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宮古島の陸自ミサイル部隊強化が今こそ必要な理由

■ 強化すべき宮古島の陸自ミサイル部隊

 こうしたアメリカの防衛態勢は、「中国海洋戦力を第一列島線内に封じ込める」ことによって、第一列島線から西太平洋にかけてのアメリカの軍事的優位を確保するためのものである。

 一方、日本にとっては、九州から与那国島にかけての第一列島線北部におけるミサイルバリアによる防衛態勢は、まさに九州から与那国島にかけての日本の領域、そして日本国民を守るための最前線の防衛戦力ということになる。

 日本防衛当局もミサイルバリアを構築する方向に歩み始めており、4月初頭には、宮古島に陸上自衛隊地対艦ミサイル部隊(第302地対艦ミサイル中隊)と陸上自衛隊防空ミサイル部隊(第346高射中隊)が配備され、2019年3月より駐屯していた宮古警備隊と合流した。

 しかしながら、ミサイル部隊配備や弾薬庫設置に対して地元住民からの幅広い理解を得られておらず、ミサイル部隊(人員と関連装置)の配備が済んだといっても、肝心要のミサイルそのものは宮古島に持ち込まれていない状態であるという。


宮古島の陸自ミサイル部隊強化が今こそ必要な理由

5/21(木) 8:01配信

JBpress







 (北村 淳:軍事社会学者)

 半世紀にわたって、2年に一度、ホノルルを本拠地として開催されてきた多国籍海軍合同演習「リムパック」が、新型コロナウイルスの影響で中止に追い込まれそうになっていた。しかし、何としてでも伝統ある大演習を中止させたくないと考えるアメリカ海軍は、実施期間と演習内容を大幅に縮小して、なんとかリムパック2020を開催することを決定した。

【地図】第一列島線。宮古島は第一列島線上に位置する

 通常、リムパックは6月下旬から8月上旬にかけて、ハワイ周辺と南カリフォルニアで多数の国々から集結した海軍艦艇や航空機、それに陸上部隊などによって、様々な洋上作戦や水陸両用作戦、災害救助作戦などの合同演習が実施されていた。

 それに対しリムパック2020は、8月17日から31日までの2週間、ハワイ周辺海域における洋上演習だけに限定して実施される。また、新型コロナウイルス感染を警戒するハワイ州民やホノルル市民との接触をゼロにするため、参加する艦艇に乗り組んでいる将兵の上陸は一切禁止されることになった。

 そして、洋上での艦艇や航空機だけでの合同演習に限定され、海兵隊や陸上自衛隊などの陸上部隊が加わって実施されることになっていた水陸両用作戦や地対艦ミサイルなどの演習は中止されることになってしまった。

■ 惜しまれる地対艦ミサイル演習の中止

 トランプ政権は中国とロシアをアメリカの主たる仮想敵と名指ししている。そのため、リムパック2020を主催するアメリカ海軍大平洋艦隊の主敵は中国海洋戦力ということになる。

 当初、リムパック2020では、アメリカ軍と陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊による地上から洋上の艦艇を撃沈する演習が、中国に対する警告として“目玉”になると考えられていた。しかしながら、地上部隊による演習ということで、中止に追い込まれた。

 なぜ「地対艦ミサイル演習」が目玉と考えられるのかというと、これまで空母中心主義に固執してきたアメリカ海軍が、東シナ海や南シナ海で強力な「A2AD」(接近阻止・領域拒否)戦力を手にするに至った中国軍と対峙するには、空母中心主義への拘泥を捨て去り、新たな戦略に転換しなければならなくなったからだ。

■ 空母中心主義から「ミサイルバリア」へ

 アメリカの防衛にとって、対中国戦略の目的とは、何もアメリカ軍侵攻部隊が中国大陸に攻め込み中国軍を壊滅させることではない。中国海洋戦力が第一列島線を越えて西太平洋にまで優勢範囲を拡大してしまうことを阻止するのが、とりあえずの対中戦略目標なのだ。

 したがってアメリカ軍としては、有事に際して中国海軍に第一列島線を突破されない態勢を固めておかなければならない。これまでの戦略に従うと、横須賀を本拠地にする空母打撃群に増援の空母打撃群2~3セットを加えて、九州から台湾、そしてフィリピンにかけての第一列島線周辺で中国海軍や航空戦力を撃破するというものだ。空母中心主義に凝り固まっていた米海軍としては空母打撃群を“主役”に据えるのは当然であった。

 しかしながら、中国の各種A2AD戦力が極めて強力になったため、もはや第一列島線周辺では空母打撃群は“標的艦隊”になりかねない状況となってしまった。

 それだけではない。空母を含む米海軍艦艇のメンテナンス状況が遅延に遅延を重ねている状況であるため、少なくとも3セットの空母打撃群を西太平洋に送り込むことなど不可能に近い状態なのだ。

