反対する立場をとることで「エヴァンジェリカル」と呼ばれるキリスト教原理主義者などの支持を得てきた。

 また、公然と白人至上主義やネオナチを支持し、ナショナリズムを主張するだけでなく、人種差別や女性差罰的な発言を繰り返し、物議を醸していた。人種的多様化にも否定的で、不法移民を犯罪者扱いするなど、従来のリベラルなアメリカ社会を根底から覆す政策を取ってきた。

 同時に共和党は大統領選で勝つためにトランプ大統領と「悪魔の取引」(『民主主義の死に方』で著者が使った表現)をした。

伝統的な保守主義者を共和党から排除したことで、穏健派は口を閉ざし、共和党はトランプ大統領の言いなりになる「トランプの党」へと変貌していった。そしてトランプ大統領は反対者やメディアを口汚く罵(ののし)り、極めて権威的な政治体制を作り上げてきた。

 今回の中間選挙でも、劣勢が予想される共和党候補を支援するため、積極的に支援活動を展開してきた。トランプ大統領が取った戦略は、移民の増加で白人社会が消滅すると強調し、白人有権者に恐怖感をあおった。移民に対する怒りを植え付け、国民を分裂させることで、「トランプ連合」と呼ばれる支持層を結束させようとした。

 『ニューヨーク・タイムズ』は、この戦略を「南北戦争以降、どの大統領もやったことのないような方法でアメリカ社会に人種的な分裂を引き起こし、今回の中間選挙は最も両極に分裂した」(11月5日)と分析している。

 中間選挙は、有権者がトランプ大統領の政策や理念にどのような判断を下すかが最大の焦点となっていた。選挙前の調査では、下院は民主党が過半数を占めるが、上院は共和党が過半数を維持するというのが大方の予想であった。

米オハイオ州のクリーブランドの集会で、父のトランプ大統領(右)の隣で演説するイバンカ大統領補佐官=2018年11月(ロイター=共同)

 まだ議席の最終確定はしていないが、予想通り民主党が過半数の218議席を上回った。ただ、民主党が圧倒的勝利を収めたとはいえない。オバマ政権が誕生して2年後の2010年の中間選挙では民主党は63議席を失う大敗北を喫している。それから見れば、今回の議席喪失は30議席程度で想定を上回っているが、共和党にとっては大敗北とはいえない状況である。

 上院は、現時点では共和党は3議席増やして、非改選を含め51議席を確保している。民主党は3議席失い、非改選を含め46議席にとどまっている。未確定の選挙区もあり、民主党がさらに議席を失う可能性も残っている。

 上院選挙に関していえば、民主党は厳しい戦いを強いられていた。そもそも、改選議席が共和党議員と比べると圧倒的に多かったからだ。さらに26の改選州のうち10州は大統領選でトランプ候補が勝利したトランプ支持の州である。

 もう一つ注目される選挙は州知事選だ。共和党は伝統的に州知事選では強く、圧倒的な数を占めてきた。前回の知事選では、共和党候補が33州で勝利し、民主党候補の勝利は16州にすぎなかった。

 今回の選挙では、現時点で民主党候補が7州で共和党候補に勝利し、現職の再選を含めて22州で勝利を収めた。共和党候補の勝利は25州にとどまった。下院と知事選では民主党が勝利し、上院では共和党が勝利するという結果となった。これに対して、トランプ大統領は選挙後、「今夜は大勝利である。皆さんに感謝する」とツイートしている。

 また、選挙前にトランプ大統領はAP通信とのインタビューに答えて「下院が負けても自分の責任ではない」と予防線を張っていた。上院の予想を上回る勝利に安堵したのは間違いないだろう。

 今回の選挙の特徴は、民主党も共和党も支持者の投票率を高めることに注力したことだ。通常、中間選挙では投票率が低下する。特に民主党支持者の投票率が低下する傾向がある。他方、共和党支持者は党に対する忠誠心が強く、民主党よりも高い投票率を示してきた。

 だが、今回は有権者の関心が極めて高かったのが大きな特徴である。特に民主党支持者は、トランプ大統領の政策に対して極めて強い懸念と怒りを抱いており、強い危機感が投票率を高めた。そうした選挙に対する関心の高まりは「ブルー・ウエーブ」と呼ばれた。

