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リットン報告書概要

リットン報告書概要

ロシアの満州における野望とその侵略事実についての記述


1.ロシアは清国の犠牲において、まず条約上の特別な権利を獲得した。

2.1894~1895年の日清戦争は、その後の事件が立証したように、ロシア自身の利益のために、干渉する機会を与えた。

3.清国は1895年、下関条約によって南満州の遼東半島を日本に割譲した。しかるに日本は、ロシア、ドイツ、フランス3国の外交上の圧迫によって、やむを得ずこの半島を清国に還付するにいたった。

ロシアは1898年、日本が放棄を余儀なくされたこの半島に25カ年の租借権を獲得した。

4.ロシアは1896年、鉄道敷設ならびにこれの経営権を獲得した。

5.ロシアは1900年、義和団事件がロシア国民を危険に陥れたという理由で、満州を占領した。

6.他の列強はこれに反対して、ロシア軍隊の撤退を要求した。しかるにロシアはこれを遷延した。

7.ロシアは1901年、露清秘密条約を締結しようと努力していた。

その条項によれば、満州、蒙古、新疆内の鉱山またはその他の利権を他国またはその国民に譲渡せず、かつ特別守備隊の維持を含む特別な権限をロシアに与えることになっていた。

このロシアの態度に対して、日本はどのように対処したか


1.日本はロシアの上記のような策動を特に注意した。

2.日本は1902年、日英同盟を締結した。

3.日本は支那の門戸開放政策の維持ならびに領土の保全を主張してロシアと交渉を開始した。

4.日本はその交渉においてなんら成功しなかったので、1904年2月戦争に訴えた。支那は中立を守った。

5.ロシアは敗北した。1905年9月ポーツマス条約が締結され、それによってロシアは日本のために南満州における特殊権益を放棄した。

6.1905年の北京条約によって、清国は関東州租借地ならびにロシア管理の東支鉄道南部線中、長春以南の鉄道を日本に譲渡することに対して承認を与えた。

7.1906年、日本によって南満州鉄道会社が設立された。

8.日本は前述のようにして獲得した特権を、南満州の経済開発に利用した。



日露戦争後の日本とロシアの清国の関係について

1.日露戦争終了の直後、両国間に密接なる協調政策がとられた。
2.ロシアおよび日本は、それぞれ北満州及び南満州にその勢力圏を限定した。
3.1917年のロシア革命は、満州における日露両国間の理解および協調の基礎を粉砕した。
4.ロシア革命は北満州における支那の主権を主張する好機を与えた。支那は満州の政治および開発に関して、従来より以上の実際的参加をするようになった。
5.1919年と20年に行ったソ連政府の宣言は、北満州におけるソ連の特権の完全なる放棄を暗示した。
6.その結果として、1924年ソ連・支那間の協定が成立した。
7.支那は満州にあるソ連の勢力をことごとく清算しようとする最後の努力をした。
8.この結果、ソ連軍隊は、満州国境を越えて、しばしば襲撃を行いつつ、ついに1929年11月、武力侵入にまで発展した。



このような満州をめぐる日本とロシアとの歴史的関係の中に、孫文の革命が成功する。

1923年には、国民党が結成され、27年には中央政府が南京に樹立されたが、張作霖は満州の独立を宣言し、袁世凱は北京政府を主張した。

支那は三つの政府に分かれ、卑俗が跳梁し、群雄が跋扈した。この間に共産主義運動が伸びていった。リットン報告書は以下のように記述している。


1.支那における共産主義運動は、1921年以来、相当な勢力を得た。共産主義に対して寛大であった容共時代が過ぎて、1927年に国民党と共産党は完全に分裂した。

2.内乱の再発は、1928年ないし31年の間に、共産党の勢力伸長に幸いした。赤軍が組織され、江西および福建両省の広大なる地域がソビエト化された。・・・

3.支那における共産主義は、国民政府の事実上の競争相手となった。それはみずからの法律、軍隊および政府を持ち、かつそれみずからの行動地域を持っている。かような事態は他のどのような国にもその類例を見ない。

4.略

5.共産軍との武力闘争は今日でも続けられている。



このような共産勢力の伸長と、国内治安のびん乱というよりもほとんど無政府状態、法律の秩序をもたない、無法無秩序の状態がつづいた。

ことに満州は卑俗の巣窟で、「その鎮圧は長期にわたって閑却され、はなはだしきは兵士が匪賊と内応していた」。そこへ排日運動がものすごい勢いで、りょう原の火のように燃え広がった。

