北朝鮮メディアは14日、新型ICBM「火星18」が3段式の推進体で発射され、分離する際に発射角度を変えたと公表した。日本の領域内への落下予測に伴い全国瞬時警報システム(Jアラート)が発出され、その後訂正された問題で、日韓の関係者は探知後の飛行角度変更が影響したとの見方を示した。
朝鮮中央通信は、今回の火星18が「周辺国家の安全を考慮」し、1段目の推進体が通常軌道で発射された後、2、3段目の分離・点火以降はロフテッド軌道と呼ばれる高角度で飛行したと説明。火星18の初の発射実験にあたり、技術上のリスクを低減する狙いから、1段目を通常軌道で発射した可能性がある。
ミサイルが防衛当局のレーダーから「消えた」要因について、韓国国防安保フォーラムの辛宗祐(シン・ジョンウ)事務局長は「探知後に飛行状況が変化したことが影響したのだろう」と指摘。その上で「一秒を争う警報発令の判断としては適切だった」との見解を示した。
防衛省統合幕僚監部の大和太郎総括官も14日、衆院安全保障委員会で「落下を予測したところに来なかった原因は分析中だ」としつつ、「飛翔中に軌道が変わった可能性も含めて検証したい」と述べた。
固体燃料式のICBMは、北朝鮮が2021年に公表した国防力強化の5カ年計画で「5大目標」の一つに設定した「水中および地上固体エンジン」のICBM開発に該当する。北朝鮮メディアは今回、発射台付き車両(TEL)に搭載されたミサイルが屋内に格納されている写真も公表した。燃料を搭載した状態でミサイルを隠し、即時に発射することも可能な固体燃料式のICBMが登場したことで、日米韓の防空システムが突破される事態への懸念は一層強まる。
一方、火星18の実戦配備が完了するまでには一定の時間を要するとみられ、韓国国防省は今回の発射を「中間段階の試験発射」と評価した。韓国・北韓大学院大の金東葉(キム・ドンヨプ)教授は、発射では最高到達高度などが公表されず、試験的なデータ採取にとどまったと指摘。「正常な方式での飛行に向け、今後数回の追加発射があるだろう」との見通しを示した。(ソウル 時吉達也)
米B52が朝鮮半島展開 韓国「北の攻撃容認せず」
【ソウル=時吉達也】北朝鮮メディアは14日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の立ち会いの下、従来の液体燃料式よりも迅速に発射できる固体燃料式の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」の発射実験を13日に初めて行い、成功したと伝えた。
固体燃料式は燃料注入に時間がかかる液体式と異なり、燃料を搭載した状態での管理や移動が可能。朝鮮中央通信は、火星18が北朝鮮の「最も強力な主力手段」の武器になると成果を誇示した。
同通信によると、火星18は3段式で、分離される場面の写真も公開された。最高到達高度や弾頭部分の落下地点には言及しなかった。
李雪主(リ・ソルジュ)夫人や娘とともに現場を訪れた正恩氏は、固体燃料ICBMの登場が「軍事戦略を変革させることになる」と発射実験の意義を強調。「敵を不安と恐怖に陥れ、誤った選択をしたことを後悔させる」と日米韓を牽制(けんせい)した。
韓国国防省は14日、米軍のB52H戦略爆撃機が朝鮮半島に展開し、韓国空軍と合同訓練を実施したと発表。「北朝鮮のいかなる核攻撃も容認しないという同盟の意志を行動で示す」と強調した。
北朝鮮は最大の祝日とされる正恩氏の祖父、故金日成(キム・イルソン)主席の生誕記念日「太陽節」を15日に控えており、国威発揚を促す狙いもうかがわれる。昨年12月には、「軍事偵察衛星1号機」の準備を今月までに完了すると予告しており、太陽節の前後に追加の軍事的措置をとる可能性もある。
ミサイル対応で連日訓練 空自、米爆撃機が参加
防衛省統合幕僚監部は14日、米軍のB52戦略爆撃機と航空自衛隊の共同訓練を日本海で実施したと発表した。北朝鮮が13日に弾道ミサイルを発射したことを踏まえた2日連続の日米訓練となった。13日は戦闘機同士の共同訓練をしていた。
防衛省によると、14日の訓練には石川県・小松基地の第6航空団からF15戦闘機が4機参加した。米軍からは爆撃機2機とF35戦闘機4機、KC135空中給油機2機が入った。