秋田県の学力調査について

まず、県内で学力テストでよい成績を上げようというような特別なことは全く意識していない。

　少人数学級であることは確かであるが、少人数ならどこも成績が良いのかといえば必ずしもそうではない。

　やっていることは一つのクラスの中で、自分たちで解決できそうなグループと、教師の支援が必要なグループに分けて同じ例題を解かせる。

　生徒同士で議論し合ううちに、自分と他人の学力差がフルに曝け出される。一歩遅れていることを自覚すれば『恥ずかしい』という横並び意識の強い地域性で追いつこうとする。

　偏差の統計が一部だが新聞でヒストグラムを使って公表された。秋田では飛びぬけて好成績の生徒もいないし、遅れている生徒も少ない。平均して高いのである。

　都市部がほとんどない地域であり、学習塾へ移動する時間はないから好成績はいないのだ。

　学校へ通う通学距離は平均して遠い。山道を５?自転車で通学は当たり前の地方であって、自然に体力も精神力も養われる。

　全国からなぜ学力が高いのか調査団が来る。学校当局は「特別なことはしていないし、なぜ成績が良いのか解らない」と答える。

　しかし、筆者にはわかる。教師は「県」という高い壁に囲まれ、他県との交流はほとんどない。ちなみに１９年、２０年の小学校順位は秋田県は双方１位、宮城県はそれぞれ３６位、３４位だった。

　両県とも教師は普通のことをしているだけだと思っている。実はその「普通のこと」が大違いなのであり、当事者のは全くその自覚がない。

　考えるに、都市部は教育の劣化が進んでいる。そればかりではない、人間力の劣化である。文明が進めば、学問や技術は積み上げられ、受け継がれ、磨きをかけられて進歩する。

ところが人間の脳は生まれた時点では誰もがゼロからスタートする。千年前に生まれた赤ちゃんと、今年生まれた赤ちゃんとは知能が同じである。

　そうであれば、与えられる知識が格段に多い今年生まれた赤ちゃんのほうが知識で勝つのは当然としても、気力や体力ではむしろ退化しているのだろう。

　テレビ・携帯電話・コンピューターゲームでは楽しいし便利かもしれないが、生きるための活力・発達力は確実に退化していると思う。

　ちなみに、少し学力テストの結果を分析した相関関数を示したい。資料が少ないので、体力テストと都道府県対抗駅伝の関係である。

（二つの母集団が完全に一致する場合は１、相反する場合はー１に近くなる、０は相関関係がない）

　最も相関が強いのは、

◆中学の学力、ならびに小学と中学の体力について調べた結果は、地域ごとのランキングが男女との非常に近いことがわかった。

　数学ができる地域は国語もできる。（いずれも0.9台）すなわち科目の問題ではなく、教育環境の問題が主因。

◆小学、中学とも、男子の体力と女子の体力それぞれの順位も、相関が強い。（0.8弱）
　換言すれば、学力の高い県は体力も高い。男子の体力が優れている県は、女子も優れている。当然低位についても同様である。

◆都道府県駅伝は地域ごとのゴールイン順位で表わされ、かつ、実業団・大学、高校、中学がそれぞれ走る区間が定められていて、男子と女子の大会があるので比較ができる。

　その相関は、男子の体力順位と駅伝の順位は無関係。女子の駅伝順位と学力順位は無関係。（0.1近辺）

◆それでも、男子駅伝と女子駅伝ならば、ある程度似た順位であった。（0.5）

　学テと同時に朝食の摂取など生活習慣も調べているのだが、更なるデータの開示を強く求めたい。(針ヶ谷)