 ブルーは民主党を示す色である。ブルー・ウエーブの高まりが下院での民主党勝利に結びついた。ただ、ブルー・ウエーブは「波」にとどまり、「津波」になって共和党を圧倒するところまではいかなかった。オバマ大統領の誕生を支えたような大きなウネリは起こらなかったのだ。

 ただ、下院での民主党勝利の背景には、女性の有権者がトランプ大統領に反発し、民主党候補を支持したこともある。郊外の住む中産階級の高学歴の既婚女性は共和党支持が多かったが、今回は民主党支持に回ったとみられる。

投票所で報道陣に囲まれる下院選の民主党女性候補、オカシオコルテス氏=2018年11月、ニューヨーク(AP=共同)

 もう一つの特徴は、女性が主役であったことだ。女性候補者は過去最高を記録している。下院では少なくとも95人の女性候補の当選が見込まれている。そのうち70人が民主党候補で、28人が新人である。

 結果として、民主党の支持者動員は成功したといえる。では、なぜ民主党は圧倒的な勝利を得ることができなかったのか。それは同時に共和党の動員戦略も奏功し、多くの共和党支持者も投票所に足を運んだからである。

 トランプ大統領の恐怖と不安をあおり、国境に押しかける中米からの移民を求める人々を批判する戦略が共和党支持者に浸透したことは間違いない。民主党支持者がトランプ大統領に危機感を抱いて投票したのと同じように、共和党支持者は不法移民によって白人社会が消滅するかもしれないという恐怖感を抱いて投票所に向かったのである。それが全体の投票率を高めた。

 現在のアメリカの政治の現実を見ると、選挙運動を通して支持者を増やすことは期待できない。共和党支持者はどんなことがあっても共和党支持の立場を変えないし、トランプ大統領がどんな大統領であっても支持し続けるからだ。民主党にも同様な傾向がある。お互いが自分の支持層にのみ語りかけているのである。

 選挙の結果は、いかにして支持者を投票所に向かわせるかによって決まるといっても過言ではない。無党派をどう取り込むかも勝敗を大きく分けるが、政治の両極化が進む中で無党派層も政治的な色分けが明確になってきており、風の向きで支持政党を変える可能性は小さい。

 では、選挙結果はトランプ大統領にどのような影響を与えるのであろうか。下院の敗北や州知事選での後退によって、政策の軌道修正を図るのだろうか。その可能性は皆無であろう。むしろ上院の勝利によって大統領に対する支持が確認されたと主張するだろう。

 また、常套(じょうとう)手段であるが、下院選挙で不正が行われたと主張するのは間違いなく、民主党に対する対決姿勢を強めていくことは間違いないだろう。

 ただ、議会は民主党が下院で、共和党が上院で多数派を占めることになる。議会運営はますます困難になるだろう。下院は民主党が過半数を占めたことで、常設委員会の委員長のすべてを占めることになる。予算案の作成を担当する歳出委員会や財政委員会は、トランプ大統領の予算案や減税案に反対するだろう。

 一方、トランプ大統領のロシア疑惑などを審議する司法委員会は、トランプ大統領に関連する様々な疑惑や不正行為の調査を始めたり、弾劾問題を取り上げたりする可能性がある。2020年の大統領選を見据え、下院民主党との対立が先鋭化するのは間違いない。

 トランプ大統領の下で行われた環境規制や金融規制などの規制緩和の政策の見直しも行われるだろう。移民政策も大きな対立点になると予想される。ただ、共和党が上院で過半数を確保したことで、任命人事はトランプ大統領の思い通りに進むことになる。特に連邦裁判所判事に保守派を登用する動きは強まるとみられ、連邦裁判所判事の承認に際して、上院はフィリバスター(議事妨害)を使えないので、過半数で承認することが可能である。

 さらに、トランプ大統領は下院民主党との対立が強まれば、議会を迂回(うかい)する手段として「大統領令」を乱発すると予想される。この2年でも多くの大統領令を出してきたが、連邦裁判所の違憲判決に合い、トランプ大統領の思い通りには進まなかった。

だが、トランプ大統領はゴーサッチ最高裁判事とカバノー最高裁判事を任命し、9人の最高裁判事のうち5人が保守派が占め、大統領令に対して違憲判決を下す可能性は少なくなっている。

米中間選挙で共和党候補を支持し、トランプ大統領を応援する旗を掲げる人たち.=米フロリダ州オーランド、2018年11月(AP=共同)

