衛星写真から消える「北朝鮮」…電力事情深刻、夜は宇宙からも全く見えない“暗黒国家”そのものに

存在しない「北朝鮮」

ＮＡＳＡが公開したのは国際宇宙ステーション（ＩＳＳ）のクルーが、東アジア上空から撮影した夜の画像ものだ。中国や韓国は光の塊となっている都市部とそれをつなぐ道路の明かりまで見えているのに対し、北朝鮮はそこに存在しないかのように見える。日本海や黄海との区別がつかないほど暗く、韓国が大きな島かと見間違えるほどだ。

その暗闇の中に平壌の明かりが小さな島のように見え、それも韓国の地方都市ほどの明るさしかない。

ＮＡＳＡは、夜の都市の明るさはその都市の裕福さを示す指標になると指摘している。

国連開発計画（ＵＮＤＰ）のアジア太平洋地域人間開発報告書によると、北朝鮮の電力事情は、２００９年時点で全人口の２６％の家庭でしか電気を使っていないといい、ミャンマー（１３％）、アフガニスタン（１６％）、東ティモール（２２％）、カンボジア（２４％）に次いで、アジア２０カ国のうち５番目に悪いという。

北朝鮮の人口の一人あたりの電力使用量は、１９９０年に１２４６キロワット時（ｋＷｈ）。２０００年に７１３ｋＷｈに減り、０８年も８０９ｋＷｈだった。韓国が１万キロワット時を超えるから、いかに少ないかわかる。また、０９年の北朝鮮のエネルギー生産量は石油換算で２０３０万トンといい、アジアの開発途上国１６カ国では５番目に小さい。

北朝鮮の電力事情の悪さは地方の農村部ではなおさらだ。

平壌中心部でさえ薄暗い

金第１書記が就任した当時、電気の供給が受けられない劣悪な状況の農村部では、テレビが映らないのはもちろん、列車の運行さえ途切れがちだったため、労働新聞の配達が滞り、新たに就任した最高指導者の顔も知らない住民が少なくなかったという。

このため、電気が届かない協同農場では、ガソリンを配って移動式の発電機で金第１書記関連のドキュメンタリー映画などを放映していたとされる。

実は、北朝鮮の電力事情の悪さは平成７年に訪朝した際に実感した。

外国人が滞在する平壌の周辺はネオンサインもあり明るく、宿泊した高麗ホテルの電気は日本と変わらないほど明るかった。しかし、ネオンも一晩中輝いているというのではなく、深夜までには消え、中心部でさえ暗くなる。また、平壌郊外の団地がホテルの窓から見えたが、どれも薄暗く、ぼんやり光っている程度だった。

当時は、金日成主席が死亡し、金正日総書記が最高指導者に就任して１年ほどだったが、あれから２０年近く経過しても電力事情は改善されないままのようだ。