さらに次のような事態が生じたことをリットン報告書は伝えている。


1.国民党はあらゆる外部的勢力に対する嫌悪という、追加的な異常な色彩を、支那の国民主義思想に注入するにいたった。

2.ワシントン条約は、支那の困難を解決するため、支那をして国際協調の線に沿って発足させるという意図のもとにできたのである。

支那はその日行っていた排外宣伝の惨毒に禍されて、それを希望し、かつ期待された進歩を遂げることはできなかった。



経済的ボイコットの利用と、学生に対する排外宣伝の注入は、やがて支那に居住する外国人の生命・財産を脅かすに至り、「この支那の態度は列強を驚愕させた」のである。そのもっとも大きな被害者は日本であった。


1.日本は支那の最も近い隣国であって、かつ最大の取引先である以上は、日本は交通機関の不備にもとづく無秩序な状態、内乱の危険、匪賊及び共産主義の脅威などのために、他のいずれの強国よりもいっそうひどく悩まされたのである。

日本は他のいずれの国よりも、国民を支那に持っている現状において、支那の法律、司法制度並びに税制に服従させられたならば、それらの国民は、はなはだしく苦しむことになる。

2.支那にある日本国忍の生命および財産を保護しようとする熱望は、日本をして内乱または地方的騒乱の際、しばしばこれに干渉させる結果になった。

3.上のような行動は支那を極度に憤慨させた。



日支両国の悪循環は、次第に頂点に達していった。そして、ついに中村大尉事件が起き、万宝山事件が起きて、満州事変へと発展していったのである。

  万宝山事件
  中村大尉殺害事件

ところが、東京裁判においては、この報告書を全く無視し、このような歴史的社会的な経緯を否定して、満州事変は一部日本の指導者の共同謀議によってなされたものであると決め付けた。

まことに児戯に類する、笑うべきでっち上げである。

さらにリットン報告書は、満州事変の経済的背景、心理的背景として、次の点を指摘している。


1.広大かつ肥沃な地方である満州は、わずか40年前までほとんど開発されず、また現在においてさえ人口希薄である。

2.満州は支那ならびに日本の過剰人口問題解決に漸次重大な役割を演ずるにいたった。

3.日本の人口問題はきわめて容易ならぬものである。

「可耕地1平方マイルあたりの日本の人口を他の諸国の人口と比較すると、日本の割合は非常に高い。これは島国という特殊の地理的構成に起因する。」「農耕地に人口が高度に集中しているため、各人の保有地面積はすこぶる狭小であって、農夫の35%は1エーカー未満を耕作している。

耕地の拡張はその限度に達し、また農法の集約もその限度に達している。これを約言すると、日本の土地からは現在より以上の生産を期待することはできない。また就職の機会を今日以上に多く供給することもできない。」

4.日本の活動がなければ、満州は多くの人口を誘致し、またこれを吸収することはできなかったであろう。

5.最初、満州における衝突は日露間に起こった。その後これは、支那とその協力なる隣接国との間の問題となった。

6.最初、満州が各種政策の衝突地域となったのは、その戦略的地位が唯一の理由であった。だが、その後日本人によって満州の農業、鉱業および林産資源が開発されると、満州は満州事態のために垂涎されるに至った・・・

7.満州における権益は、その性質および過程において、まったく諸外国のそれとは異なっていることを認めなければならぬ。

8.1904~05年、満州の野において戦われたロシアに対する日本の大戦争の記憶はすべての日本人の脳裏に深く刻み込まれている。

9.この戦争はロシアの侵略の脅威に対して、自衛のために日本は生死を賭して戦ったものである。

10.満州における日本の権益は、その源を上の戦争よりも十年前に発している。

11.1894~95年の清国との戦争は、下関において署名された講和条約をもって終わりを告げ、清国はその条約で、遼東半島の主権を日本に割譲したのである。

12.日本人にとっては、ロシア、フランス、ドイツが上の割譲地の放棄を強制した事実(三国干渉)は、日本が戦勝の結果として、満州の上の部分を獲得し、これによって、日本の同地方に対する一個の道義的権利を得、その権利は今もなお存続するものであるという確信に、なんら影響を及ぼすものではない。

13.満州はしばしば日本の「生命線」であると称されている。満州における日本の利益の中で、根本的なものは、日本の自衛と国家的生存にとって、同地方の有する戦略的重要性である。・・・



驚くべきことに、東京裁判はこのような事実を直下に否定し去って、満州事変の勃発を「共同謀議」の四字に集約しようとしたのである
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