自民党は9日の衆院憲法審査会で、公明党や日本維新の会、国民民主党などとともに新設の必要性を訴えている「緊急事態条項」を巡る8つの論点を提示した。
通常国会で議論を深化させ、憲法改正案の取りまとめにつなげる狙いがある。一方、立憲民主党は同条項の新設に改めて慎重な構えを示した。
憲法審の冒頭、与党筆頭幹事を務める自民の新藤義孝元総務相が、緊急時の国会議員任期延長期間の上限や緊急政令・緊急財政処分の必要性などの論点を提示した。その上で「各会派との意見交換を行い、より議論を深めていきたい」と述べた。
公明の浜地雅一氏は東日本大震災の発生から11日で12年を迎えることや、最近の新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)などを踏まえ、議員任期延長の議論は待ったなしだと主張。
「『鉄は熱いうちに打て』『喉元過ぎれば熱さを忘れる』ではないが、この時期を逃しては国会機能の維持という、民主主義の根幹に関わる問題に一定の結論が出せないことになることを危惧している」と訴えた。
3月中をめどに共同で同条項に関する見解をまとめる方針で合意した維新と国民民主も与党に同調し、改憲勢力の議論はかみ合った印象を残した。
一方、立民の奥野総一郎氏は同条項について「いろいろな議論が棚上げになっている。拙速に進めることは反対だ」と強調。憲法に規定されている「参院の緊急集会」との兼ね合いから、参院憲法審と合同で議論することを提案した。
また、立民の篠原孝氏は維新と国民民主などの連携について「褒める気にはならない」と不快感をあらわにした。
ただ、立民の振る舞いは他党の共感を得られていない。「護憲派を抱える立民といくら話しても憲法改正は前に進まない。(改憲の是非を問う)国民投票へのカウントダウンが始まった」。維新幹部は野党第一党をこう突き放した。(太田泰、内藤慎二)