 そこでアメリカ海軍としても、第一列島線周辺で中国軍の優勢な艦隊や航空勢力を撃退するには、空母艦隊ではなく、第一列島線上に設置されたミサイルバリアを“主役”に据える戦略転換を認めざるを得なくなっているのだ。

 すなわち、第一列島線上のできるだけ多くの島々に、陸上を移動することが可能な地対艦ミサイル(艦船を攻撃するミサイル)と地対空ミサイル(航空機やミサイルを撃墜するミサイル)を多数配備して、第一列島線に接近してくる中国海軍艦隊と中国航空戦力を迎撃する態勢を構築するのである。

■ 強化すべき宮古島の陸自ミサイル部隊

 こうしたアメリカの防衛態勢は、「中国海洋戦力を第一列島線内に封じ込める」ことによって、第一列島線から西太平洋にかけてのアメリカの軍事的優位を確保するためのものである。

 一方、日本にとっては、九州から与那国島にかけての第一列島線北部におけるミサイルバリアによる防衛態勢は、まさに九州から与那国島にかけての日本の領域、そして日本国民を守るための最前線の防衛戦力ということになる。

 日本防衛当局もミサイルバリアを構築する方向に歩み始めており、4月初頭には、宮古島に陸上自衛隊地対艦ミサイル部隊(第302地対艦ミサイル中隊)と陸上自衛隊防空ミサイル部隊(第346高射中隊)が配備され、2019年3月より駐屯していた宮古警備隊と合流した。

 しかしながら、ミサイル部隊配備や弾薬庫設置に対して地元住民からの幅広い理解を得られておらず、ミサイル部隊(人員と関連装置)の配備が済んだといっても、肝心要のミサイルそのものは宮古島に持ち込まれていない状態であるという。

 ミサイルを装備していない状態であるのは論外だが、ミサイルが運び込まれても、そもそも第302地対艦ミサイル中隊と第346高射中隊によって連射可能なミサイルの数が少なすぎる。

 世界最強の各種長射程ミサイル戦力を擁する中国軍が第一列島線上の宮古島に接近してくる場合、中国艦艇と中国航空戦力を撃退するには、宮古島の地対艦ミサイル部隊も地対空ミサイル部隊もそれぞれ180発前後のミサイル連射能力を手にしていなければならない(拙著『シミュレーション日本降伏』参照)。もし、宮古島、石垣島、久米島、沖縄本島、奄美大島などにそのように強力なミサイル部隊が配備されていたならば、中国軍作戦家たちは南西諸島列島線への接近突破は大いに躊躇せざるを得なくなるのだ。

 (参照:本コラム2014年5月8日「効果は絶大、与那国島に配備される海洋防衛部隊」、2014年11月13日「国産地対艦ミサイルの輸出を解禁して中国海軍を封じ込めよ」、2019年1月10日「米軍が今になって地対艦ミサイルを重視する理由」、拙著『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』など)

■ 米軍部隊が走り回っても良いのか

 しばしば、宮古島にミサイル部隊を配備すると、その部隊を狙う中国軍の攻撃を呼び込むようなものである、との主張を耳にする。しかしながら、宮古島島民や日本国民、そして日本政府が絶対に日本から中国に対して武力攻撃(もちろん、現状では不可能な状態であるが)はしないとの固い決意を持っていても、「日本が軍事攻撃をしないならばこちらからも日本に対する軍事攻撃はしない」と中国共産党指導部(なにも中国に限定することはないのだが)が考えるとは限らない。むしろ、丸腰の島であるがために簡単に上陸占領部隊を送り込んでくる可能性がある。

 そもそも地対艦ミサイルも地対空ミサイルも、平和論者のいうところの専守防衛兵器である。外敵の艦艇や航空機が日本に侵攻してこなければ、使用することができない専守防衛兵器なのだ。

 そして、宮古島に配備されるミサイル部隊の戦力が強力であればあるほど、宮古島へは艦艇も航空機も接近することがなくなり、宮古島にミサイルや誘導爆弾が降り注ぐ可能性は消滅するのである。

 日本政府・国防当局は、宮古島をはじめ第一列島線上の人々に、強力なミサイル部隊を配備することこそ島民はもとより日本を安全にすることになるというミサイルバリアの防衛原理を丁寧に説明し、正々堂々と陸自ミサイル部隊の配備を、それも強力な戦力を持たせて、推し進めるべきである。

 もしも住民の納得を得られず、日本政府が姑息な手段で、かつ限定的戦力しか保持しないミサイル部隊の配備を中途半端に実施した場合には、アメリカ政府・軍当局がアメリカ自身の国防戦略上の都合から、宮古島や石垣島、沖縄本島や奄美大島などの第一列島線上に、米海兵隊と米陸軍のミサイル部隊を多数配備させるよう強硬に日本政府に圧力をかけてくるかもしれない。

 米軍のミサイル部隊が日本の国土を走り回るよりも、自衛隊部隊が配備に着いていた方が数等倍マシな状況であることは明白だ。

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