自民党は2日、選択的夫婦別姓を含む「氏制度のあり方に関するワーキングチーム(WT)」の初会合を開いた。党内では別姓について慎重派と推進派がそれぞれ新たな議員連盟を立ち上げるなど議論が再燃しており、WTでも賛否が拮抗(きっこう)した。秋までに行われる衆院選の公約でのあり方をめぐり主導権争いが繰り広げられる可能性もあり、結束の土台が揺らぐことを危惧する声が漏れる。
「党内はもちろん、国民の間にも多様な意見が存在する。論点整理をしていくことがまずは大切だ」。下村博文政調会長は会合の冒頭にこう述べ、冷静な議論を呼びかけた。
この日は20人以上が意見を述べた。慎重派は子供の姓をめぐり夫婦間で争いが起こり、家族の一体感が失われることなどを懸念。改姓の不便を解消するためには結婚前の氏を通称として幅広く使用できる環境を整えるべきだと主張した。
これに対し、推進派は別姓に対する国民の賛意が広がっているとして「変えるべきことは変えないといけない」と強調。男女共同参画の推進や現在の戸籍制度を維持する必要性ではおおむね意見の一致を見た。
最高裁は早ければ夏までに夫婦同姓を定めた民法規定が憲法に適合するか判断を下す可能性があり、WTはそれまでに論点や課題の整理を終わらせたい考えだ。
座長を務める石原伸晃元幹事長は党の見解をまとめる必要性に言及したが、意見集約は難航が予想される。政府が昨年12月に策定した第5次男女共同参画基本計画をめぐっては、慎重派と推進派との間で激論が交わされた。推進派はその後も訴えを強めており、今回のWT設置にも尽力。3月には「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」を設立した。
一方、慎重派は別姓に後ろ向きだった安倍晋三前政権の退陣とタイミングを合わせたかのような推進派の活動強化に戸惑いを隠せない。推進派議連の名称が「対立をあおっている」として先鋭化を警戒し、1日に「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」を立ち上げた。
衆院選前の党の分断を心配する重鎮は「推進派は大局が分かっていない。自民を熱心に支持してきた保守系団体が動かなくなって票が減りかねない」と懸念を示す。党内には両派とは別に「中間派」の議連立ち上げを模索する動きもあり、主導権争いの激化を抑えられるかが焦点となる。(広池慶一)