UNK通信(番外編6号)
格差問題とグローバリズム―民主党が政権を取って格差を解消できるのか?
昨年7月の参議院選挙で民主党が大勝した原因の一つは、小選挙区制の下、地方で勝利したことであった。地方の疲弊、中央との格差に焦点を当てて戦った小沢戦略の勝利とも言える。それ以来、にわかに格差が声高に言われるようになった。
マスコミは「日本は小泉政権のあと、急速な格差拡大社会になっている」と警鐘を鳴らし、国民もそれに賛同しているようである。さらに来るべき総選挙で民主党が第一党になり政権を取れば格差は小さくなると言っているが本当であろうか。ここで少し冷静になり、格差について考えてみたい。
従来、世界の中で平等が実現して格差の少ない国の一つは、日本であると言われてきたった。現在でも他の国に比べれば格差は小さいと言える。(註1)しかし最近は確かに格差が拡大しているなと感じられる。この格差拡大の原因は何であろうか。その原因には多くの要因があるが、一番その根底にあるのは近代資本主義であり、さらに直接の犯人はグローバリズムであると見て間違いないであろう。
グローバリズムの定義は難しいが、ウィキペディアによると「全地球的に市場原理を押し広げること」とある。もう少し分かりやすく「グローバリズムとは、人が行動する時、国という枠に捕らわれず世界中どこでも自由に行動でき、国は出来るだけその行動を規制せず自由に放任すること」と言ってもよい。
資本主義においては資本が利潤を求めるものである以上、一国経済の枠を超え、より効率がよくなるようにグローバル化するのは当然の成り行きである。そしてこのグローバル経済が一旦出来上がると、それに適応できる層と出来ない層とが出現することになる。
適応できるものは繁栄するが、適応できないものは沈滞することになる。そのようにして二極化が進行し、格差が拡大するのである。製品コストに人件費の占める割合が高いと、必然的に人件費の安いところに生産拠点が移動する。市場原理主義で何の規制もなければ、この流れを止めることは出来ない。
現在日本で成人一人を雇用するのに500万円/年かかるとする。一方シナやインドでは同じ500万円で10~20人の人を雇用できるのである。同じ製品を同じように作るのであれば日本を拠点とする企業は生き残れない。
日本企業も生き残りを懸けて資本・技術を武器に合弁会社を作り、生産拠点は人件費の安いところへ移し、製品を安く供給する体制をつくる、これが経済のグローバル化の実態なのである。さらに格差には「地域間格差」と「地域内格差」がある。
前者は都会と地方との間の格差であり、後者は同一地域内での格差である。どちらも大きな問題であるが、地方にはグローバル化に適応出来ない産業・企業の比率が多いという難問がある。一方、都会には高度な知識・技術を必要とする産業・商業・金融等グローバリズムの波に乗って躍進する企業が出てきている。これが日本における格差問題、中でも地域間格差問題の本質なのである。
最近の民主党は、国や国民の為と言うより政権を取ることを第一に考え行動しているように見える。格差問題でも自民党を攻撃しているが、政権を取ってもこの厄介な問題を解決出来るとは思えない。
今彼らが言っているのは単に都会の冨を取り上げ地方に配分すると言うだけで、そのような事を続けていけば日本は全体として沈滞して行くだけである。考えてみるとこれまで地方が何とかやって来れたのは、補助金行政と公共事業であったと言える。
米の減反政策で明らかなように安易な補助金制度は米生産農家の意欲をなくさせる最悪のものであった。政治家や官僚の汚職が発端で公共事業が抑制され、これに代わる施策がない地方は極端な不況に陥り、さらにグローバル化に直面しているのである。民主党に厳しいことを言ったが、自民党もこの格差問題については民主党と同じく無策であり、政権与党であるだけ腹立たしいものがある。
それではどうすればよいのか?その対策を考え、具体策を提唱し、実現に向けての仕組みを作り、実現可能な明るい未来の姿を国民に示し、そこに至る軌道に国全体をのせるよう先頭に立って進むのが政治家の役割なのである。
そのことを自覚した政治家が現在の日本にどれ程いるであろうか。グローバリズムは無条件で良きもの、この流れに乗れなければ日本は生きていけないと遮二無二構造改革を進めた小泉元総理の構造改革路線は正しかったのであろうか。
今こそグローバリズムのよい面のみならず影の部分を認識し、改めて真の構造改革を進めなければならない。そこに格差問題解決の鍵があると思うが、紙幅の都合でこの問題は次号に論じようと思う。
註1)国際通貨基金の「World Economic Outlook Oct.2007 」によると最高所得層と最低所得層との比を見ると報告対象国中一番低いのは日本である。アメリカ:
8.63、イギリス:6.67、フランス:4.11、日本:2.28、ロシア:7.65、ブラジル:
23.45、中国:12.2、インド:5.51、又経団連の発表によると2000年の成人一人当
たりの純資産のジニ係数(註2)は日本の場合G7中最も低く0.547で保有資産の
格差が最も少ない国となっている。
註2):ジニ係数(Gini coefficient または Gini's coefficient)とは、主に社会における所得分配の不平等さを測る指標。ローレンツ曲線をもとに、1936年、イタリアの統計学者コッラド・ジニによって考案された。所得分配の不平等さ以外にも富の偏在性やエネルギー消費に
おける不平等さなどに応用される。係数の範囲は0から1で、係数の値が0に近いほど格
差が少ない状態で、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味する。ちなみに、0の
ときには完全な「平等」―つまり皆同じ所得を得ている状態を示す。 文責 大谷
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