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【スゴ技ニッポン】「はやぶさ」の虎の子技術を鉄道に応用 列車遅延抑制の切り札に

【スゴ技ニッポン】「はやぶさ」の虎の子技術を鉄道に応用 列車遅延抑制の切り札に
産経新聞 H28.2.13

はやぶさ
小惑星探査機「はやぶさ」の最適電力制御技術を活用した鉄道分野への応用研究が始まっている(池下章裕氏提供)


 小惑星探査機「はやぶさ」に採用された最適電力制御(ピークカット)技術を鉄道分野に応用する取り組みが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、鉄道総合技術研究所、東京急行電鉄グループの東急テクノシステム(川崎市宮前区)で始まった。

消費電力量を減らせるだけでなく、首都圏では常態化している通勤ラッシュによる列車の遅延を抑えられる可能性があるという。宇宙開発で培った技術の民間転用という視点でも注目されている。

                 ◇

 はやぶさは太陽電池で発電した電気でエンジンやヒーター、制御機器などを動かす。日照があるときしか発電できないため限られた電力を効率よく融通しあう必要があった。このため、はやぶさでは個々の機器が電力の使用状況を発信。その情報をもとに、それぞれの機器が独立して並列にピーク電力を下げていく技術が取り入れられた。

 一方、鉄道では朝夕を中心に駅で停車中の乗降に時間がかかることなどから、列車が数珠つなぎになり、ダイヤが乱れることがある。遅れを取り戻すために加速すると電力使用量は増える。しかも朝夕の時間帯には多数の列車を運行している。
このため、停止中の列車を一斉に出発させると、変電所の容量を超えてしまう可能性がある。容量が超えてしまえば、列車の運行が困難になる。小さなアンペア数の家庭で、消費電力の大きな家電機器を複数で同時に使うとブレーカーが落ちるのと同じだ。

 そこでJAXAは「線路上の列車が遅れを回復するため(それほどの電力を必要としない列車と)瞬時に電力を融通しあえば、課題の解決が図れるのではないか」(川口淳一郎シニアフェロー)と考えた。

つまり、はやぶさを鉄道会社の路線全体、はやぶさに搭載されているエンジンやヒーター、制御機器を列車に見立てて考えたのだ。

 2014年秋頃、川口氏はこのアイデアを鉄道総研や鉄道各社に伝えたところ、鉄道総研と東急電鉄が関心を示した。

鉄道総研電力技術研究部の兎束(うづか)哲夫部長は「車両などの設備や運転技能に関するピークカット技術の知見はこれまでにも数多く出ている」と指摘した上で「電力の融通という切り口で、複数の機器を組み合わせた鉄道システム全体の省エネ技術が開発できればピークカット効果が期待できる」と話す。

鉄道総研では、実際の列車ダイヤ、線路の標高やカーブ、時間帯や季節などのデータを入力してシミュレーションを作り、どの程度の効果があるかを調べる。

シミュレーションで良い結果が得られれば、東急電鉄は実際の車両を使った実証実験を行う。この実験に向けて東急テクノは、車両や運転指令所などで使われるソフトウエアやコンピュータープログラムの開発などを進める。

 3者は18~19年ごろをめどに実用化の可能性を判断することにしている。東急テクノ成長戦略推進室の養田新一課長は「現時点では未知数だが、理論上はできるはず」と意気込む。

                 ◇

 

実は鉄道会社にとって、この技術に期待を寄せる理由がもうひとつある。朝のラッシュ時が1日の電力使用量のピークで、鉄道各社は、この時間帯の電力使用量をもとに電力会社と契約している。電力料金もピーク時をもとに設定されている。はやぶさのピークカット技術を使って、列車が相互に電力を融通しあうようになれば、電力会社に支払う電力料金を減らせる可能性もあるのだ。

 11年3月の東日本大震災後の全原子力発電所稼働停止などの影響で電力料金が値上がりし、鉄道各社が電力会社に支払う年間電力料金は、10年度と比べて「各社とも10~20%程度は増えている」(鉄道総研)という。少子高齢化で輸送人員が減少傾向にある鉄道業界にとっては大きな経営課題だ。

また鉄道各社は、朝のラッシュ時の最も輸送需要が大きい時間帯を念頭に最大容量の電力設備を整えている。はやぶさのピークカット技術が実用化できれば、鉄道会社の経営体質の強化にも貢献しそうだ。(松村信仁)

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