平成29年1月14日、首相だった安倍晋三氏はオーストラリアのシドニー湾を見下ろす首相公邸の庭でターンブル首相(当時)と共同記者発表に臨んだ。
直前の会談で「自由で開かれたインド太平洋」の推進などで一致したと述べる安倍氏を見つめるターンブル氏の表情は、同行記者から見ても本当にうれしそうだった。豪政府は中国寄りとの懸念があったが、日米印とクアッドを構成する重要な国となっている。
そのターンブル氏が9月の安倍氏の国葬(国葬儀)に参列した。同国からはアルバニージー首相、ハワード、アボット両元首相も駆け付けた。共産党の志位和夫委員長によれば、安倍政権は「戦後最悪の政権」だという。国葬で弔意を示した218の国・地域・国際機関も「最悪」なのだろうか。
志位氏は国葬反対の理由の一つに「国民多数が反対」を挙げた。5月の憲法記念日にあわせた主要紙の世論調査は全て「憲法改正が必要(賛成)」が「必要ない(反対)」を上回った。それでも共産は改憲に反対する。
国葬に反対した人たちは「法的根拠がない」とも訴えた。明記した法律はないが、国葬を想定した規定はある。根拠が「弱い」ならともかく「ない」は言い過ぎだ。国費投入も国会審議もしかり。反対派は税金を使う「内閣・自民党合同葬」でも反対し、国会審議を経ても反対と訴え続けただろう。
27年成立の安全保障関連法に際し、内閣法制局は従来の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認した。法制局の見解は本来、時代にあわせ変遷しうるものだが、同法の反対派は安倍政権が見解をねじ曲げさせたと訴えた。
その法制局は国葬に「問題なし」とお墨付きを与えた。法制局の見解が大好きであろう国葬反対派から、この点への言及はあまり見られない。