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自衛権を認めた不戦条約

今日は何の日 1928年 - 不戦条約(ケロッグ・ブリアン協定)が結ばれる。

不戦条約と自衛権

『大東亜戦争への道』 中村粲(あきら)著 1990.12.8 (展転社) P285~289 より

◆自衛戦争を認めた不戦条約

昭和3年(1928年)は、田中内閣が「不戦条約」という国際条約を締結して、列国と共に戦争放棄の意思を世界に公的に表明した年でもある。

不戦条約は戦後の東京裁判においても、満洲事変以来、日本が侵犯を重ねた国際条約の一つとして、日本断罪のために大いに利用された条約である。

1928年8月27日、ケロッグ米国務長官とブリアン仏外相の提唱でパリにおいて締結された「戦争放棄に関する条約」で、ケロッグ条約、パリ条約などとも呼ばれる。

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原調印国は日英米仏伊独等であったが、やがて多数の諸国が加わり、当時、国際連盟に未加入であったソ連さえ加盟した。

条文は次の三条から成り、国際紛争解決の手段としての戦争を非とし、その放棄を宣言したものである。

第一条

締約国は国際紛争解決のため戦争に訴ふることを非とし、且つその相互関係に於て国家の政策の手段としての戦争を放棄することをその各自の人民の名に於て厳粛に宣言す。

第二条

締約国は相互間に起ることあるべき一切の紛争又は紛議は、その性質又は起因の如何を問はず平和的手段によるの外これが処理又は解決を求めざることを約す。

第三条(批准と加盟手続規定)

しかしこの理想主義的な条約には重大な欠陥があった。英米仏など列強の主張によって、自衛戦争を除外したことだ。

しかも米国の如き、自衛権発動の場合、それが正当であるか否かの裁定権は当事国にある、と主張したのである。

何が自衛戦争であるかについて当事国の自己解釈権を認めるのでは、
戦争放棄条約は法として全く無効である。なぜなら全ての戦争は自衛の名で行われるからである。

◆自衛権の留保

戦後の東京裁判に於けるパール判決書によれば、自衛の問題に関してケロッグ米国務次官は次のように言明した。

「自衛権は、関係国の主権の下にある領土の防衛だけに限られてはいない。そして本条約の下に於ては、自衛権がどんな行為を含むか又いつ自衛権を発動するかについて各国みづから判断する特権を有する。

その場合、自国の判断が世界の他の国々によって是認されないかもしれないという危険はあるのだが。合衆国は自ら判断しなければならない。

・・・そしてそれが正当なる防衛でない場合は、米国は世界の世論に対して責任を負うのである。単にそれだけのことである」

と。すなわち自衛権の及ぶ範囲は自国領土に限られないと米国は主張したのであった。

ちなみに我が国の態度はどうかと云へば、田中外相は米国提案に同感の意を表する回答文を手交する際、自衛権に関し、

「手近かの問題として内乱闘争の絶えざる支那の如き隣国を持つ日本としては、もとより戦争はその欲する所にあらざるも自衛の必要上、適当の手段を取るべきことは常に予見し置かざるべからざる所」

としてマクヴェー駐日米国大使の了解を求め、更に支那に対する日本の立場につき説明した。その際、既得権益や居留民保護のみならず、満洲をロシアとの間の安全地帯とするために、その秩序保持の要があることを指摘したのであった。
(大畑篤四郎論文「不戦条約と日本」、『国際政治28』所収)。

以上が、不戦条約を調印するに当たって、列国が保持した態度であった。すなわち、国策遂行の手段としての戦争は否認するが自衛権は留保する、そして自衛権の行使に関する決定と裁定は各当事国の権利に属するというのである。

一体、「自衛」の名目によらずして戦争を行う国が、かつてあっただろうか。あらゆる戦争当事国は、明白な侵略国家でさえ、己れの戦いを「自衛戦争」であると主張して正当化しようとするものなのである。

自衛権を認め合い、しかも自衛権の発動が正当なるか否かの判断が当事国に委ねられている場合、「戦争放棄」の宣言や条約がいかに空虚なものになり終わるか、多言を要すまい。

米国人の中には

「不戦条約は世界世論という弱々しき圧力を除いては、一本の歯も持っていない。それは“新年の決意”あるいは“サンタクロースヘの手紙”のようなものである」

と嘲笑する者も居たのである(T.A.Bailey 前掲書)。

あるいは又、石井菊次郎が『外交余録』で述懐するように、理想に走り過ぎた条約は「いつの間にか宗教に堕するを逸れない」のである。

後年、満洲事変が国際連盟に提訴された時、そこでは不戦条約違反が一つの論点とされたが、この連盟に於ける満洲事変審議に当たり、日本側は、まさに上述の自衛権をもって抗弁したのであった。

