もアメリカ発の金融恐慌で経済的には厳しい状況が続いています。勿論、経済も回復させなけれ
ばなりません。しかし日本が直面している本当の問題は経済なのでしょうか。
本当の問題は現在の日本人から、かって日本人が持っていた理念・矜持・志・潔さそして他人を
敬うといった「日本精神」とでもいうべきものが、失われていることではないかと思います。春は必ずや
って来ます。ただ漫然としていては来るべきものもやってきません。
日本の現状を見ると小手先の対策ではどうにもならないところまで来ているような気がします。20〜30年かかるかもしれませんが、次の世代を担う子供たちが健全に育てば、日本は間違いなくよくなります。
そのためにはまず親が変わらねばなりません。今、埼玉、沖縄、大阪など各地方自治体が積極的に親学を取り上げ、親の意識改革を図ろうと動き始めたようです。今回は親学を取り上げてみました。ご高覧下さい。
「親学」が日本を救う
親学との出会い
何時ごろからであったか、日本の子供が元気を失い目から輝きが失われていることに気づくようになった。以前、仕事の関係で海外へ行く機会が多かったが、発展途上で物質的に貧しい国の子供たちの目が生き生きとしているのと比べ日本の子供たちが対照的に見えたのである。
始めは子供の方に問題があると思っていたが、そうではないことに気がつくようになった。子供たちは昔のままだが変わったのは親ではないかという疑問であった。そんな時に親学に出会ったのである。
平成13年初頭、オックスフォード大学のJ・トーマス学長が世界五大学学長会議で「学校でも大学でも教えていないのは、親になる方法だ。・・・親としての教育にもっと関心を向け、向上させることは大きなメリットがあるのではないか」と発言された。
この発言に触発され、わが国でも同年3月に「親学会」が発足した。さらに「PHP教育政策研究会」が親学に関する重要な提言をし、平成17年に「PHP親学研究会」、平成18年に「親学推進協会」が結成され、親学普及のため具体的な活動が始まっていることを知った。
日頃、疑問に思っていたことが明快に説明されており、我々が直面している諸問題の真の原因が何であるのか、迂遠なようだが健全な子供たちを育てることが問題解決への道だという確信を持つにいたった。
親学とは何か
親学の理念は「人間の本性に基づいて、親が子を導き育て、子は親を見て成長するといった親子の絆の根底に立ち、親としての責任を果たし、人間としての人格の完成を目指す」ことにあると述べている。そしてその一番大切なものは「親子の愛の絆」であるといっている。
この理念に基づき親学の基本的な考え方を次の三点に纏めている。
1)教育の原点は家庭にあり、親は人生の教師として教育の第一義的責任を負うことを深く自覚する。
2)胎児期・乳児期・幼児期・児童期・思春期という子供の発達段階に応じ、家庭教育で配慮すべき重点は異なっている。
3)父性と母性の役割を明確にする。昨今、父性・母性という言葉に抵抗感を持つ勢力が力を増しているようである。「母性という表現は、性による固定的な役割分担を強制するもの」という批判があるが、本質を踏み外した意見である。
気をつけるべきは、父性=父親・男性、母性=母親・女性ではない点である。子供に対し男性である父親が母性的にかかわる場面や必要性もあり、同様に女性である母親が子供に父性を持ってかかわる場合もあるということである。大事なことは男女の特性を、お互いに認め協力し、健全な子供が育つような家庭環境を整えることである。要は夫婦間の理解と協力が子供の成長に欠かせないということである。
親学から見た日本の家庭の現状
教育の原点が家庭にあり、親が第一義的に責任を負っていることを自覚している親は少数派のようである。特に若い親ほど教育は学校や社会に責任があると考えているのではないか。
また親学の基本的考え方の第二点、子供の成長は一様でなく発達段階により必要なことが異なっており、さらに臨界期があることを、どれだけ理解しているか。現状では理解している親は少ないようである。
さらに第三点にいたっては、男女平等の家事・子育てが理想的だとされているのが現状のようである。子育ても夫々二分の一というのは男性・女性が持つ夫々の優位性を否定することになり、子供にとってはあまり望ましくなく、むしろ親の勝手で迷惑だということになる。
以前話題になった次のような話しがある。ある中学校で「親に言いたい言葉」を募集したところ多数の応募があった。その中で最優秀作品は「父よ、何か言ってくれ。母よ、何も言わないでいてくれ」だったそうである。
この作品を通してこの中学生の家庭の状況が目にみえるようによく分かるではないか。母親は細かいことまで子供にがみがみと小言を言い、その傍で父親は何も言わず子供に甘く優しく対応し、子供のよい友達であろうとしている姿である。
この家庭では子供にとって本来必要な母性(子供を無条件で受け入れ、愛情を持って包み込む)はきわめて希薄で、不十分ながら父親が母性で子供に接しているが、一方子供にとって必要な父性(子供の壁になり、子供に権威とか秩序感覚を教える)は全く欠如している状況が見えてくる。この子供はこのままでまともな成人になれるのか非常に不安を感じる。
子供が成長し社会人になる時、必要なものに人間力があるといわれている。人間力には二つの要素がある。一つは対人関係能力、もう一つは自己抑制能力である。対人関係能力で必要なことは共感する力で、母性により育つといわれている。
子供が100%母親に依存する時期、信頼とか共感する能力が子どもの身につくのである。自己抑制能力は他者と共存する場合、自我を抑え他者と協力することが出来る能力で、主として父性により鍛えられ育つとされている。
子供にとってはこの両方の能力が必要であるが、それを獲得するには最適な時期があり、その時期に応じて親は母性や父性を持って子供にかかわっていかないと、これら能力は健全に育っていかない。
人間は長い進化の過程で男は男らしく、女は女らしく異なる方向へ進化してきたのである。勿論例外はあるが、父性は男らしさの中に、母性は女らしさの中に見られる特性である。イデオロギーに毒されず、自然の摂理から親のあり方を考えるのも親学の良さといえよう。
親学の普及が日本再生の鍵
親学の一端しか紹介できなかったが、次の世代を担う子供たちが健全に育てば日本の未来は明るい。そのためにはまず親が親学を学び、よき親にならねばならない。健全な子供が育つよう家庭の環境を整え、より良い環境の中で、昔から伝わる世界に誇るべき日本の伝統を子供たちに伝えるのは親の責任である。
親たちのたゆまぬ努力により立派な人間が社会に送り出されれば、日本は自然と良くなるのである。筆者も残りの人生は限られているが、親学を普及させ日本の社会を健全なものにすることに微力を尽くしたいと願っている。 (文責:大谷)
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