日本維新の会が今国会で改憲論議の「旗振り役」を務めている。憲法改正に慎重な立憲民主党に協力を呼びかける一方、改憲を「党是」と位置付ける自民党には主導権を発揮するべきだと発破をかける。自民と立民がともに党運営で弱みを抱える中、「第三極」の強みをいかし、来春の統一地方選や次期衆院選に向けて存在感を示す狙いもありそうだ。
「緊急事態条項の議論がかなり煮詰まってきている。憲法改正は必ずホットな話題になる」。維新の馬場伸幸代表は17日の衆院憲法審終了後の党会合で、改憲論議の進展に強い意欲を示した。
維新の存在感は先の通常国会に比べて高まっている。立民が憲法審をめぐり本格的な日程闘争を避けている理由の一つに、維新との政策実現を目的とした共闘関係を壊さないための配慮があるのは明らかだ。
一方、維新はそんな野党第一党の足元を見ている。支持層に護憲派も抱える立民は17日の憲法審で、改憲手続きに関する国民投票法改正の議論などを優先すべきだと主張した。維新幹部は「論点を拡散し、改憲テーマを絞り込ませないようにする魂胆が見え見えだ。しかし、改憲勢力のスクラムが崩れることはない。立民が背を向けるなら『さよなら』だ」と牽制(けんせい)する。
憲法審の開催にすら反対する共産党には容赦がない。馬場氏は先月27日の憲法審で、「維新が『憲法9条改憲の突撃隊』となっていることは明らか」とツイッターで発信した共産党の志位和夫委員長に反論。「SNS(交流サイト)といった土俵外でモノ申すのは止め、この場で堂々と意見表明されたらいかがか」と〝宣戦布告〟した。
維新の矛先は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を受け、憲法改正を訴える余裕がなくなったと指摘される自民にも向かう。馬場氏は先月27日の憲法審で、改憲実現への自民の奮起を促す一方、「それでも進まないなら維新が突撃隊となって改憲論議を引っ張っていく覚悟だ」と訴えた。
自民関係者は「うちが『結論を出そう』と呼びかけたら立民は蛸壺に入ってしまう。自民が受け身で対応できるよう、維新にはもっと声を出してほしい」と期待する。(太田泰、内藤慎二)