インド太平洋経済枠組み(IPEF)が、昨年5月の発足から1年で大きく前進した。米デトロイトで27日に開いた閣僚会合で、サプライチェーン(供給網)の強化を図る協定について合意。
主要製造業の拠点が集積するタイなどアジア諸国と関係が深い日本には、米国とそれらの国の橋渡しをして、IPEFの結束を強める役割が期待されている。
協定は、重要鉱物など中国への依存度が高い物資を有志国の間で融通できる仕組みを構築することで、中国の経済的威圧に対抗する狙いがある。例えば重要鉱物の輸入が突然遮断され供給不足に陥ったある国が、IPEFが新たに立ち上げるネットワークを通じて支援を要請。
それに対し、他の参加国が具体的な協力を検討するといった流れを想定している。
日本貿易振興機構(ジェトロ)米州課の赤平大寿課長代理は「ワシントンでは現在、通商政策で一番信頼されているのは日本だといわれている」と語る。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、地域的な包括的経済連携(RCEP)と、次々に巨大な自由貿易圏をまとめ上げた実績が買われているという。
供給網強化には、タイなどの東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国を巻き込むことが重要。赤平氏は「米国は伝統的にこれらの地域と関わりの深い日本に仲介役を期待している。今後は新興国側にとってのビジネス上の実利を出していけるかがポイントだ」と指摘している。(米沢文)