 先の大統領選で、オバマ大統領に対して共和党が一致団結して抵抗したことが思い起こされる。おそらく民主党もトランプ大統領に対する対決姿勢を強めることは間違いない。今後、トランプ大統領と民主党の対立は深刻化し、議会が機能しなくなるだろう。

 いつものことだが、選挙が終わると、識者やメディアは「アメリカは2つに分裂している」というコメントを出すが、今回の選挙は改めてアメリカ社会の分裂の深刻さを示したといえる。
関連記事



■憲法改正の早期実現を求める国会議員署名について

賛同国会議員441名(10月18日現在)

■憲法改正の早期実現を求める意見書採択について

地方議会にて36都府県 /59市区町村

■石川、熊本、愛媛、千葉、香川、富山、兵庫、鹿児島、群馬、栃木、岡山、大分、宮城、山形、高知、佐賀、埼玉、山口、長崎、宮崎、和歌山、岐阜、神奈川、大阪、福井、京都、茨城、東京、徳島、静岡、新潟、秋田、山梨、福岡、滋賀、長野

■【神奈川県】横浜市、川崎市、横須賀市、藤沢市、茅ケ崎市、逗子市、大和市、海老名市、座間市、秦野市、伊勢原市、小田原市、厚木市、愛川町、寒川町、箱根町【東京都】荒川区、小笠原村、日野市、中野区、府中市、町田市、調布市【千葉県】酒々井町【茨城県】常総市【京都府】綾部市【石川県】羽昨市、七尾市、内灘町【富山県】舟橋村、立山町、入善町、滑川市、富山市【大阪府】大阪市、和泉市【奈良県】田原本町【愛媛県】松山市、今治市、四国中央市【福岡県】福岡市、北九州市、川崎町、遠賀町、大川市、篠栗町、芦屋町、行橋市、春日市、糸島市、大木町、柳川市、【佐賀県】鳥栖市、佐賀市【長崎県】佐世保市、大村市、対馬市【熊本県】合志市、多良木町、菊陽町で可決


■本会FACEBOOK■

憲法改正を実現する1,000万人ネットワーク 美しい日本の憲法をつくる国民の会

美しい日本の憲法をつくる国民の会結成 http://prideofjapan.blog10.fc2.com/blog-entry-6361.html


■日本会議の動画を見る■
●日本会議のyoutubeを見る
■日本会議書籍コーナー■

コメント



 編集・削除ができます。
 管理者にだけ表示を許可する
 

最近の記事

プロフィール

日本会議地方議員連盟

  • Author:日本会議地方議員連盟
  •  日本会議(会長 三好達元最高裁長官)は、平成9年5月、各界代表や都道府県代表が参加して設立されました。元気で誇りある国づくりをめざして、超党派の国会議員懇談会(会長 平沼赳夫前経済産業大臣)の皆さんとともに全国で国民運動を推進しています。

     このたび、日本会議に所属する全国の地方議員が連携し、地方議会から「誇りある国づくり」を発信するため日本会議地方議員連盟を設立しました。(平成17年3月6日)

     議員連盟では、外交、防衛、教育、文化などの国の根幹に関わる基本問題に連携してとりくむネットワーク作りを進め、「憲法・教基法」の改正をめざします。

     議員会員(年間1万円)には、会員専用サイトを設け、国会の動き、時局問題に対する見解、全国地方議会の動きなど国民運動情報を提供します。
    皆さんどうぞご入会ください。

    入会はこちらから

     ●日本会議地方議員連盟へのご入会の案内20070112155311.jpg

    ■設立趣意書

     戦後わが国は、日本の弱体化を企図した占領政策の桎梏から抜け出せないまま、外交、防衛、教育、文化などの国の根幹にかかわる基本問題について、多くの病弊を抱えたまま今日に至っている。

     近年、新教育基本法の制定、国民投票法案の成立、さらには防衛賞昇格など、戦後体制を脱却する動きは注目すべきである。しかしながら、その潮流はまだ大きなものとはなっていない。

     この時にあたり、今こそ発言し行動する真正保守の結集が問われている。ここに志しある地方議員は「誇りある国づくり」をめざす日本会議と連携し、地方議会よりその動きを起こし、日本の国柄に基づく新憲法制定へ向け日本会議首都圏地方議員懇談会を設立する。

     全国の良識ある地方議員が我々の趣旨に賛同され、あまたの先人が築いてこられた、この祖国日本を再建するため、我々は、下記の基本方針を掲げて献身することを誓うものである。

        (平成十九年十月六日)

    〈基本方針〉
      
    1、皇室を尊び、伝統文化を尊重し「誇りある日本」の国づくりをめざす。

    2、わが国の国柄に基づいた「新憲法」「新教育基本法」を提唱し、この制定をめざす。

    3、独立国家の主権と名誉を守る外交と安全保障を実現する。

    4、祖国への誇りと愛情をもった青少年の健全育成へ向け、教育改革に取り組む。

    私たちはめざします。
    全国に3000名議員集団を!

