高市早苗経済安全保障担当相は21日、奈良市内に建立された安倍晋三元首相の慰霊碑「留魂碑」を訪れ、安倍氏の遺志を引き継ぐ思いを新たにした。
高市氏は令和3年の自民党総裁選で岸田文雄首相(総裁)に敗れたものの、保守層を中心に根強い人気がある。
今回の内閣改造前には肝いりの経済安保政策に道筋をつけたとして、党務への復帰も視野に入れていた。留任が決まったことで、「ポスト岸田」を狙うには政権を支えつつ党内の支持固めなどを行うことが必要になる。
「おととしの誕生日に『おめでとう』と言ったのが最後になったのはつらいことだが、安倍氏がやり残したことを含め、みんなで頑張ってやっていきたい」
高市氏は21日、安倍氏の留魂碑を前に、自身が顧問を務める党有志のグループ「保守団結の会」のメンバーらに語った。この日は昨年7月に死去した安倍氏の69回目の誕生日だった。
次期総裁にふさわしい人を尋ねる報道各社の世論調査で、高市氏は岸田首相より上位に入るケースもある。同グループのメンバーをはじめ、党内に高市氏と政治信条が近い議員は多く、高市氏自身、総裁選の出馬に必要な20人の推薦人確保に自信を見せる。
一方で、前回総裁選で高市氏が国会議員票で2位と健闘した背景には、後見人として保守系議員らを糾合した安倍氏の存在があった。安倍氏亡き今、総裁選を勝ち抜く戦略を描くのは容易ではない。
高市氏にも党務に戻り、仲間づくりに取り組みたい思惑もみえる。内閣改造前の今月5日、産経新聞の取材に応じ、「党に戻ったとして」と前置きした上で、「税率を上げず、税収が増える政策を仲間と発信したい」「躍動感ある経済で全世代の安心感を確保する」などと今後の構想を披露していた。19日には(旧ツイッター)に経済安保相留任について「戸惑った」と投稿した。
今回の人事で首相が高市氏を政権内に取り込んだのは「次期総裁選に向けて、対立する要素を作らないため」(党幹部)との見方は根強い。もちろん高市氏も今は公務に専念する構えを見せる。
高市氏に近い閣僚経験者は「とことん岸田政権を支えることだ。それができて次がある」と助言する。
まずは、高市氏が意欲を見せてきた機密情報の取り扱いを官民の有資格者に限るセキュリティー・クリアランス(SC、適格性評価)の法制化を来年の通常国会で実現できるかが、飛躍への試金石となりそうだ。(奥原慎平)