「人こそ資産」八田與一の銅像切断

「人こそ資産」八田與一の銅像切断
2017/04/21
 4月16日、台湾の土木事業に大きく貢献した日本人技師「八田與一(はった よいち)」像の頭部が切断されるという事件が起こった。
 同氏は台湾の日本統治時代に、烏山頭(うさんとう)ダムや台南水道など数多くの土木工事を手掛け、洪水や干ばつなどに苦しんでいた人々に大きな恩恵をもたらした。現代においても台湾で有名な日本人の1人に挙げられる。
 日本にも八田與一を敬愛し、考え方や働き方に賛同する土木技術者が多い。横浜国立大学の細田暁准教授もその1人だ。日経コンストラクションが3月20日に発行した書籍「新設コンクリート革命」では、細田准教授が八田與一への思いをつづったコラムを掲載している。
 ここでは特別にコラムを抜粋して、八田の志や功績のすごさについてお伝えしたい(以上、日経コンストラクション)。
のこぎりで頭部が切り取られる前の八田與一の銅像(2016年撮影)。5月8日の命日までに修復が間に合うか注目が集まる(写真:細田 暁)
「人のための土木」
 2016年3月、筆者の所属する横浜国立大学の土木工学教室の海外見学会で、台湾の烏山頭ダムや台南水道を訪れた。八田與一を筆頭に、数多くの日本人が貢献した偉大な土木事業である。筆者が大学で教養科目として教える土木史の講義において、八田與一の功績に興味を持った学生たちからの提案で、見学会を企画し、実現した。
 見学会に先立って、土木史の権威である緒方英樹氏に来学いただき、同氏が中心となって製作した八田を主人公とする映画「パッテンライ」を視聴し、八田に関する特別講義もいただいた。その後、学生たちが中心となって予習を重ね、見学会に臨んだ。
 東京帝国大学工科大学で廣井勇の教えを受けた八田與一は1886年、石川県に生まれた。「八田に内地は狭すぎる。八田を生かすには外地で仕事をさせるのが一番ではないか」という廣井らの勧めもあり、1910年7月に東京帝国大学を卒業し、8月には台湾総督府土木部の技術者として台湾へ渡った。
 八田が青春をささげた嘉南大圳(かなんたいしゅう)という巨大プロジェクトは、まさに土木のお手本ともいえる「人のためのプロジェクト」であり、八田の生き様には、私たち現代の土木技術者たちが見習うべき哲学があふれている。
15万ヘクタールを灌漑
 八田は、嘉南平原と呼ばれる南北92km、東西32kmの地域で、洪水と干ばつと塩害の三重苦が支配する不毛の大地を、人々に富をもたらす土地に生まれ変わらせた。彼の考えた工事計画は、誠に雄大なものであった。水源は2つ考えられており、1つは台湾最大の川である濁水渓である。
嘉南大圳の概要図
創風社が2009年に出版した「台湾を愛した日本人(改訂版)土木技師八田與一の生涯」(著者、古川勝三氏)の資料を基に一部加筆
 濁水渓という名の通り、土砂が多く含まれ堆積するため、ダムを築くことはできず、直接取水することにした。もう1つの水源は、嘉南大圳の心臓ともいうべき貯水池で、後に烏山頭ダムと呼ばれる土堰堤で造られた官田渓貯水池である。
 この貯水池には、台湾第四の川である曽文渓から烏山頭の下を掘り抜いた3800mものトンネルで流域外へ導水した水も蓄えられた。これらの水により、15万ヘクタールもの土地を灌漑(かんがい)するのである。
 曽文渓から導水された水と官田渓の水を蓄えるための烏山頭ダムの堰堤は、全長1273m、底部幅303m、頂部幅9m、高さ56m、地山の切り土量77.5万m3、堰堤の盛り土量540万m3という巨大なものであった。現在では、珊瑚譚(さんごたん)と名付けられた美しい貯水池と一体化した自然そのもののように見える烏山頭ダムであるが、実は、中心に鉄筋コンクリートコアを有するセミ・ハイドロリックフィルダムと呼ばれる工法で造られている。
 地震国であることや、現地で発生する大量の土石を有効に活用できることなどから、この工法を採用した。当時、この工法によるダムは、米国において規模は小さいが数例造られていたのみで、当時、世界でも三本の指に入る巨大な土堰堤が烏山頭に出現したのである。
たった3年で工事費用回収
 烏山頭ダムを天王山プロジェクトとする嘉南大圳は1930年に完成し、工事総額は5000万円を超えた。現代の金額では5000億円超に相当する。その20年ほど前に台湾で完成した4000km以上にわたる壮大な鉄道網の工事総額が2700万円程度であるから、いかに嘉南大圳がすさまじいプロジェクトであるかが想像できよう。
八田與一が技術者としての全てを注ぎ込んだ烏山頭ダムの堤上(写真:細田 暁)
 香川県に匹敵する広さの平野を、干ばつ、塩害、洪水の三重苦から、豊かな実りある緑の平野に変えた、人のためのプロジェクトであった。水源から平野を灌漑するために造られた水路の総延長はなんと、1万6000kmにも及んだ。
 しかも完成後は、工事にかかった費用を3年程度で回収できるほど、平野からは穀物、農作物の収穫が上がるようになった。たった3年での回収である。その後は、適切に維持管理することで富を生み出し続けることになる。土木とは、何も生み出さない土地に適切に人間が働きかけることにより、人間に恵みを与えてくれる国土へと変える偉大な事業なのである。
 八田は、今でも台湾の人々に神様のように尊敬され、慕われている。八田が人を大切にしたからである。
 1923年の関東大震災の発災後、日本は国難に陥り、このプロジェクトの資金の存続すらも厳しくなった。工事に関わる人を解雇せざるを得なかったのであるが、八田が作った解雇者リストの中には、非常に有能なスタッフたちの名前があった。
 「優秀な人はどこでも働ける。でも、普通の人はそうはいかない。みんなを食わせなければいけない」というのが八田の考えであった。もちろん、解雇するスタッフたちの働き先も必死で探した。プロジェクトが軌道回復してからは、解雇されたスタッフたちも皆戻ってきて、力を合わせて働いた。
「與一の大きな愛に包まれる」
 八田は、1942年5月8日にフィリピンへ向かう大洋丸に乗船していた際、米軍の魚雷攻撃を受けて亡くなった。脱出できなかった700人以上の優秀な乗組員が君が代を斉唱しながら、船は沈没したとのことである。烏山頭ダムのほとりには、ダムと平野を見わたす位置に八田の銅像がある。
 銅像の後ろの御影石のお墓には、與一と、3年後に與一の後を追ってダムの放水路に身投げした妻の外代樹が眠っている。この近くにある殉工碑には、工事で亡くなった人々だけでなく、工事関係者の家族の名前も刻されている。
 8人の子を育てた外代樹の銅像が、烏山頭ダム近くの八田與一記念館のそばにあった。この像に近づいたとき、筆者は自然に涙がこぼれた。さらに、烏山頭ダムの堤体を歩いた後、ダムのほとりの與一の像に近づくときに、與一の大きな愛に包まれる感じで涙があふれた。
 八田は、台湾の人々のために技術者として命をささげた。彼が本当に大切に思っていたのは、「人」だったのだと思う。土木事業も資産であるが、人こそが最も大切な資産であることを八田は分かっていたのだろう。
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