【世界を驚かせた日本人】岡潔氏 三大問題を解決し世界を驚愕させた大数学者

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【世界を驚かせた日本人】岡潔氏 三大問題を解決し世界を驚愕させた大数学者2014.06.19
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岡潔氏

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広中平祐氏

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望月新一氏

岡潔(おか・きよし、1901~78年)は、多変数解析関数の分野で世界的業績をあげた大数学者である。この分野における三大問題を全て独力で解決し、世界の数学者を驚嘆させた。

36年以来、フランス語で論文を発表していったが、ヨーロッパの数学者たちはその独創性に驚き、「オカ・キヨシ」を日本の若い数学者の集団ではないかと疑ったほどだった。

岡は60年に文化勲章を受章し、63年にはエッセー集『春宵十話』を出版、現代日本の心の荒廃を鋭く批判する警世家として注目を集めるようになる。

明治維新以来の唯物論的近代合理主義を批判すると同時に、特に敗戦後のエゴイズム肯定と物質主義的繁栄を、仏教でいう「餓鬼道・畜生道に陥ったもの」として否定し、日本人の古来の純粋な心のありようを取り戻すべきだと訴えた。

 近代産業の基礎をなすのは物理学などの自然科学だが、この自然科学の基礎をなすのが数学である。日本は、欧米以外で唯一、独創的数学者を多数輩出してきた国である。アジア出身の数学者がいないわけではないが、彼らは皆、先進国の大学に所属している。

 日本には和算という独自の数学が存在した。その最高峰といわれる関孝和(せき・たかかず、1640~1708年)は江戸中期に方程式・行列式の理論を構築したうえ、ニュートンやライプニッツと同時期に微積分学の基礎を打ち立てた。日本人のDNAには確かに数学の才能が存在する。

 数学界にはフィールズ賞という4年に1度、40歳以下の優れた数学者に与えられる賞がある。ノーベル賞を上回るとも言われる最高の栄誉を受賞した日本人数学者は、小平邦彦(こだいら・くにひこ、1915~97年)、広中平祐(ひろなか・へいすけ、31年~)、森重文(もり・しげふみ、51年~)と3人いる。

 小平は、岡の業績をいち早く取り入れ、広中も岡から貴重なアドバイスを得て、これがフィールズ賞受賞の業績となった。

 また、第1回ガウス賞(2006年)受賞の名誉に輝いたのが伊藤清(いとう・きよし、1915~2008年)である。伊藤の確率解析の業績は、20世紀における主要な数学的革新の1つであり、物理学・工学はもとより、生物学・経済学から金融工学にも応用されている。ガウス賞は、数学的業績が数学以外の広汎な分野に多大の影響を与えた数学者を顕彰するためのもので、受賞は4年に1度である。

 フェルマーの最終定理やポアンカレ予想は証明されたが、現代の数学に未解明のまま残された問題のうち、最重要といわれているのが整数の理論「ABC予想」である。

 京大教授の望月新一(もちづき・しんいち、1969年~)は2012年9月、「ABC予想」を証明する論文をインターネット上で公開し、世界を驚かせた。今、世界中の専門家がこの証明の正しさを判定する査読を行っている。

 数学は最新の科学技術の進歩を促す原動力である。まして、ITは数学の直接の応用分野である。工業国・日本を根底で支える日本の数学者たちの挑戦は続く。 (敬称略)


■藤井厳喜(ふじい・げんき) 国際政治学者。1952年、東京都生まれ。早大政経学部卒業後、米ハーバード大学大学院で政治学博士課程を修了。ハーバード大学国際問題研究所・日米関係プログラム研究員などを経て帰国。メディアで活躍する一方、銀行や証券会社の顧問、明治大学などで教鞭をとる。現在、拓殖大学客員教授。近著に「米中新冷戦、どうする日本」(PHP研究所)、「アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門」(幻冬舎新書)
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