不戦条約が自衛権の留保を認めたことは、重大なる影響を後世に残したものと言えよう。

◆ソ連が最初の侵犯国

不戦条約はその辞句に表れたる崇高な理想主義の割には、締約国の信頼と尊敬を受けることが少なかったのは皮肉なことであった。

米国の外交史家Thomas A.Bailey は、不戦条約調印に対する米国内の反応を次の如く描写している。

「上院は戦争放棄の協定について殆ど幻想を抱いていなかった。ミズーリ州選出の上院議員リードは不戦条約を『国際的接吻』(an international kiss)と決めつけ、またヴァージニア州出身の上院議員グラスは、

自分を『不戦条約には郵便切手一枚ほどの価値はあると想像するほど単純な』人間と考えてほしくない、と言ったものである。

公式的な留保が条約に加えられることはなかったが、上院外交委員会は、自衛権とモンロー主義のために戦う権利及び違反国に対して条約を強制しない権利を留保する『解釈』を提出した。

世論の大波というものがあったので、上院は1929年1月、85対1の票でケロッグ=ブリアン条約を承認した。

次の仕事は新しく15隻の巡洋艦を建造する法案であったが、それも、その後間もなく承認された。

それについてニューヨーク・イヴニング・ポスト紙は嗤ってこう書いたのである。

『もし26ヵ国と平和条約を結んだ直後に15隻の巡洋艦を新たに必要とするのであれば、
仮に26ヵ国と平和条約を結ぶことがなかったとしたら、一体、何隻の巡洋艦を我々は必要としたのであろうか』と。

この空しい不戦の誓約は、早くも翌年、破られた。

不戦条約侵犯第1号はソ連だった。これは大書して歴史に留めるべきだ。

すなわち1929年、満洲の張学良政権はハルピンのソ連領事館捜索で共産革命計画の証拠を押収したのを機会に、東支鉄道の実力回収に踏み切ったのに対し、ソ連は空陸両軍をもってソ満国境を越え、満洲に侵入した(11月)。

学良の東北軍は撃退され、ソ連は帝政ロシア以来の特権である東支鉄道を再び奪還することに成功したのであった。

このソ支紛争の折、米英仏伊の諸国は不戦条約の義務につきソ連の注意を喚起したのであるが、ソ連は満洲侵攻は「自衛行動」であると反論し、第三国の干渉を拒絶したのである。

満洲事変において日本は、関東軍の行動は自衛のためであると抗弁し、日華直接交渉を主張したが、米国は日本の「不戦条約違反」を非難し、リットン報告書も、我が国の自衛の主張を否認した。

だが満洲事変の2年も前に、ソ連が不戦条約を破って自衛の名の下に満洲に侵攻した事実を想起する時、満洲事変を日本の侵略とする説は完全に説得力を失う他なく、あまつさえ、そのソ連が東京裁判で、満洲事変以降の日本の政策を侵略と断罪したことを考えると、何ともやり切れない思いに駆られる。

ともかく、不戦条約とはこの程度のものでしかなかった。グリスウォルドが、いみじくも評したように、ソ支紛争が発生してみると、

「不戦条約は、雨の日以外は雨傘をさすべからずと言う協定と同じく、本質的に無意味なものだった」のである。
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一、議会否定につながる自治基本条例を阻止し、議会活動を活性化する

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一、研修会、講演会を開催し、会員相互の見識と親睦を深める

一、全国に3千名の地方議員ネットワークを形成する

…………………………………………………………………………

■【人権救済法案問題】
●人権侵害救済法案に反対する意見書案

※人権侵害救済法案の問題点について

…………………………………………………………………………

■【自治基本条例問題】   
議会否定につながる自治基本条例の阻止を

①自治基本条例の問題点について

②外国人に対する住民投票権の付与について

……………………………………………………………………………

■【議場の国旗掲揚推進】
地方議会議場での国旗掲揚について

……………………………………………………………………………

■【外国人参政権問題】
●外国人参政権に反対する意見書採択について

反対決議は362市町村議会(H22年9月1日現在)

慎重議員署名4071名・535議会(同年9月1日現在)

慎重首長署名568自治体(7県知事221市区340町村長・同年9月1日現在)

………………………………………………………………………………

 

尖閣諸島上陸許可要望議員署名


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