【ソウルから 倭人の眼】「日本が緊張煽っている」「度を超した発言」…安倍政権を批判し危機から目そらす韓国 当事者意識あるのか

【ソウルから 倭人の眼】「日本が緊張煽っている」「度を超した発言」…安倍政権を批判し危機から目そらす韓国 当事者意識あるのか

12日、ソウルの米国大使館近くで、トランプ米大統領の厳しい対北朝鮮政策に反対の声をあげるグループ(AP)12日、ソウルの米国大使館近くで、トランプ米大統領の厳しい対北朝鮮政策に反対の声をあげるグループ(AP)

 北朝鮮をめぐる朝鮮半島有事に向けた日本側の懸念や危機意識に対し、韓国では「不安感や危機感をあおっている」といった批判が起きている。中には「韓国の不幸を日本は願っており、楽しんでいる」と曲解し、怒りを込めて主張する韓国メディアさえある。


隣国として、戦禍に巻き込まれる可能性がある日本が抱く当然の危機感を、当事者である韓国では「大げさ」「行き過ぎ」などと片付け理解されていない。北の脅威という現実から目をそむけ、“朝鮮半島危機”をめぐっても、やはり日本非難を繰り返している。(ソウル 名村隆寛)


「度を超した日本にブレーキを」


 日本の対応に韓国が最も敏感に反応したのは、安倍晋三首相が明らかにした、朝鮮半島有事の際に予想される日本への難民流入の対処策の検討だ。


 安倍首相は17日の衆院決算行政監視委員会で、「避難民の保護に続いて、上陸手続き、収容施設の設置および運営、(日本政府が)庇護(ひご)すべき者にあたるかのスクリーニング(ふるい分け)といった一連の対応を想定している」と述べた。


また、在韓邦人の保護について「さまざまな状況を想定し、必要な準備、検討を行っている」と語った。


 安倍首相の発言について、韓国の聯合ニュースは同日、「隣国である韓国民の不安を高めかねず、実際に対策を進めていても言うべきではない」と批判を込めて報じた。


翌18日、韓国外務省の定例会見で報道官は安倍首相の発言に対し、「最近の朝鮮半島情勢に関し、仮想の状況を前提とし、誤解を招いたり、朝鮮半島の平和と安定に否定的な影響を及ぼし得る言及は自制すべきだ」と述べた。


 韓国人記者の質問に答えたものだが、韓国メディアからは「外交的に相当な問題発言だと思う」と韓国政府に「憂慮や遺憾の意」の表明を促したいかのような質問も続いた。


 同日付の韓国紙も「度を超した日本にブレーキをかけるべきだとの世論が強い」(韓国日報)と安倍首相の発言を批判している。


慰安婦像の腹いせ? 韓国の不幸を楽しむ?


 「日本による危機あおり論」の最たるものは、朝鮮日報(18日付)の社説だ。要旨を紹介したい。


 「緊張をあおるような低水準の稚拙な言動といわざるを得ない」


 「日本の一部メディアは、まるで朝鮮半島ですぐに何かが起こるかのように軽はずみに振る舞っている」


 「安倍(首相)の言葉は少女像(在韓日本公館の前に違法に設置された慰安婦像)に対する感情的な腹いせにしか聞こえない。


韓国国会で『日本で大地震が発生し韓国に難民が流入した場合』の対策を聞く質問に、韓国の公職者が『スクリーニングする』と答弁する光景を想像してみればいい」


 「まるで隣国の不幸を願い、楽しむような言動」


これを追いかけるかたちで、翌19日付の中央日報も「朝鮮半島の不安感あおる日本、軽はずみは自制せよ」と題した社説を掲載。


 「日本が朝鮮半島危機を利用し、度が過ぎる行為を見せている」


 「安倍首相までが危機状況を大げさに騒ぐのは、朝鮮半島の不安感をあおるだけだ」


 「安倍首相の繰り返しての発言は、ある種の意図があるのではという疑いまでもたせる」


 「他人の不幸を利用して実利を得ようという話に聞こえる」


 「安倍首相は『北朝鮮がミサイルにサリンガスを装着して発射することもできる』と主張した。確認されていないことを話して軍事力増強を合理化しようということではないのかという疑いを招く発言だ」


 「戦争勃発を前提に韓国人が難民となって押し寄せる状況を想像した。隣国の国民の自尊心に触れる軽はずみな発言と言わざるを得ない」


 「安倍政権が事態の深刻さを悟り、言動に慎重になることを望む」


 安倍首相をはじめとする日本側の危機意識は全く理解されていない。


日本がそわそわ?


 安倍首相の「難民発言」の以前に、日本政府の動きに韓国メディアはすでに反応していた。


 4月11日に日本の外務省が「海外安全ホームページ」に、朝鮮半島情勢に関する情報に引き続き注意を促す「スポット情報」を掲載したことだ。


 中央日報は東京特派員のコラムで「日本が朝鮮半島情勢を重く受け止めている」とする一方で、「だが、日本で朝鮮半島危機説をあおる発言をするのは別問題だ」と問題視した。


 安倍首相が12日に、「さまざまな事態が起きた際には、拉致被害者の救出について米国の協力を要請している」と語ったことなどを、


コラムは「政治的発言」「攻撃的防衛戦略と防衛力整備に活用しようとする意図がうかがえる」とまで批判した。


 さらには、「日本の行き過ぎた危機意識や対応は周辺国の疑いを招くだけだ。北朝鮮の核問題に対する関係国間の共助の雰囲気も害するかもしれない」と主張した。


ここでの「周辺国」「関係国」とは明らかに韓国を指している。


また、朝鮮日報も東京特派員のコラムで、産経新聞(13日付)が朝刊1面に、「日本人拉致被害者を救出する場合、自衛隊がどのような輸送手段を使うか日本政府が検討しているという記事まで載せた」とまるで記事に問題があるかのような主張をした。


