【ワシントン=黒瀬悦成】オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は29日、ABCテレビの報道番組に出演し、北朝鮮が「クリスマス・プレゼント」と称する挑発行動を仕掛けてきた場合、「米国は非常に失望するし、失望感も表明する」と述べ、対抗措置をとる考えを明らかにした。
オブライエン氏は、北朝鮮が核実験や長距離弾道ミサイル発射を再開した場合の対応について、「(北朝鮮が)何を起こそうとしているのか憶測は控えるが、米国には多数の道具がある」とした上で「北朝鮮に追加的な圧力を課すこともあり得る」と強調した。
同氏はまた、「米国は現状の事態に当然懸念を抱いており、(北朝鮮の動静を)子細に監視していく」と語った。米朝間には「コミュニケーションを取る手段が残されている」とも明かした。
さらに、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長には「2つの進みうる道がある」と指摘。「韓国のように非常に繁栄し裕福な国になるという、北朝鮮国民にとって輝かしい道か、制裁と孤立化の道を歩み、のけ者国家となるかだ」と語り、改めて非核化を促した。
ボルトン前大統領補佐官が今月、トランプ政権の圧力政策を「言葉だけ」などと批判したことに関しては、「トランプ氏は金氏との核協議再開の見通しに幻想を抱いていない」と反論し、対北政策はボルトン氏の言う「失敗」には陥っていないと主張した。
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トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は昨年6月、シンガポールで史上初の米朝首脳会談を行い、朝鮮半島の完全非核化などをうたった共同声明に署名した。
その後、交渉は停滞し、今年2月のベトナム・ハノイでの2回目の会談は北朝鮮が核施設廃棄と引き換えに求めた制裁解除に米側が応じず物別れに終わった。
10月にはスウェーデン・ストックホルムで実務協議が行われたが、北朝鮮は一方的に「決裂」を表明。北朝鮮は「非核化は既に交渉のテーブルにない」などと主張している。
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2つの「期限」に自ら縛られた金正恩氏
【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の重大方針を決める朝鮮労働党中央委員会総会が年末という異例の時期に開催されたのは、金正恩(キム・ジョンウン)党委員長が非核化などをめぐる米国との交渉期限を一方的に年末に指定したからだ。数日後に迫った来年元日には、施政方針に当たる「新年の辞」で対米を含む新方針を打ち出さざるを得ず、2つの期限に追われた末の瀬戸際開催となったといえる。
朝鮮中央通信は29日、総会の全参加者は「党委員長同志の歴史的な報告を注意深く聴取している」とし、「会議は続く」と伝えた。総会が1日で終わらないのは1990年1月以来、約30年ぶり。外交や軍事、経済などそれほど議題が多いことをうかがわせる。
実務陣にとって党の方針は本来、固まっていて当然の時期だ。最高指導者が国の方向を示す新年の辞に反映しなければならないからだ。金氏は4月の演説で「年末まで米国の勇断を待つ」と明言しており、ぎりぎりまで米側の出方を見定める必要があったようだ。
2017年の新年の辞では、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射準備が「最終段階にある」と表明。11月の発射で国家核戦力の完成を宣言し、翌年の新年の辞では、平昌五輪への参加と韓国との対話を提案し、米朝首脳会談につなげた。最高指導者の言葉通りの政策実現への並々ならないこだわりを物語る。
今年の新年の辞では、米国の制裁が続けば、「新たな道」を模索せざるを得ないと言及しており、新たな道に関して一定の答えを用意する必要がある。昨年の総会で打ち出した経済集中路線を撤回すれば、国内の不満も生みかねず、制裁が続く中でも「自力更生」による経済建設に進む路線を再確認するとみられる。
最近開かれた党中央軍事委員会拡大会議では、自衛的国防力の発展を討議しており、相次ぐミサイル発射に象徴される国防力の増強も打ち出す可能性が高い。ICBMと核実験の扱いについては、即再開を表明すれば、北朝鮮を擁護する中国やロシアの支持まで失うリスクがあり、具体的に踏み込むのか注目される。