【北京=三塚聖平】中国外務省の汪文斌(おうぶんひん)報道官は14日の記者会見で、米英豪3カ国の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の首脳会談で発表したオーストラリアへの原子力潜水艦導入計画に対し、「典型的な冷戦思考で、軍備拡大競争を刺激するだけだ」と批判し、「断固とした反対」を表明した。南シナ海で中国に対する軍事的な圧力が強まるとして、習近平政権はオーストラリアの原潜導入に反発を強めている。
汪氏は「3カ国は自らの地政学上の私益のため、国際社会の懸念を完全に無視している」などと非難の言葉を重ねた。それだけオーストラリアの原潜導入を嫌がっていることが分かる。
原潜配備計画が明らかになって以降、中国側は牽制(けんせい)を強めてきた。中国政府系シンクタンク、中国国際問題研究院の軍備管理・国際安全研究センターの滕建群(とうけんぐん)主任は昨年7月、中国のインターネットメディアで、オーカスについて「必然的に南シナ海の地域の緊張を刺激する」と批判した。
中国は独自の「九段線」を根拠に、南シナ海のほぼ全域で権利を主張。習政権は、南シナ海で人工島を造成して軍事要塞化を進めている。それに対し、米国は南シナ海で「航行の自由」作戦を行うなど、中国に圧力をかけている。
オーストラリアが原潜を導入すれば南シナ海でも長期間の作戦行動が可能になるため、中国に対する軍事的な牽制は増す。南シナ海に限らず、台湾近海や尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺でも豪軍のプレゼンスが高まるため、実現すれば習政権が進める海洋覇権拡大の戦略も見直しが必至となる。