    「誇りある国づくり」を掲げ、皇室・憲法・防衛・教育等の課題に取り組みむ日本会議と連携し、地方議会を拠点に、次のような運動を推進します。

    ①改正された教育基本法に基づき、国旗国歌、日教組、偏向教科書問題など、教育改革に取り組みます。

    ②青少年の健全育成や、ジェンダーフリー思想から家族の絆を守る運動を推進します。

    ③議会制度を破壊しかねない自治基本条例への反対など保守の良識を地方行政に働きかけます。

    【役員紹介】

    役員一覧

カテゴリー

ブログランキング


閲覧者数平成19年8月15日カウンター設置
現在の閲覧者数: banner.gif←他サイトも参照下さい。



憲法改正を実現する1,000万人ネットワーク 美しい日本の憲法をつくる国民の会

憲法改正早期実現国会議員署名


■  422名  (11月21日現在)




憲法改正早期実現意見書採択可決


■36都府県 /59市区町村議会

■石川、熊本、愛媛、千葉、香川、富山、兵庫、鹿児島、群馬、栃木、岡山、大分、宮城、山形、高知、佐賀、埼玉、山口、長崎、宮崎、和歌山、岐阜、神奈川、大阪、福井、京都、茨城、東京、徳島、静岡、新潟、秋田、山梨、福岡、滋賀、長野

■【神奈川県】横浜市、川崎市、横須賀市、藤沢市、茅ケ崎市、逗子市、大和市、海老名市、座間市、秦野市、伊勢原市、小田原市、厚木市、愛川町、寒川町、箱根町【東京都】荒川区、小笠原村、日野市、中野区、府中市、町田市、調布市【千葉県】酒々井町【茨城県】常総市【京都府】綾部市【石川県】羽昨市、七尾市、内灘町【富山県】舟橋村、立山町、入善町、滑川市、富山市【大阪府】大阪市、和泉市【奈良県】田原本町【愛媛県】松山市、今治市、四国中央市【福岡県】福岡市、北九州市、川崎町、遠賀町、大川市、篠栗町、芦屋町、行橋市、春日市、糸島市、大木町、柳川市、【佐賀県】鳥栖市、佐賀市【長崎県】佐世保市、大村市、対馬市【熊本県】合志市、多良木町、菊陽町で可決


辺野古移設賛同  地方議員署名


■現在署名数 1812名(231議会)




私たちのめざす 方針と活動



一、新教育基本法に基づいた教育改革と教科書採択を推進する

一、議場への国旗掲揚を推進し、地方から誇りある国づくりを提唱する

一、議会否定につながる自治基本条例を阻止し、議会活動を活性化する

一、ジェンダー思想を相対化する、家族の絆を守る運動を推進する

一、時局問題への対応を敏速に行う

一、研修会、講演会を開催し、会員相互の見識と親睦を深める

一、全国に3千名の地方議員ネットワークを形成する

…………………………………………………………………………

■【人権救済法案問題】
●人権侵害救済法案に反対する意見書案

※人権侵害救済法案の問題点について

…………………………………………………………………………

■【自治基本条例問題】   
議会否定につながる自治基本条例の阻止を

①自治基本条例の問題点について

②外国人に対する住民投票権の付与について

……………………………………………………………………………

■【議場の国旗掲揚推進】
地方議会議場での国旗掲揚について

……………………………………………………………………………

■【外国人参政権問題】
●外国人参政権に反対する意見書採択について

反対決議は362市町村議会(H22年9月1日現在)

慎重議員署名4071名・535議会(同年9月1日現在)

慎重首長署名568自治体(7県知事221市区340町村長・同年9月1日現在)

………………………………………………………………………………

 

尖閣諸島上陸許可要望議員署名


      ↓
■議員署名用紙

現在 4182名
(387議会)

詳細はこちらをクリック

石垣市長・議長連名のお願い文ご活用下さい
      ↓
●石垣市連名の議員署名のお願い文







 
 
 
 

議会否定の自治基本条例