ウクライナに対する軍事支援の規模では米国が突出している。バイデン米大統領は21日、ウクライナに対する18億5000万ドル(約2440億円)の追加軍事支援を発表し、2月のロシアによるウクライナ侵攻からの軍事支援総額は約213億ドル(約2兆8000億円)となった。戦況に応じた支援を迅速に繰り出すことで、米国は日欧など同盟諸国の取り組みを牽引(けんいん)したい考えだ。
ドイツ民間機関「キール世界経済研究所」がまとめた1月24日から11月20日の軍事支援の状況(誓約額、軍事関連の財政支援を含む)によると、米国の支援規模は2番目の英国の5倍以上となっている。米国の支援なしにウクライナの抗戦は成り立たない。
2~4月の緒戦では、米国の供与した対戦車ミサイル「ジャベリン」や地対空ミサイル「スティンガー」が威力を発揮。夏場以降は東部・南部の戦線に米高機動ロケット砲システム「ハイマース」が投じられ、ウクライナ軍による敵陣攻撃で大きな効果を上げた。
露軍は10月以降、ミサイルなどでウクライナの電力インフラに大規模攻撃を続けており、今回の地対空ミサイルシステム「パトリオット」の供与決定で防空能力の強化を図る。
米野党・共和党にはウクライナ支援に関し「説明責任が伴うようにしたい」と内容の検証を求める慎重な声もある。来年1月からの新議会では共和党が下院の主導権を握るため、バイデン政権は支援計画の修正を求められる可能性もある。(ワシントン 坂本一之)