 同コラムは「日本メディアが関心を注ぐ根底にあるのは、こうした現実的な考慮だけではなさそうだ」とし、


「記事の多くは『トランプ大統領が本当に北朝鮮を攻撃するときは日本の安全も確保し、日本の影響力も強くすべきだ』というメッセージが込められている」と推測。


「日本メディアはそわそわして先走っている」とまで言い切った。


危機意識に大きな格差


 「度を超した発言」「軽はずみな振る舞い」「レベルの低い稚拙な言動」。これらの表現は、韓国メディアが日本を批判し、こき下ろす(こき下ろしたい?)際には必ずといっていいほど登場する。


 また、韓国メディアの多くは、安倍首相の発言に支持率挽回や、学校法人「森友学園」問題での政治的危機から脱する狙いがあるとして、好きなように“分析”している。


この曲解もいつものことだ。安倍首相と安倍政権が支持率下落にそれほど焦っているとは思えない。


安倍首相をはじめ、日本が危機感を抱いているのは、朝鮮半島の危機が現実になってしまえば困るからだ。


北朝鮮の中距離以上の弾道ミサイルは日本列島を射程に収めており、有事の際は日本も標的にされている。


 また、「日本への難民流入」を想定していることに韓国は不快に思っているようだが、朝鮮戦争(1950~53年)当時のことは忘れ去られたのか。


当時、朝鮮半島から戦禍を逃れ日本に渡ってきた韓国人が多くいたことを。筆者は、「当時、日本に逃げてきて難民として認定された」という在日韓国人男性の生々しい話を聞いたことがある。


 当然、日本は危機をあおったり、韓国の不幸を楽しんでいるわけではない。東日本大震災が起きた時、新聞の1面トップに「日本沈没」といの見出を躍らせたどこかの国のどこかの新聞とは違う。


 韓国メディアは「大げさに騒いでいる」「過度の対応」などと言っているが、第一そんな悠長なことを言っている場合ではないのではないか。


 韓国とは違い、震災のような自然災害に数多く遭ってきた日本人は、あらゆる面で危機意識が強い。常に最悪の事態に備える意識が心のどこかにある。


日本での生活経験がある韓国の元外交官や企業の元駐在員、留学経験者らは、少なくともそうした日本人の危機意識を理解しており、「見習うべきだ」とも言う。


備えなく、憂いもなし


 しかし、韓国社会では北朝鮮や有事に対する危機意識は悲しすぎるほど低い。しかも、北朝鮮の核・ミサイル技術が向上し、脅威が年々高まるのに反比例するかのように、危機意識は鈍くなり薄らいでいる。


 北朝鮮による6回目の核実験や弾道ミサイル発射の可能性が懸念されていた今月14日、


ソウルに来た日本人数人と食事をする機会があった。彼らが一様に口にしていたのは「韓国は全く緊張感がないですね」という驚きの言葉だった。


 その通り、金曜日だったその日、不景気にもかかわらずソウルの繁華街は飲み食いする人々でにぎわっていた。訪韓した日本人が拍子抜けするのも無理はない。


 翌15日は北朝鮮の故金日成(キム・イルソン)主席の生誕105年の記念日で、平壌では金正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長が見守る中、大規模な軍事パレードが行われた。


弾道ミサイルが次々と現れる中、新型の新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と推定されるものも登場した。


その様子は韓国のテレビでも生中継され、軍事専門家かキャスターがミサイルの登場ごとに、人ごとであるかのように興奮気味に解説していた。


 この日と翌16日の日曜日、ソウルは天気がよく、散りかけた桜の花見を楽しむ市民の姿が目立った。何もないことに越したことはないのだが、


危機感など全く感じさせない実に平和な休日だった。


韓国メディアのやり玉に上がった安倍首相の発言はその翌17日。しかし、韓国社会は相変

わらず平穏で、現在も緊張すら感じられない。


 韓国メディアが「度が過ぎている」と心配するほどに、韓国民は幸か不幸か、安倍首相の発言や日本の危機意識にあおられてはいない。不安感など高まっていない。


 日本の感覚では「備えあれば憂いなし」だが、韓国では危機意識という備えもなく、憂いもないかのようだ。危機意識を持つ日本の一方で、危機感が感じられない隣国。これが韓国の現状なのだ。


これぞ政治的な利用


 韓国ではメディアだけでなく、5月9日投開票の大統領選に向けて現在、選挙戦の最中にある大統領候補までが、安倍首相発言を批判している。


 「不必要に危機をあおる言動」(左派系最大野党「共に民主党」の文在寅=ムン・ジェイン=候補)。


 「戦犯国である日本が戦争をあおっている。緊張を悪用し、日本が『戦争ができる国』にすることを正当化する意図がある」(中道左派野党「国民の党」の安哲秀=アン・チョルス=候補の陣営)


これこそが、世論と選挙を意識した政治的発言ではないのか。その前に韓国の有権者に向かって、差し迫った「有事」を避けるために自分がなすべきことを具体的に訴える方が先だろうに。


 この期におよんでも、韓国では日本批判が幅を効かせている。北朝鮮の脅威による朝鮮半島情勢の不安という現在進行形の現実問題から目をそむけ、


どういう訳か、やはり「日本が悪い」に落ち着き、それで安心してしまっている。


 最悪の事態を避けるよう危機意識を高める日本が悪いかのように怒り、一笑に付す。これが日本の隣国の現在の姿だ。

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