理事長 黒岩 徹
三月七日産経新聞、石原慎太郎東京都知事の月一連載「日本よ」で、石原都知事(以下氏と略称する)は外国人の移民を積極的に受け入れるべきとして、要約すれば次のように述べておられた。
一、私は議員時代から大幅に移民を迎え入れる体制を法律的に整備すべきだといってきたが、仲間内の反対が多く顰蹙さえ買った。
二、反対論の根拠は、日本は日本という単一民族で形成されている国家であって、そこへ多くの異民族を迎えいれると国家社会のアイデンティティを損なうことになると。
三、しかし日本の国民が単一民族からなっているなどというのは基本的に間違った歴史認識で、我々の民族的ルーツは東西南北あちこちにある。
四、特に徳川時代は鎖国により限られた国民の間で混血が行われ、大脳生理としての酵素の活発な働きにより優秀な人材を輩出した。
五、人口減少による国運の衰微が予感される今、労働力の確保や福祉のための要員の欠如の補填のためだけではなしに、狭小となった現代の世界の中で我々の繁栄のために、周辺諸国の国々から大幅な新しい日本人要員を迎えるべきである。
まず一と二は氏の事実関係なのでひとまず置くが、三は説明を要する。
氏は「日本の国民が単一民族からなっているなどというのは基本的に間違った歴史認識」といわれるが、これは「単一民族」という言葉の解釈により議論を要する。多分氏は「単一民族」とはアイヌとか、アメリカインディアン等のイメージを持たれておられるのでないかと推測される。
したがって氏の反対者が「単一民族」と言ったことを、氏は日本列島には元来から「日本人」という単一民族が居たというニュアンスで受け取ったのであれば、氏が「間違った歴史認識」と批判されることも解る。
しかし反対者はそうではないと私は思う。何故ならば、氏が幼少教育を受けた戦前はいざ知らず、筆者のような戦後世代は昔から教科書で、日本人は方々から渡来した人達の混血であると習っている。
従って氏のいう「我々の民俗的ルーツは東西南北あちこちにある。」というのは全くその通りであり、現在では殆どの日本人もそう思っている筈である。
一方で現在の我々は、方々から渡来した諸民族の長い混血の末に完成した日本人であり、既に他国とは違うDNAを持った民族であることも自覚しているのではないだろうか。特に地上で国境を接し互いに頻繁に攻防を繰り返して来た世界の殆どの国と違い、日本は海という天然の堀のお陰で多年に亘り侵略されたこともない。
海外からの渡来も歴史上一般には散発的であり、短期間に日本に同化してしまい、日本の文化が根本的に変わってしまうことはなかったといってよい。これを見ればこの日本列島の中で、ハンチントンも言う日本独自の文化が進化し築き上げられて現在の「日本民族」が出来上がったことは疑いなく、これをもって現時点において「(進化した)単一民族」と捉えることは決して間違いではないと思う。
よって若し筆者が以上の論議を抜きにして一のようなことを言われたら、やはり氏の反対者と同じような反対論を唱える。
そして一方で若し氏が言われるように移民の制限を緩め、長期継続的に大量の異民族が入って来ることを認めるとしたらどうなるか、多分我が国が嘗て一度も経験したことがない事態になることは必至であろう。そして現在、氏が正に指摘している通り、不法入国や入国管理の杜撰さは新しい社会混乱を育みつつある。
冒頭の反対者が言うような日本のアイデンティティの喪失が進行しつつあるのである。
氏は新しい移民法を作って、その施行には厳密な審査を行うのが良いという。これは一理も二理もあることであり、筆者は早急にそうすべきであると考える。筆者が氏と異なる点は、氏がこの移民法の厳格化を採用すると同時に大幅な門戸開放をうたっていることにある。
現実の混乱をこれ以上避け、回復に向かわせるためには、まずは制度の厳格化が先であり、門戸開放を同時に進める特別な必要性はなく、有害とさえ考える。
氏は門戸開放がアジアの近隣諸国の発展成熟に拍車を掻けるとか、嘗ての民族的ルーツであった国々(中国や韓国も含む=筆者注)から、新たな同胞を迎え入れることで我々が失うものはありはしまい、と根拠も示さず手放しで論じておられることは実に奇妙である。
氏は労働力の確保や福祉のための要員の欠如の補填のためという。しかし近隣諸国の低賃金労働者は確実に日本人の職場を奪っており、また日本人労働者の低賃金化を促進する要因となっているのである。
福祉のための要員が必要というなら、まずは低賃金日本人労働者への福祉を考えることが先決であり、日本人労働者を高賃金で福祉要員に採用すれば済むことであろう。我々日本人は既に多くの実害を蒙っており、多くを失っているのである。 以上
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